誕生日企画
Birthday story 3
そして、いよいよ温泉へ行くという前日の夜、知念からメールで連絡が入った。
「明日、大野さんには午前7時50分頃に御自宅のマンション前にお迎えに上がりますと連絡を入れておきました。
絶対に遅れないで下さいね。それから大野さんは完全に僕と行くと思ってるので、後は二宮君から上手くネタ晴らしして二人で仲良く温泉に行って下さい。
それでは、明日は僕の代行、くれぐれも宜しくお願いします。」
7時50分?何でそんなに早いんだよ?
せっかく休みなのにロケ仕事の入り時間みたいじゃん。
あーあ・・・
つまんない相談とか乗んなきゃ良かった。
温泉なんて爺さんじゃあるまいしさ、何が楽しくて風呂なんて思い付くのか俺にはまったく理解できないよ。
何が僕の代行だよ。もう権利は俺に完全に譲ってんじゃないのかよ?
まあ、それでも良く潔く諦めたもんだな。
そこは後輩ながら感心してるけど・・・
あんなに楽しみにしてたのに、他に好きな人でも出来ちゃったとかか?
あいつもまだ若いからな・・・
そりゃあ、リーダー以外にだって素敵な人は幾らでも居るだろうよ。
その点俺は一途に大野智オンリーだもんね。
あ・・・勿論アイツみたいに変な下心なんて一切持たない純粋な意味でのファンということでは、なんだけど。
早朝の約束にブツブツ文句を言いつつも、その日はゲームもしないで早々に布団に入る俺だった。
ところがいざ目を瞑ると、何か変に気持ちが高ぶってしまって眠れない。
まるで遠足の前の夜の小学生と一緒な感じだ。
それだけリーダーとプライベートで出掛けるって
俺にとっては特別な事なんだって今更だけど認識してしまう。
翌朝、口ほどにもなく仕掛けておいたアラームよりも早く目が覚めた俺は
温泉に出掛けるというのに朝からシャワーまで浴びて
クローゼットから私服を入念にチョイスしたりして、完全に浮かれちゃってた。
全然俺らしくない。いや、待って。俺らしいってどんなんなの?
もういいや。考えるのが面倒になった。
とにかく今日は俺は休日で、オフの大野智をこの俺が独占出来るという
このうえなく有難い権利を得たわけだから、何も考えずに純粋に楽しむ事だけを考えようと思った。
マイカーでリーダーのマンションに向かう。
すると何時もの黒いキャップにジーンズという私服姿のリーダーが、玄関の前で背中を丸めてスマホ弄ってた。
俺は車をリーダーの真横に車を停車させて助手席側の窓を開けて覗き込むようにしてい声を掛けた。
N「おはようござまぁす・・・」
至って普通のテンションだ。
O「えっ?なんで?」
N「待たせたね。良いからさっさと乗りなさいよ。」
O「あー、わりぃ。今からその・・・侑李と約束で・・・」
N「知ってるよ。とにかく乗ってってば。」
リーダーはキョトンと目を丸くして意味も分からず固まってた。
N「あの・・・知念なら来ませんよ!」
O「え?何で?」
N「俺と交代したんで。」
O「えええ?」
N「ほら、早く乗って下さいよ。」
リーダーは不思議そうに首を傾げながら助手席のドアを開けて車に乗り込んだ。
O「交代って・・・聞いて無いけど?」
N「俺じゃ不満ですか?」
O「いや・・・むしろニノで良かった。」
助手席に腰掛けるとシートベルトを装着しながらちょっと照れ臭そうに俯き加減にフニャッと笑ったリーダーの横顔に、
俺はどういうわけか胸がキュンとなってカァッと頭に血が上り耳まで熱くなった。
俺はそれを誤魔化そうと必死でハンドルを握った。
N「いい?それじゃ出発しますよ?」
O「えっ・・・う、うん・・・」
困惑を隠せないリーダーと、妙に緊張してる俺の日帰り温泉旅行がいよいよスタートした。
つづく