第二章 心の扉開くとき①

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第二章

心の扉開くとき①

 

 

 

ニノはきっと酔ってるんだ。
控え室とかでもこういうことはしょっちゅう有るもの。
過剰なスキンシップはこれが初めてじゃないから
酔って気だるくなって, 肩に凭れてるだけだ。
そう自分に言い聞かせても, 心臓がドキドキと暴れ始めて何処かで期待してる俺がいる。

そしてニノはさっきから一言も喋らない。

眠っちゃったのかな?
ここはちょっと試しだと思って
俺は俺の膝の上に自然に置かれた
ニノの手をそっと上から握ってみた。
すると、ニノの頭が俺の肩から離れて
下から覗き込むように上目遣いに俺の顔を見て
ニヤリと口角を吊り上げて笑った。

智 「お、起きてたの?」

和 「フフフッ、寝てると思ったの?」

そう言って肩を揺らしながら笑い出すニノ。
やっぱり俺、完全にからかわれてるんだ。
だけど、俺の握った手を離すどころか
指を絡ませて握り返してきた。
ドキッ・・・。
俺の方がビックリしてその手を振り解いてしまう。
そんな俺を見て又ニノが笑った。

和 「どうしたの?(笑)顔、真っ赤だよ」

智 「う、うるせーよ」

和 「あ、着きましたよ?」

そんな事してたら俺のマンションの前に
タクシーが到着した。

智 「それじゃ、また明日な」

和 「何よ?それ・・・」

ニノはタクシー代を慌てて運転手に支払うと
俺と一緒に車を降りた。
って・・・えええっ?
マジか・・・。

和 「さっき俺が言った事聞いてなかったんですか?」

智 「え?何を?」

和 「今夜は泊めて下さいって言ったでしょ」

智 「でもそれは・・・」

ふざけて言ったんだろ?

和 「あなたも良いから何も言わなかったんでしょ?」

智 「冗談かと・・・思った。」

和 「駄目なの?泊めてくれないなら寒いし俺帰りますけど。」

ニノは俺にそう言うとクルリと背中を向けて
大通りに向かってスタスタと歩き出した。

智 「ニノ、待ってよ」

和 「それじゃ、泊めてくれるの?」

智 「マジで言ってるの?」

和 「俺は、最初からふざけてませんけど。」

智 「なんか今日はわけわかんねえ事多すぎるわ・・・」

和 「ほら、そうと決まれば寒いから早く帰りましょうよ」

俺はニノがふざけてるのか真面目に言ってるのか
いまだに良く分からないままニノを家に上げた。

和 「わぁい。お邪魔しまーす。さすがリーダー、広い家だな」

智 「お前んちだってこのくらい有るだろーよ?」

和 「いやいや、俺の家なんてここに比べたら小さな犬小屋にも及びませんよ。」

智 「何いってんだよ。いいから適当に座れよ」

和 「あ、大野さん。お風呂貸してよ」

智 「え?あ、ああ・・・」

俺、急に何を緊張してんだ。

和 「あとタオルと下着もね。」

智 「ええ?」

和 「だって同じの履けないじゃん。アイドルが連日同じパンツ履くなんて有り得ないですよ。」

智 「べつに誰にも見せないなら分かんねえだろ・・・」

和 「えっ?何て?」

智 「ま、いいよ。待ってて。今準備すっから。」

俺は自分の部屋から新しいパンツとシャツを取ってくる。

智 「これしかないけど」

和 「相変わらず地味ですね(笑)」

智 「嫌なら無理して履かなくていいよ。」

和 「冗談でしょ。何カリカリしてんの?」

べつにカリカリしてるわけじゃない。っていうか、そういうふうに見えるのは、俺が完全に緊張してる証拠だ。

まず、ニノとかは勿論だけど
メンバーをこの家に上げることなんて一度も無かったし
しかもニノが泊まる事になるなんて、
俺は夢にも思わなかったから
気が動転してるのかもしれない。

和 「風呂場って、あっち?」

智 「あ、待ってお湯を溜めるから」

和 「シャワーでいい」

智 「風邪ひくよ。」

和 「平気、平気。大丈夫だよ。」

ニノは手のひらをヒラヒラさせて
風呂場の方に歩いて行った。
リビングに残った俺はなんだか落ち着かない。
泊まるといっても客室なんてないし
そうなると俺はソファーで寝なきゃなんない。
寝室から毛布を運んで寝床の準備をする。
仕方ないか・・・。
どうせ今夜だけだもの。
それにしてもアイツ、酔ってたんじゃねえのか?
正気だとしたら、マジで俺の事おちょくってるんだ。
そんな事考えてたらニノがシャワーを終えて
リビングに戻って来た。
しかも、腰にバスタオル一枚。

智 「お、おいらもシャワー浴びてくる。」

和 「あれ?毛布なんか持って来て、まさかここに寝るつもりなの?」

智 「俺が今夜はここに寝る」

和 「ふうん・・・」

そしてまたそこでニノが笑い出す。

智 「何が可笑しいんだよ?」

和 「あのさ・・・」

智 「なんだよ?」

和 「だからぁ、どうしてあなたさっきから怒ってるの?」

智 「べ、べつに怒っちゃいねえよ。」

和 「そんなに嫌なら断ればよかったのに。」

智 「だから怒ってないってば。」

和 「そうかな?」

智 「そうだよ。あ、ビール飲むなら勝手に冷蔵庫から取って。」

和 「うん、ありがとう。」

俺はニノから逃げるようにシャワーを浴びに行った。
今夜、思い切って駄目もとで打ち明けようか?
嫌、そんな事して今後の関係が気まずくなるのはそれも困る。

風呂から出て、リビングに戻ると
元の着ていた洋服をキチンと身に着けて、ニノがソファーに座ってた。

和 「ビールご馳走様でした。それじゃ、俺帰りますね。」

智 「ええっ?」

 

つづく

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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