第26章
偽装の先に待っているもの③
(side nino)
リーダーにその朝は結局、山田とのことは
説明する事が出来なかった。
俺を信じてくれてるのが凄く分かるし
さすがにあの状況からは言えないよ。
だけど、隠してたとしても
世間が騒ぎ出すのは時間の問題だから
遅かれ早かれリーダーの耳には入るだろうし
俺と山田のキスの画像は見られてしまうだろう。
やっぱり自分の口から伝えなきゃ。
俺は今夜、仕事から戻ってそれを
きちんと説明しようと心に決めていた。
それからお互い別々の仕事に向かい
俺は寝不足だったけど、なんとか仕事をこなして
夕方にはマネージャーの車に乗った。
マ 「ニ宮さん・・・上からお話聞いたんですが、
JUMPの山田くんの事、大変でしたね」
和 「なんだ。早速マネージャーには話してあるの?」
マ 「今週金曜日発売の週刊誌・・・
かなり大きく出るみたいですよ。」
和 「そう」
マ 「大野さんも、ご存知なんですか?」
和 「いや・・・今夜話そうと思ってるけど・・・あっ・・・
ってことはさ、リーダーのマネもこの事知ってるんだよね?」
マ 「はい。嵐とJUMPのマネージャーは全員知らされてますから。」
和 「あー、そうかぁ、そうだよね。」
マ 「どうかしましたか?」
和 「いや、仕方ないか・・・」
多分、リーダーも帰りの車の中でこの話聞かされてるかも。
寝不足で頭がイマイチ働かなかった俺も俺だけど
それにしても、朝の出来事なのに・・・もうかよ?
他人から俺と山田のキスの話を聞かされたら
リーダー、ショックだろうなぁ。
これじゃ順番が逆だよ。
自分の言葉で説明したかったのに。
マ 「副社長もニ宮さんの事褒めていらっしゃったそうですよ。
さすがはニ宮さんだって・・・」
和 「どういう意味?」
マ 「指示したことを自分でしっかり演出して実行できる。
とか言って絶賛されてたそうです。」
和 「ふーん。だから俺は利用する価値が有るってことか。
さすがに俺もここから先は無計画だよ。
マスコミやファンへの対応はまだ何も考えていないもの」
マ 「その事で、明日二宮さんと山田君には
上からお話が有るそうなんです。
明日は午後からのお仕事ですけど、午前10時には
お迎えに伺いますんで。」
和 「ええ?マジで?もうそういうのシナリオだけ渡してくれたら
それでいいのに・・・面倒だな。」
マ 「まぁ、ここをシッカリ打ち合わせしておかないと
世間が大騒ぎしますので。」
和 「ねえ?これって勿論お芝居だけど、世間は信用するのかな?」
マ 「そうですねえ。山田君のファンにとっては
むしろプラスかと思いますよ。女性の存在にヤキモキするより
相手が二宮さんですしね。だけど、二宮さんにとっては
マイナス要素の方が大きいですよね。」
和 「後輩に手を出す悪い先輩ってこと?」
マ 「なんて申し上げていいのか・・・その・・・」
和 「何?遠慮なんてしなくていいから、率直に答えてよ。」
マ 「はあ・・・これはあくまでも私の考えですが
今回の事で、二宮さんと大野さんの関係を知らなかった
場合の話ですけど・・・
やっぱり、相当プレイボーイだったんだ・・・って
イメージを抱いてしまいそうな・・・」
和 「そうか。フフッ、役者冥利につきるね。その言葉。」
マ 「あ、すみません。変な言い方して。
勿論、私はこれがお芝居だって分かってますから。
二宮さんは、大野さん一筋なの知ってますしね・・・」
和 「喉元過ぎれば熱さ忘れる・・・だよ」
マ 「そうですね。騒がれるとしてもほんの暫くの事でしょうね。」
和 「問題はリーダーだよ・・・。」
マ 「カメラが回っていない所でのキスシーンを果たして
理解してくれるか・・・?ですか?」
和 「うん・・・。特にタイミング悪くさ、涼介に関しては
過剰なまでに敏感になってるのよ、あの人。」
マ 「ヤキモチ妬いてるってことは、それだけニ宮さんの事が
お好きなんですよ(笑)良いですね。仲が良くて・・・」
和 「だからちょっとした事でも不安にさせちゃうんだ。
あの人がもう少し芸能人っぽかったら
理解して貰えるんだろうけどね」
マ 「多分、大野さんがそんなんだったら、ニ宮さんは大野さんに
きっと興味も持たなかったでしょう(笑)
芸能人らしくないところが大野さんのいい所だと思いますけど?」
和 「ん・・・確かにね。
素人芸能人にどんな言い訳もなかなか通用しないかなぁ。
それじゃ明日10時ね・・・」
マ 「はい。お疲れ様でした」
マネージャーの言うとおりだった。
あの人のいつまで経っても素人感抜けないとこが
俺は大好きなんだ。
だから説明なんかしたところで
あの人には到底理解なんか出来る筈がないんだよ。
つづく