第12章
我慢の限界って何処までなのか①
いつもと様子が違うニノに俺は若干の
不安を感じながら仕事に向かった。
楽屋に着くと、メンバーが次々に現れて
当然ながら話題といえば先日の雪の話になった。
雅 『ニノ、ロケ大変だったんだってね。』
和 『ロケ自体はそうでもなかったんだけどね。』
翔 『松潤とニノは2日も帰れなかったらしいじゃん。』
和 『うん、泊まる予定じゃなかったんだけど・・・』
雅 『スケジュールが変更とか、マジで大変だよな。』
和 『そうなのよ。』
潤 『ホテルに缶詰めだったから、する事無くてさぁ・・・』
翔 『そうそう、二人共ホテルで何してたの?』
潤 『夜はニノと二晩とも一緒に飲んでたよ。』
雅 『へえ。二人で?』
和 『違うよ。スタッフとかも居たし。』
潤 『途中まではね・・・』
そう言って松潤が意味深に俺の方を見て
ニヤリと笑った。
俺はその話に参加したくなかったけど
全く無視するのもどうかと思って、白々しく口を挟んだ。
智 『ふーん、ニノが松潤と飲むのってなんか珍しいよね。』
和 『だ、だから二人でじゃないってば。』
潤 『結構遅くまで飲んだよ。なぁ、ニノ。』
和 『Jは飲み始めると、なかなか部屋に返してくれなくてさぁ・・・』
雅 『松潤の部屋で飲んだんだ?』
潤 『そう、色々ツマミを持ち寄ってね。』
雅 『いいなぁ。なんか楽しそう。』
潤 『ニノが2日目潰れちゃってさ、俺の部屋で寝ちゃったんだよな。』
和 『えっ・・・あっ、うん、そ、そうなんだ。』
何だって?い、一緒の部屋で?
俺は頭から一瞬で血の気が引いた。
まさか・・・
俺のニノに変な事してねえだろうな。
翔 『今日のVTRって、その金沢のロケのなんだよね?』
潤 『そうらしいよ。俺もまだ見てないから楽しみでさ。
編集で弄られてるんだろうなぁ。』
雅 『へえ・・それは楽しみだね。』
俺達はスタッフにスタンバイするように呼ばれて
スタジオへ向かった。
松潤が、愉快この上ないといった顔で俺を見て
潤 『大丈夫、なんも大野さんが心配するような事してないよ(笑)』
・・・と俺の肩を叩いて俺を追い越して
軽やかな足取りでスタジオの中に入って行った。
あったりめえだわ!!
何かしてみろ、絶対許さねえからな。
俺は心の中で松潤の背中にそう呟いた。
ニノは、酒を飲み過ぎてしまって
その時の記憶が曖昧なのか・・・?
おそらくそんなところなんだろう。
どうせ、松潤から無理矢理飲まされたんだろうよ。
俺はニノを責める気なんてこれっぽっちも無いから
気にする事無いのにって思って
横に座ったニノの顔を覗き込んだんだけど
スタジオ入りしたニノの表情は険しかった。
普段は仕事に私情を挟んだりしないニノだけど
よっぽど、気にしてるとみえる。
バカだな。俺ニノのこと信じてるのに。
何をそんなに気にしてるんだろう?
それから、いよいよ本番・・・。
いつものように
スタジオで皆とロケのVTRを観た。
そして、ニノが気まずそうにしていた理由というのが
この後ようやく明らかになる。
まず、そのVTRのタイトルが
『二宮&松本ラブラブデート~IN金沢~』
なんだ?それ。
俺だけじゃなくて、相葉ちゃんも翔ちゃんも
そのタイトルに呆れ返って失笑。
そしてニノは苦笑い。
ロケは雪の降りしきる中
ウケ狙いでやらされた感じの恋人シチュエーション。
相合傘に仲良く腕を組んで兼六園や武家屋敷跡などを
散策しながら土産物を買ったり
お食事処を紹介したり・・・
まあ、ここまでは仕事だからなって
俺も我慢して観る事が出来るレベルだった。
問題はここからだ。
雪がお約束通り酷くなってきて
ロケも屋外だと無理があるという事で
最後に二人でやってきたのが温泉宿だった。
VTRの中のニノが相変わらずの可愛さ120%といった語り口調で
レポートを受け持ってた。
和 『ええ、こちらはですね、降り積もった雪景色を観ながらの
露天風呂が絶景という事で、我々は今から露天風呂に
入りたいと思いまーす。』
腰にタオル捲いて現れた二人。
芸人バリに凍えながらのリアクションに
スタジオは笑いに包まれてたが
俺はあまりのショックに、開いた口が塞がらない。
ふ・・・風呂・・・。
しかも裸は駄目だってあれ程言ったのに。
俺の顔色が変ったのに気が付いて
ニノが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
俺はそれでも呆然とVTRを観続けた。
二人は寒さに耐え切れず
ザブンとお湯の中に飛び込んだ。
潤 『うは~あっつぅ!こりゃ最高ですなぁ~』
和 『最高だねっ。でも実際カップルで来てもここは混浴じゃないですよ。(笑)』
潤 『それじゃ~二宮先生、お背中でも流しましょうか?』
和 『いやいや(笑)大丈夫ですよ。』
潤 『いやいや、ここのところずっーとお忙しかったですから、
お流ししますよ・・・』
映像としてはここまで。
後は、ニノが背中流して貰ってるであろうと
思わせる、洗い場の外からの映像と
二人の会話と笑い声だけが流されてそのロケのVTRは終了した。
これを俺に観られるのがニノは不安だったんだ。
そりゃ、言えるわけないよな。
翔 『いやあ・・・これ羨ましいなぁ。』
雅 『俺達もこういうの仕事で行きたいよねぇ。』
潤 『楽しかったですよ。次は是非違うコンビでどうぞ(笑)』
翔 『どうでしたか?大野さん?』
智 『え?あ、うん・・・』
翔 『あれあれ?一人だけテンション違うのは気のせいですか?』
カメラが向いてるのに、全然笑えない・・・
翔ちゃん、頼むから俺に振らないでくれ。
本当はショックでコメントどころじゃなかったんだ。
つづく