第23章
最優秀主演男優賞の恋人⑦
智 「おいらさ・・・駄目な男だな。」
和 「何?もう酔っ払ったんですか?」
ニノは気分が良さそうに東京の夜景を見つめた。
その目にキラキラと街の明かりが映ってて
なんだかそれに吸い込まれそうになる。
智 「だってさ、お前が抱えてたプレッシャーに
気付いてもあげずに・・・ゲストルームで寝るなんて。
しかもあんな嫌味な言い方までしてさ・・・ゴメンな。」
和 「サトシ・・・」
智 「おいら、お前の恋人失格だよな・・・」
和 「そんな。でもそれって、好きだから妬いてくれたんでしょ?
俺は嬉しかったりしたけどな・・・」
智 「お前は何時からMになった?」
和 「えっ?変な言い方はやめて下さい・・・」
智 「だって・・・苛められて喜んでるじゃん。」
和 「もう~どんだけ馬鹿なの?(笑)
他のヤツとイチャイチャしてたって聞かされて
平気な顔させるのと、ヤキモチ妬かれるんだったら
ヤキモチのほうが嬉しいって意味で言ってるんです。」
智 「あ・・・そうか・・・」
和 「よーく覚えておいて下さいよ。俺が平気な顔してるようなら
もう、あなたの事冷めちゃった証拠ですよ(笑)」
智 「え?冷めんの?そんなのヤダっ!」
和 「例えばの話だよ。」
ニノは薬指の指輪をかざしてそれを見て
ニッコリと微笑んだ。
和 「はあ・・・受賞できて本当に良かった。だって、
あなたからまさかこんなサプライズなプレゼント貰えるなんて
思ってもみなかったから・・・」
智 「受賞出来なかったとしても、プレゼントはしてたと思うよ。」
和 「へえ・・・本当に?」
智 「うん。勿論・・・」
和 「今夜はゲストルームで寝ない?」
智 「当たり前じゃねえか・・・」
和 「そう・・・良かった・・・」
智 「ニノ・・・」
和 「ん?なに?」
智 「駄目だ・・・帰ろう・・・」
和 「え?だってまだ1時間も飲んでないじゃん。」
智 「もう、早くギューってお前のことしたい。」
和 「はははは・・・俺は逃げないよ。」
智 「チューしたい・・・」
和 「ちょっ・・・聞こえるよ(笑)」
智 「いいよ。聞こえても」
和 「駄目だって(笑)んもう・・・それじゃ早いけど帰りますか?」
智 「うん、帰ろう。俺達の家に・・・」
あの日の事が昨日の事みたいに
二人の頭の中で蘇った。
そう・・・あの日のニノは
急に酒のペースが上がって
そろそろ帰ろうってニノの方から言い出したんだよな。
そしたら、ニノが俺のマンションに泊まると言って・・・
あの日が無かったら、きっと今の俺達は居なかった。
同じ場所で改めてプロポーズも出来た。
あの頃より前の俺達にもう二度と逆戻りはしないよな。
何が有っても。
この先どんな事が有っても・・・。
俺はレジで支払いを済ませてその店を出た。
ニノが車を停めてる場所まで
街中だから手は繋げないけど
ぴったりと寄り添いながら二人並んで歩いた。
車に乗り込んだら
俺は我慢してたから
堪らずにニノの手を握り
キョロキョロと辺りを見回して
人影が無いのを確認してから軽くキスをした。
ニノは照れくさそうに
右手で口元を覆って
和 「それじゃ、帰りますよ?」
って車を走らせた。
智 「やっぱ、俺も仕事頑張ろうっと・・・」
和 「えっ?」
智 「俺もニノからご褒美貰いたいもん。」
和 「ええ?いいけど・・・何か欲しいものでも有るの?」
智 「うん・・・」
和 「え?何よ?」
智 「俺が何か大きい仕事でニノみたいに表彰でもして貰ったら
その時に教えるよ・・・」
和 「ええ~気になるじゃん。」
智 「いいの・・・俺のモチベーション上げる為だから。」
和 「ははは・・・それはいい事じゃ有りますけどね。」
智 「んふふ・・・だろう?」
本当は欲しいものなんて何も無いんだよ。
ニノがずっと俺の傍から離れないで居てくれたら
ただそれだけで・・・俺は満足なんだ。
でもそれはまだここでは言わないけどね。
俺の恋人は本当に凄いんだよ。
日本の役者が欲しくても簡単に手に入れることの出来ない
大きな賞を受賞しちゃうくらいの俳優なんだ。
だけど、俺の前では
そういう姿を一切感じさせないくらい
可愛いくて、時には生意気な口を利いて
時には色っぽく俺を翻弄する
大切な大切な恋人なんだ。
そんな彼を独り占めしてる俺は
世界一幸せ者かもしれないって思うと、
思わず顔がニヤけちゃって
和 「思い出し笑いすんなよ。このエロ親父・・・」
って、笑いながら叱られた。
つづく