第26章
偽装の先に待っているもの④
(side nino)
和 「ただいま・・・」
智 「・・・お帰り・・・」
俺と目を合わせようとはしない。
智 「何で?」
和 「え・・・?」
智 「どうして今朝何も言わなかった?」
和 「何を?」
智 「言いたくないのならいいや・・・。」
だって・・・あなたに理解出来る?
どうせそこを細かく説明したところで
傷口に塩を塗りこんじゃうだけでしょ。
和 「怒ってるの?」
智 「何も怒ってないよ・・・」
和 「俺はね、あなたにだけ真実を分かって貰えれば
後はどうでもいいと思ってる・・・」
智 「俺は言ったじゃん。お前の事信じてるって・・・」
和 「うん・・・」
智 「どうせ芝居だろ?その方が確かにさっさと終わらせられるもんな。
お前らしいよ・・・」
え?あ・・・結構分かってくれてるんだ?
智 「だけどさ・・・俺が心配なのは、アイツが勘違いしないかだよ。」
和 「えっ?」
智 「どうせニノのことだから、何の迷いもなく
そういう事になったんだろ?だから・・・その・・・
なんていうかさ・・・ガチでお前の事好きになったりしないか
それが心配なんだよ・・・」
和 「サトシ・・・」
俺はリーダーの口からそれを聞けて
なんかとても嬉しくって
ソファーに腰掛けてたリーダーの後ろから
思いっきり抱き締めた。
智 「ううっ・・・苦しいよ(笑)」
和 「あなたも、俺に似てきましたね(笑)」
智 「ええ?どういうことだよ?」
和 「俺もね、あなたのことは信用出来ても、他のヤツは
一切信用しない性質なんで・・・(笑)」
智 「あ・・・それじゃ一緒かもな。」
和 「一緒に住んでたら似てくるのかなぁ?ふふふっ・・・」
智 「ふふふっ・・・じゃねえよっ。大丈夫なんか?本当に・・・」
和 「知りませんよー。俺、涼介の気持ちまで分かんないもん。
だけど、仮にそうだとしても、俺にはあなたしかいないし。」
智 「本当に?」
和 「そこは信用してくれないの?」
智 「うーん・・・それじゃチューしてよ」
和 「そんなんで信用するの?」
智 「そうじゃねえけど、なんか嫌だし・・・
幾ら芝居でも覚えてるだろ?俺がリセットしてやる・・・」
和 「うわっ・・・何か急にカッコイイですね(笑)」
智 「冗談言ってる場合じゃないぞっ。いいから早くこっち来いよ」
俺はソファーの後ろから回って
隣に腰掛けて顔を覗き込んだ。
和 「ハイッ・・・どうぞ・・・リセットして・・・」
目を瞑って唇を尖らせるけど
可笑しくってつい顔が笑っちゃう・・・。
智 「笑うなよ・・・何が可笑しいんだよ?」
和 「え?いや・・・やっぱ俺はあなたが好きだって思って。」
智 「嘘つけや、リセットにウケてるだけだろうが・・・」
和 「それはちょっと正直面白いよ(笑)
だけど本当に凄く嬉しいんだ。
そのサトシの気持ちが・・・
だから、リセットして・・・ね?」
俺はリーダーの顔を両手で包み込んで
自分から唇を重ねた・・・。
やっぱり、あなたとのキスじゃないと
俺は全然感じないよ。
薄目を開けてその表情を覗き込めば
真剣なキスをするリーダーの顔・・・。
その顔は好きって気持ちが溢れてるから
俺も好き・・・
リーダーの舌が俺の口内に忍び込み
頬の内側から歯の裏側まで
まるで掃除してくれてるみたいに
ゆっくりとその舌先が右に左に器用に動き回る。
俺はまたそれが可笑しくて
リーダーから離れて笑った。
智 「何だよ?」
和 「だって(笑)それって殺菌消毒みたい・・・はははっ」
智 「俺からすりゃ、アイツはばい菌と変らない・・・」
和 「酷いな・・・幾らなんでもそれは言い過ぎよ?」
智 「冗談だよ(笑)でも、俺が全部忘れさせてやる!」
和 「イチイチかっこいい事言って笑わせないで(笑)」
俺が腹を抱えて笑ったら
そのままソファーに押し倒された。
真面目な顔で俺を見下ろすリーダーに
ドキッと俺の心臓が高鳴ったけど
和 「今朝も確か、しましたよね?(笑)」
智 「さあね?そんな半日前のことなんて覚えてられっか。」
和 「あのねぇ・・・」
呆れた口調でそこまで言ったら
それから先の言葉は完全に唇で塞がれた。
ま、いいですけど(笑)
つづく