第14章
二度目の家庭内別居⑤
ニノが目にいっぱい涙浮かべて
俺の胸に飛び込んで
ギューッと力一杯俺の事を抱き締めた。
それはまるで、ずっと心の奥が苦しくて
溜まってる膿を吐き出すかのような
悲痛な叫びにも思えて・・・
俺も、そんなニノに対して
思わず熱いものが込み上げてきた。
なんて言葉を掛けてあげたらいいのかも分からず
そんなニノをただ優しく包み込むように
俺も抱き締めた。
俺は浮気とか疚しい事は何もしていない。
だけど、彼に俺とこういう関係になった事を
後悔してると言わせた自分がとにかく許せなくて・・・
自分で自分をボコボコにしてやりたいとさえ思った。
智 『ニノ・・・俺の事、もううんざりか?』
ぶんぶん首を横に振るニノ。
智 『俺の事、もう信じられない?』
和 『違うの・・・』
智 『違うって・・・何が?』
和 『あなたのことは、死んでも嫌いにはなれない。
俺、あなたのことを信じてあげようとしない自分がやなの。
自分自身に嫌気がさしてるの。』
ううっ。泣かせやがる・・・
俺、今の言葉で完全にノックアウト喰らったぞ。
智 『うっ・・・うっ・・・ニノぉ・・・』
もう、とにかく俺はボロボロだ。
和 『はあ?ちょっ、どうしてあなたが泣くの?』
智 『おいら・・・こういうの、ダメなんだって・・・』
和 『泣きたいのはこっちなのに、
いい年しておっさんが、泣くなよ(笑)』
ようやくニノがそんな俺を見て笑ってくれた。
和 『ネックレス、返して貰ったんだ?』
俺の胸元を観てそう言った。
あ・・・相葉ちゃんから聞いてるのか?
聞いてるよな?
和 『伊野尾と飲んでたんでしょ。』
智 『ん、相葉ちゃんに聞いた?』
和 『伊野尾とリーダー、絶対付き合ってるよって言ってた(笑)』
智 『マジで?ホント勘弁して欲しいわ。』
和 『付き合ってるんですか?』
智 『昨日は伊野尾もだけど八乙女も一緒だったんだから。
そこは信じてくれ!』
和 『でしょうね・・・見られたの、相葉さんで良かったですね。
俺、他の人から聞いてたら、間違いなく今夜ここには
居なかったですよ。』
智 『マジで?』
和 『わたしは相葉さんからの情報は基本二割程度も信じませんから(笑)』
まあ、それは確かに分かる気がする。
勘違いしやすいヤツからの情報なんて
頭から信じちゃうと
後から事実とはズレてる事が多いからな。
だから、
*伊野尾くんが俺の所に来た。
*俺のネックレスを届けに来た。
*なんかタダならぬ雰囲気だった。
おそらく最後の情報は
かなり盛ってるな・・・と判断されるってことだ。
これをもしも翔君からニノへ伝達されていたら
また状況が変わってたかもしれない。
怖っ・・・
そういう意味ではあそこに相葉ちゃんが
いてくれて本当に助かったって事だ。
智 『ニノ、俺のことそこまで想ってくれてたの?』
和 『えっ?』
智 『苦しかったんだろ?』
和 『そりゃね・・・』
智 『それじゃ、もう疑いは晴れたでしょ?』
和 『完全にそうも言えないけど』
智 『ねえ・・・もう今夜は寝室戻ってくれるだろ?』
和 『うーん、どうしようかなぁ。』
智 『頼むよ。もう今回みたいな事、二度としないからさ。』
和 『言っとくけど、あなたも相葉さんと一緒だからね。』
智 『えっ?どういう意味?』
和 『あなたの言うこと、俺は二割程度しか信じないって事です。』
智 『そ、そりゃないだろ?、おいら嘘は全く言ってないから。
昨日お前に話したこと1%も作ってねえし。』
和 『ま、確かに俺も正直疲れちゃった。』
智 『え?それって俺と一緒に居る事に?』
和 『ううん、この家庭内別居だよ・・・』
智 『だけど、結局そうなった原因は俺に有るもんな。
本当に悪かったよ。』
和 『そうね、暫くは猛反省してよね。』
智 『うん、するする!』
和 『それじゃ、さとし?コーヒー淹れて(笑)』
智 『おお、任せとけ!めっちゃ美味いの淹れてやる。』
こうして、俺の浮気の疑惑は晴れて、なんとか終結した。
ただ、今回の事で
本当にお互いの気持ちとか
大切な事が色々見えたような気がする。
喧嘩ってエネルギー沢山使うし
疲れる事ではあるけれど・・・
もしかすると
時には必要な事なのかもしれないって
思ったりした。
傍から見たら、これが喧嘩というかは分かんないけど・・・
智 『ほら、コーヒー淹れたぞ。』
和 『ん、ありがと』
ニノが俺の手からマグカップを受け取りながら
御礼の意味込めて軽く頬にキスをした。
俺はそのマグカップを
もう一度ニノの手から奪い取り
テーブルの上に置いた。
和 『え?何するんだよ・・・せっかく・・・』
確か最後にしたのが
喧嘩する前の日以来だから
およそ3日振りなんだよ。
その可愛くて色っぽいニノの唇が
どんだけ恋しかったことか。
俺はニノの言葉なんて無視。
本気のキスを迫った。
和 『んんっ・・コーヒーが・・・冷めちゃうよ・・・』
智 『そんなもん・・・また淹れればいいじゃん・・・』
コーヒーなんか冷めちゃってもいいんだ。
俺達の熱が永久に冷めなきゃそれでいいんだよ。
つづく