第25章
恋人を信じたい⑥
(side nino)
俺が家に帰りついて
重い気持ちのままリビングに入ると
リーダーの姿が見当たらない。
俺は2階に上がりアトリエ部屋を覗いた。
リーダーは何か夢中で絵を描いていて
俺が帰って来たことも気付かない。
和 「ただいまぁ・・・」
智 「うぉ~びっくりしたぁ・・・何?随分早いじゃん。」
和 「あなたが心配するといけないからね・・・」
智 「おいら、お前の事信じてるから。」
リーダーが絵を描く手を止めて立ち上がった。
俺は走り寄ってリーダーの胸の中に飛び込んだ。
智 「ん?どうかした?」
和 「ううん・・・どうもしない・・・」
リーダーが俺の顔を覗き込む。
何も知らないこの人に・・・
いったいどうやってこの話を切り出そうか・・・。
和 「リーダー、何か食べました?」
智 「うん・・・テキトーにある物で・・・」
和 「ちゃんと栄養あるもの食べないと駄目だよ」
智 「いいの・・・俺、最近またちょっと丸くなってるから。」
和 「そう?そんなことないと思うけど・・・」
智 「ドラマの時体重落としたからリバウンドかな?」
和 「あれはちょっと絞り過ぎだもの。
そのくらいでちょうどいいですよ。」
智 「それで?山ちゃん、話って何だったの?」
和 「ああ・・・俺の事が好きですって(笑)」
智 「ええっ?本当にぃ?」
和 「冗談だよ(笑)」
智 「じょ、冗談キツイぞ・・・」
和 「ごめん、ごめん(笑)その事でちょっと話が有るんだけど・・・」
智 「え?俺に・・・?」
和 「うん、リーダーにも聞いておいて欲しいんだ。」
智 「それじゃ、ここ片付けるから待ってて。」
和 「あ、別に今じゃなくてもいいけど・・・」
智 「お前が帰って来たのに、絵なんか描いてる場合じゃないよ。
直ぐ行くから、下で待っててよ・・・」
和 「あ・・・わかった。」
ここは、正直に何もかも話して
事態を把握してもらうかしかないよな。
俺はリビングに降りて
ソファーに寝そべってリーダーを待った。
智 「はい、お待たせ・・・」
寝転んだ俺の顔をリーダーが真上から見下ろした。
俺はきちんと起き上がってリーダーを横に座らせた。
和 「今から話すことは、絶対誰にも言わないでね・・・」
智 「え?何なの?」
和 「あのね、涼介のヤツ・・・
女性スキャンダル起こしちゃったらしいの。」
智 「ええっ?ホント?」
山田に女の存在を知ったリーダーは
とりあえずそこで安心したのか
ビックリした顔した直後、フニャッと笑い
智 「アイツもやるなぁ・・・」
和 「それで記者にマークされてて、上に相当叱られたらしいんだ。」
智 「そりゃそうだろうなぁ・・・」
和 「それでね・・・ここからが大事なんだけど・・・」
智 「えっ?大事って・・・それだけじゃないの?」
和 「彼女が居たましたって俺に打ち明けるだけで、
わざわざ相談とかしないだろ・・・」
智 「あ・・・それもそうだな。・・・で?」
和 「事務所が出した結論がこうだよ・・・
女性問題を揉み消して、ファンからの視点を逸らすのに
俺と涼介が付き合ってる・・・みたいなお芝居をさせることを
上が企んでるみたいなの」
智 「え?まさか・・・だって、ニノは俺と同棲してる事も
事務所は了解してくれてるんだぞ・・・なのにどうして?
タレントは他にも居るじゃん。」
和 「ゴメンね・・・俺もちょっとは悪いんだ。
若いときさ、俺も女性問題では事務所に散々叱られて
色々と迷惑掛けた事があるでしょ。
まぁ、たまたま映画とかで共演したりとか、
番組で一緒になる事が多かっただろ。
それで俺の名前が出たみたいなんだけど。」
智 「それでもおかしいよ。ニノには俺が居るって分かってるのに。」
和 「うん・・・それもね逆にペナルティなんじゃない?」
智 「そんな・・・マジかよ・・・」
和 「さすがに嫌ですって断れないよね・・・。」
智 「ずるいよ。そこは公約にはなかった話じゃん。」
和 「これも仕事なんだよ、俺達の・・・」
智 「そんな・・・。」
和 「一芝居打てばいいだけでしょ。」
智 「でもそれは山ちゃんだけが騒がれるんじゃなくてさ
お前も一緒に疑惑を背負うことになるんだろ?
冗談じゃないよ・・・」
和 「俺は誰に疑われたとしても、あなたが信用してくれてたら
それでいいけど・・・」
智 「ニノ・・・」
当然なんだろうけど
リーダーは納得いかない様子。
唇を引き結んで膝の上の拳を力一杯握り締めてた。
つづく