第23章
最優秀主演男優賞の恋人⑥
俺は仕事で着ていた衣装がたまたま
スーツでネクタイってスタイルだったんで
そのまま丸ごとその衣装を買い取って
約束の場所へ向かった。
丁度サラリーマンの帰宅時間とガチあってるから
あまり目立った場所には立っていられない。
ニノに取り合えずLINEして、待ち合わせのビルの1階の
コーヒーショップの隅の方でニノを待つ事にした。
ガラス張りの店のテーブルから
道行く人と目が会わないように
ひたすら存在を消して
ニノの姿を人ごみの中から探す。
10分位してから
猫背気味にこちらに向かって歩いてくる
可愛らしい恋人の姿を見付けた。
なかなかニノにしてはお洒落な服で決めてる。
ちゃんと言われたとおりにしてくるって
どんだけ可愛いんだよ。
俺は席を立って
ニノに向かって手を振ったけど
気付かないわな・・・。
俺は朝出掛けた時の格好とは違って
スーツ姿だから。
俺は急いでニノが立ってる場所へ向かう。
ニノはキョロキョロと俺を探してる感じ。
俺は後に回って
背後からからふざけた声を掛けた。
智 「お兄ちゃん、俺と遊ばない?」
和 「え?あっ・・・」
智 「あはははっ。ビックリした?」
和 「何?その格好・・・仕事から直接来たの?」
智 「そう・・・ニノと大事なデートだから(笑)」
和 「なんか企んでるだろ?」
智 「んふふっ。いいから行こう・・・」
和 「行くって何処に?」
智 「俺達の大事な想い出の場所だよ。」
ニノは首を傾げて俺の横を歩いた。
そのビルの近くまで来たら
さすがに思い出したみたいで
和 「あ・・・ここってもしかして?」
智 「うん、思い出した?」
和 「うん・・・。へえ・・・そうだったの。」
智 「ええ?」
和 「お洒落して来いって、そういうことね・・・」
智 「そうそう。ここはさすがにパーカーとサンダルじゃマズイだろ。」
和 「そうですね・・・」
ニノはちょっと俯いて
嬉しそうに笑った・・・。
店 「いらっしゃいませ・・・ご予約の大野様ですね?」
智 「窓際、空いてます?」
店 「はい・・・ご用意しております。」
そう・・・その席はあの日と同じ
ガラス越しの夜景を見渡せる最高の席。
俺達はそこに並んで腰を降ろした。
俺はジントニック、ニノは連日だから
飲まないってノンアルコールビールを頼んだ。
智 「1杯ぐらい付き合えよ」
和 「ダメだよ。車で来ちゃったもの。」
智 「そうなの?なーんだ・・・」
和 「心配しないで、あなたが潰れたらおいて帰るから(笑)」
智 「マジか・・・それなら好きなもん食えよ。」
和 「うん・・・サトシ、有難うね」
智 「違う違う・・・今日は受賞のお祝いのつもりなの。」
和 「あ、そうなんだ。」
運ばれて来たグラスを傾けて乾杯をした。
智 「良かったな。おめでとうニノ・・・」
和 「うん、ゴメンね。夕べは・・・」
智 「今日はその話はもう止めとこうよ。」
和 「うん、でも・・・。あのね、俺ね、今日気になって
岡田君に電話してみたの・・・」
智 「ええ?」
和 「だって酔っ払って失礼な事したかもしんないじゃん。」
智 「まあな・・・」
和 「俺、何も覚えてないって言ったら、凄い笑われて・・・
でもね・・・その、言ってたみたいな事は
何もしてないって・・・」
智 「うん・・・。そうか。」
和 「怒ってない?」
智 「怒んないよ。」
和 「どうして?俺ね・・・」
智 「俺がお前の事全然分かってなくて、今朝あんな事言って
悪かったって思ってる。ゴメン・・・」
和 「俺、どうしてあんなになるまで飲んじゃったのか・・・
正直自分でも分かんなくってね。」
智 「凄いプレッシャーだったんだよな。お前が取るって分かってても
俺だって吐きそうなくらい緊張したもの。」
和 「もしかして、これってJの提案?」
智 「え?何で分かったの?」
和 「ええ?そりゃ分かるよ。それでも嬉しいけど・・・」
智 「それじゃ、ついでにもう1個喜んでくれるか?」
和 「え?何?」
俺は上着のポケットから
さっき松潤と買った指輪を取り出すと
ニノに箱ごと渡した。
智 「開けてみて・・・」
和 「こ、これってもしかして?」
ニノの瞳がキラキラに輝いて俺を見つめた。
和 「これって、結婚指輪?」
智 「手・・・貸してみ?」
俺はニノの可愛らしい手を取り
薬指にそっとその指輪を嵌めてあげた。
ついでに俺のもニノに渡して嵌めて貰った。
智 「結婚してくれるよね?」
和 「勿論・・・ていうか、もうしてるのと一緒でしょ?」
智 「教会行くのも話だけで終わってるから、
今度お互いの休みが合う時に行こうな。」
和 「何か最高のご褒美だな・・・」
智 「お前は一人で何でも背負い込もうとするからな。
これからは、二人で全部分かち合っていくんだぞ。
嬉しいことも、しんどいことも・・・」
和 「うん・・・」
ニノは感激だったみたいでずっと目がウルウルに潤んでた。
つづく