第14章
二度目の家庭内別居①
俺の突発的な風邪の発熱は
ニノの手厚い看病のお陰でみるみる回復していった。
それから数日後、ニノが久々の休日で
俺は雑誌の仕事とか入ってて夕方まで仕事だった。
和 『さとし、今日帰り早いよね?』
智 『多分17時頃には終わると思う。』
和 『久々になんか外に食べ行かない?』
智 『あ、ごめん・・・おいら今日ちょっと誘われててさ。』
和 『ええ?誰に?先輩とか?』
智 『違うの。後輩の子。』
和 『信じられない・・・後輩なら断れよ。』
智 『ずっと断ってきたから、いい加減行かないと怪しまれる。』
和 『そっ、じゃあ勝手にどうぞ!』
智 『そんなに遅くならないようにするからさ。』
和 『・・・・』
怒っちゃうよな・・・。そりゃそうだよな。
ずっと一緒に暮らしてるんだから
必ずこういう事はこれからも有るんだよ。
これは俺に関してだけではなく
ニノだって付き合いはある訳だし・・・。
二人の間に信頼関係が無いわけじゃない。
だけど、俺達のスケジュール上
二人の時間といえば本当に限られていて
一緒に住んでるお陰で
一日一度はなんとか会話も出来て
例え時間がすれ違っても
毎日一緒のベッドの上で眠ることも出来る。
それでも、オフ日となると
片方が仕事でも、終わり次第
ずっとそこから一緒に居れる訳だから
楽しみにしてたのは俺にも分からなくもない。
智 『大丈夫、絶対20時までには戻るから。』
和 『いいですよ。どうせ出来もしない約束なんかしなくても。』
智 『いや・・・絶対に帰るよ!』
こんな事を言ってしまった俺も俺だけど。
この時は本当に付き合いなんて
2時間もあれば十分だって思ってたんだ。
それから、俺は仕事を終わらせ
約束してた後輩と待ち合わせて
その後輩の行きつけの店とかに
連れてこられて、調子よく飲んでいた。
後輩2人と飲んでんだけど
思った以上に話が盛り上がり
酒もどんどん進んでいった。
後 『先輩、カラオケ行きましょうよ~』
智 『ええ~今だいたい何時なのよ?』
後 『まだ8時ですよ。全然大丈夫でしょ?』
智 『はぁ?マジか?やべえな。俺そろそろ帰るわ。』
後 『冗談はやめて下さいよ。小学生じゃあるまいし。
俺先輩の生歌が聞きたいなぁ。カラオケ行きましょうよ。』
智 『いや・・・ちょっと今夜はこの後、おいら約束が・・・』
後 『えええ?あと1時間で良いですから、お願いしますよ~』
どうしよう。
ヤバイな。
ニノ、怒ってるだろうな。
だけど、約束の時間はとっくに過ぎてる。
1時間も2時間も怒られるのは一緒だよな。
智 『よしっ。ならあと1時間だけだぞ?』
後 『やったー。それじゃ早速行きましょ。』
酒が回ってる勢いというか、素面なら絶対そんなことしないんだけど
俺は勢いでついそのままカラオケに向かってしまったんだ。
そこでも強い酒を飲みながら
ひたすら嵐の曲を唄わされた。
後 『あー!先輩、いいネックレスしてますね。』
智 『え?これ?んふふ・・・いいだろう。』
後 『いいなぁ。お洒落だな。俺に下さいよ』
智 『ダメダメ・・・。これはダメ・・・』
そのネックレスはニノとお揃いで買った物だった。
後 『それじゃちょっとだけ見せて下さいよ。』
智 『ふんじゃ、見るだけだぞ』
俺はネックレスを外してその後輩に渡して
その後直ぐトイレに行った。
相当飲んだから一気に酔いが回る。
フラフラと部屋に戻り
時計を見たら一時間が経過してた。
智 『やばっ・・俺、もう帰らないと・・・』
後 『ええ?マジで?これから盛り上がるっていうのに』
智 『ごめん、また今度な・・・』
俺はなんとか引き止める後輩を振り払い
会計を済ませて店を出た。
表に止まってるタクシーに乗り込み
急いで家に帰った。
時間は22時半・・・。
約束の時間から2時間半もオーバーしていた。
怒ってるだろうなぁ。
とにかくひたすら謝るしかないな・・・。
俺は恐る恐る家の鍵を開けた。
リビングの電気は点いてるけど
そこにニノの姿はなかった。
俺は慌てて2階の寝室に駆け上がる。
智 『ニノ・・・ごめん・・・』
もぬけの殻だ・・・。
念のため布団も捲ったけど姿が見当たらない。
あ・・・ゲストルームだな?
ゲストルームのドアを開けようとするけど
内側から鍵がしっかりと掛けられてた。
智 『ニ、ニノ・・・開けてっ!』
和 『知らないっ』
智 『ゴメン、俺が悪かったよ・・・』
和 『知りません』
智 『頼むよ。開けてよ・・・』
和 『約束破ったくせに』
智 『だから謝るよ・・・』
和 『謝って済む問題かよ!』
智 『それじゃ、どうしたら許してくれるの?』
和 『暫く俺はこっちで寝るから!』
智 『ええええっ?』
だって俺そんなに悪い事してないぞ。
遅くなったと言ってもまだ22時半って
全然早い時間じゃん。
智 『俺、お前と一緒じゃないと眠れない。』
和 『・・・』
智 『お願いだから、顔見せてよ・・・』
和 『・・・』
俺は扉の前にへたり込んだ。
そしたら、次の瞬間ゆっくりとそのドアが開いた。
つづく