第14章
二度目の家庭内別居④
俺は仕事の打ち合わせで
テレビ局に来ていた。
その日は同じ仕事ではなかったけど
相葉ちゃんも同じ局内に居た。
雅 『おおちゃん、おはよう。今日は?あードラマの打ち合わせね?』
智 『あ、相葉ちゃん、おはよう。そうそう、打ち合わせだよ。』
雅 『おおちゃんも忙しくなるからさ、その前に銀座に飲みに
行っとかないと、暫くまた行けなくなるよねえ。』
智 『ああ・・・飲みは暫く無理だわ・・・』
雅 『ん?なんか元気ないね?体調でも悪いの?』
智 『ううん、そんなことないよ。』
雅 『本当?それならいいけどぉ』
二人でそんなこと話していたら伊野尾君がやってきた。
伊 『あれ?相葉先輩、お久し振りです。』
雅 『あ、お疲れ?伊野尾ちゃんもドラマ?』
伊 『やっ・・・僕は違いますよ。』
智 『あ、すまないな。持って来てくれた?』
伊 『こっちこそ、すみませんでした。そんな大事だって知らなくて』
雅 『なになに?何か有ったの?』
伊 『昨日先輩と飲みに行ったんですよ。その時に・・・』
智 『いいから、早く返してくれよ。』
伊 『あ、僕着けて上げますよ。』
と、いきなり伊野尾くんが俺の首に腕を回し
持ってきたネックレスを着けてくれたんだけど
その様子を何も知らない相葉ちゃんが横で見てて
雅 『えっ///二人って、もしかしてそういう関係だったの?』
伊 『違います、違いますって』
智 『相葉ちゃん、違うんだって』
雅 『ごめん、俺お邪魔だったね。いけない、これから俺、
ニノと雑誌の撮影なんだわ・・・それじゃ、またねっ』
何だって?ニノと?
そりゃ、絶対マズイだろ。
智 『あっ、相葉ちゃん・・・』
俺は慌てて相葉ちゃんを呼び止めた。
雅 『え?何?』
智 『今の・・・頼むから誰にも言わないでくれるかな。』
雅 『あはっ。やっぱりそうなんだ?大丈夫。言わないから(笑)』
智 『やっぱりそう、じゃないんだって!』
雅 『分かってるって。いひひひっ』
いやいやいや。
あれは間違いなくニノに話すな。
最悪だわ・・・。
伊 『それじゃ、僕もマネージャー待たせてるから行きますね。
先輩、それよりまた誘って下さいよ。
智 『あ、ああ・・・ありがとな。』
拗れた話はとことん拗れるんだな。
もう、こうなると修復は直ぐには無理かも。
相葉ちゃんは、多分見たままをニノに話すだろうから
自動的に俺の疑いはニノの中で確定されて
その怒りは倍増してしまうんだ。
元々俺が悪いんだ。
ニノと約束した通りの20時であの時帰ってれば
こんな事にはならなかった。
もう、今更何を言っても手遅れでしかない。
ニノが俺の事をもう一度信じてみようと
思ってくれるまで、大人しく待つ以外に
方法はないのかも・・・。
俺は打ち合わせに入り
夕方6時にはそれも終わって自宅へと戻った。
ニノもそろそろ戻る時間。
俺はとにかく普通に振舞おうと
キッチンで夕飯の支度を始めた。
今夜は鍋にでもすっかな。
鍋なら一緒に仲良く突けるし。
・・・てなわけないか?
ガチャッ・・・。
ニノが戻って来た。
何も言わずにゲストルームに上がろうとしてるから
至って普通を振る舞いながら
さりげなく彼に話し掛けてみた。
智 『お帰り、ニノ。今夜鍋にしたから一緒に食べるぞ!』
って声を掛けた。
ニノは俯いたまま返事もせずに
ゲストルームに入って行った。
そりゃ、やっぱ無理だよな。
そんな簡単に機嫌が直るもんではないよな。
ところが、数分経って
ニノがリビングに降りて来た。
決して俺の目は見ないけど
俺の目の前に腰掛けて
和 『頂きます・・・』
と、鍋を食べ始めた。
俺は嬉しくて思わずニノに話し掛けた。
智 『キムチ鍋、辛くない?大丈夫か?』
和 『・・・』
智 『あ、ビール飲むか?』
和 『・・・』
完全シカトされてる。
もしかすると、相葉ちゃんに聞いてるかもしれないし。
ここはやたら刺激しない方がイイかも。
二人で食べてるのに
一言も会話をしない夕食。
これは地獄だな・・・。
智 『なあ、ニノ?まだ怒ってる?』
和 『ご馳走様でした。』
本題に触れようとするなら
さっさと立ち上がり食器を片付けに入る。
話し合いも断固拒否するのか。
俺はシンクで洗いものしてるニノの背中に
淡々と話し掛けた。
智 『あのさ、これだけは信じてくれない?
ニノの事、好きで好きで仕方がないんだ。
お前が俺の事信じてくれなくても、俺はニノが
俺の事信じてくれるまで、ずっと待ってるよ。』
和 『もうさ・・・』
智 『え・・・』
和 『こんな事になるんだったら・・・
一緒に暮らすなんて・・・言わなきゃ良かった。』
智 『ニノ・・・?』
和 『苦しいんだ・・・あなたの事好きになんて・・・
ならなければ良かった。』
智 『ニノ・・・』
ニノは振り返ると大粒の涙を零して
震えながら俺の胸に飛び込んできた。
つづく