第20章
恋人のストレス②
ニノがわけ分かんない事を言って
俺に迫ってきたから、
俺は慌てて湯船から飛び出した。
ニノはちょっと口を尖らせて
不愉快そうな表情で俺を見た。
和 「あなたも慣れれば良くなると思うんだけど。」
智 「じょっ・・・冗談だろ?」
和 「俺も悪いけど男だから。」
智 「そ、そんなの言われなくても分かってるよ。」
なんか、さっきから何時もと様子が違う。
俺に、もっと他に何か言いたそうなんだけど
それが何なのか?俺には皆目検討も付かない。
それにしてもショック・・・。
ニノが一度逆転したことで
そっちが良くなったとか言われたら
俺・・・マジで考えるぞ。
だって、どう考えても
俺はそっちのキャラじゃないもん。
はあ・・・困ったな。どうしたもんだろう?
俺はそんな事考えながら身体を洗い始めた。
ニノが湯船から出て
和 「逆上せるから俺、先に上がるよ・・・」
ってバスルームを出て行った。
俺、なんか、ちょっとホッとしてるし。
あんな言い方されたらこれから
ニノに迫られなくなるじゃん。
俺も風呂からあがりリビングに戻ったら
ニノがいつもの様にゲームしてた。
俺はさっきの事があって
ちょっと気まずくて
話し掛ける事が出来なくて
ビールを冷蔵庫から取り出すと2階に上がった。
寝室のソファーに腰掛けて
頭をポリポリと掻きながら
もう一度良く考え直してみる。
ニノ、絶対なんか変だ。
俺に何か言いたいの我慢してる。
あ・・・もしかして・・・
ドラマのOA観たのかも?
今・・・そういえば確かドラマは中盤位で・・・
相手役と気持ちが少し通じ合って来てるところだ。
アイツ勘が良いから・・・
もしかすると、この先の展開が読めてるのかも。
だとしたら・・・
仕事だからヤキモチ妬くわけにもいかずに
凄いストレスが溜まってる?
何だ、そうか・・・絶対そうに決まってるよ。
だけど・・・
それが分かったからって
どうしたらそのストレス取り除いてやればいいんだ?
これってドラマが終わるまで続くのか?
はあっ・・・
俺が大きな溜息ついてたら
ニノも寝室に上がってきた。
和 「どうしたの?随分大きい溜息なんかついて。」
智 「ねえ、ニノ?」
和 「え?何?」
智 「愛してるよ。」
和 「何だよ?急に(笑)」
智 「お前は?」
和 「そんなの聞かないでも分かれよ。」
智 「やだ、分かんない。ちゃんと言って。」
和 「急にどうしたんだよ?おかしな人ですね。」
智 「どっち?」
和 「勿論、愛してますよ。」
ニノは俺の横に座って俺を抱き締めた。
まあ・・・ここまでは普通というか。
唇を重ねたら、俺をソファーに張り付けて
上から切れ長の瞳が俺を見下ろした。
ううっ・・・ヤバイ。
和 「サトシ・・・しよう・・・」
俺の手を引っ張り、ベッドへと導くけど・・・
智 「ちょっ・・・待ってよ。」
和 「え?しないの?」
智 「いや・・・そうじゃないけどさ。」
和 「けど・・・?」
智 「その・・・また俺がやられんの?」
和 「うん・・・そうだけど・・・」
智 「あのさ、もしかしてさ、俺のドラマ観た?」
和 「・・・」
やっぱり・・・。
智 「ニノ?我慢してるでしょ?」
和 「何のこと?」
智 「いいんだぞ。俺に遠慮なんかしないでも。」
和 「あの、言ってる意味が分かんないです。」
智 「強がるなって。だって何時ものニノじゃない事くらい
俺にだってわかるんだぞ。」
そう言うと、ニノは俺の身体から一旦離れて
ベッドの淵に腰掛け、ちょっとしょんぼりして俯いた。
和 「だって・・・だってね、
どう頑張っても女には勝てないもの。」
智 「はっ?」
和 「女の方がやっぱいいって言われない為には
あなたを俺のものにしとくしかないから。」
智 「ニノ?何言ってんだ?」
和 「仕事なんだし、お芝居なのは分かってるよ。
だけど・・・俺・・・何でかな?
自分でも良く分かんないんだけど
今さ、凄く不安なんだ。」
智 「ニノ・・・」
和 「ごめん。あなたには言わないつもりだったのに。
今の忘れて・・・」
うううっ・・・
泣かせやがる。
こんな可愛い恋人、他に居るか?
智 「馬鹿だな。初めから言ってくれていいのに。
ニノは我慢し過ぎなんだよ。
なんでおいら、芸能人なんてやってんだろな。
なんか腹立ってきたわ。」
和 「サトシ・・・」
智 「おいで、ニノ・・・」
今度は俺がニノをベッドに導いて
横になったニノに優しく口付けると
そこにはいつものニノが居て
甘い吐息を零しながら俺に身を委ねてくれた。
智 「ニノ?」
和 「何ですか?」
智 「何だっけ?お前の母ちゃんの名言。ストレス溜めるな・・・?」
和 「あっ(笑)なんだよこんな時に・・・
ストレス溜めるなら金貯めろ・・・でしょ?(笑)」
智 「んふふっ・・・やっぱニノはいつものニノでなくちゃ。」
やっぱりニノは笑ってなきゃだよな。
ドラマなんてあと少しで終わるから・・・
もうちょっとだけ辛抱してくれ。
俺は心の中でそう呟きながらニノを抱いた。
つづく