第13章
風邪に効く薬④
家にようやく帰り着いた。
身体が辛いせいなのか
今日1日が凄く長く感じた。
和 『あなたは今日は風呂は止めた方がいいね。
寝室暖めておくから、着替えだけしといて。』
智 『うん・・・悪りぃな。』
ニノは家に帰ってから休む暇も無く
バタバタと何かやってる。
多分俺がこんなだから、
色んな事一人でやってくれてるんだと思う。
和 『ね、さとし。俺は風呂入るからさ、先に寝てていいよ。』
智 『本当に寝室、別々なの?』
和 『あ、うん。今夜俺はゲストルームで寝るよ。』
智 『そんなぁ・・・』
和 『いい年して寂しいから寝れないとか言わないで下さいよ?』
智 『寂しいから寝れないっ!』
和 『とにかく、寝室暖めといたから、さっさと寝ろよ。』
智 『うん・・・待ってるから。』
和 『待ってくれなくていいです(笑)』
智 『ニノぉ・・・』
そんな俺の事を無視してニノは風呂に入った。
なんで喧嘩もしてないのに
家庭内別居しなくちゃならないんだ?
俺は渋々2階の寝室に上がった。
やっぱりまだ熱が下がらなくて
昼間貰ってきた解熱剤を飲んで布団に入った。
寒くて関節も痛くて眠れない・・・。
暫くして階段を登ってくるニノの足音が
ゲストルームの方に向かって消えた。
本当に一人で寝る気かよ?
そしたら、数分もしないうちに
またニノの足音・・・。
今度は寝室に向かって来るのが分かった。
ガチャッ・・・扉が静かに開いた。
俺はそのまま寝たフリしてた。
ドサッ・・・
枕をベッドに放り投げる音。
ゴソゴソと布団に潜るニノ・・・。
何も言わずにそっと俺の額に手を当てて
また体温をチェックしてる。
ひんやり冷たい冷却シートの様なものが
俺の額に貼り付けられた。
あ・・・冷たくて気持いい・・・。
そして、俺の身体にピッタリくっ付いて
ぎゅーっと抱き締めた。
あ・・・断然こっちの方が気持いいや。
智 『んふふ・・・お前も一人じゃ寂しかったんだろ。』
和 『あっ・・・起きてたの?』
智 『だって寝れないもん。』
和 『勘違いするなよ。お前が夜中にそのままあの世に行くと
困るから、様子見に来ただけだよ』
智 『嘘つけ。だったら普通枕なんて持ってこねえんじゃないの?』
和 『フフッ、バレました?(笑)』
智 『おいらにはどんな薬よりもニノが一番の解熱剤なんだって。』
そう言って俺もぎゅーっとニノの身体を抱き締めた。
智 『さすがに移るかな?』
和 『分かんない。でも、移ったら移ったでちゃんと看病してくれるだろ?』
智 『うん。そりゃもちろん。』
ニノの片足が俺の足に乗っかって
大事なところが容を変えて
俺の腰の所に当たっちゃってる。
智 『ごめんな。今夜は勘弁してくれ・・・』
和 『うん・・・分かってるよ。いいから早く治せよ・・・』
智 『治ったら寝かさないくらい、頑張るよ。』
和 『それなら・・・一生治んなくていいです(笑)』
それから間もなくすると、すぅすぅと
ニノの寝息が聞こえてきた。
暖かくて、心地良くて
俺も熱が下がってきたのか
そのまま朝までグッスリ眠った。
和 『さとし・・・さとし、起きて』
智 『んっ・・・』
和 『もう、熱も下がったみたいだね。お粥作ってみたから
朝飯食べて支度して・・・』
熱が平熱に戻ってた。
やっぱり、俺にはニノが一番の特効薬なんだよ。
一人で寝てたら、多分まだ熱にうなされてただろう。
智 『へえ。お粥とか作ってくれたんだ?』
和 『やり方分かんないから、ネットで頑張って調べたの。』
智 『感激すぎる・・・泣きそう。』
和 『あははっ。オーバーなんだよ。いいからさっさと食べちゃいなよ。』
ニノってこんなに頑張るキャラじゃなかったよな。
俺と居ることで、こんなに変ったのか?
だったら愛の力ってマジですげーよな。
和 『何ニヤニヤしてんの?気持ち悪りいな』
智 『んふふふ・・・何でもないよ』
和 『おじさん、スウェットもさっさと脱いじゃってよ。
一緒に洗濯するから・・・』
智 『え?あ・・・分かった・・・』
病気はもう懲り懲りだけど
こんなに優しくして貰えるんなら
たまには熱出すのも悪くないかな・・・
俺はニノが作ったお粥を全部たいらげて
出掛ける服に着替えて身支度を整えた。
智 『ニノ・・・』
和 『なに?』
智 『ありがとうな・・・』
ニノの腕を引き寄せて
身体を力一杯抱き締め
その柔らかい唇に軽く口付けたら
バッチリ回復して何時もの俺に戻ったのを認識してか
ニノが本当に嬉しそうに微笑んだ。
つづく