第27章
恋人の秘密④
その日仕事から帰ると
ニノが俺よりも先に仕事から戻ってて
いつも通り、何も無かった様に
晩飯を作って待っててくれた。
和 「お帰り。」
智 「ただいま・・・。おっ、今日はカレーか。」
和 「うん。明日俺遅くなりそうだから、
カレーだとチンして食べれるでしょ・・・」
智 「あ・・・俺、明日ちょっと外で食ってくるから。」
和 「え?誰かと約束でもしてるの?」
智 「うん。山ちゃんに誘われたから・・・」
俺はサラッと本当の事を話す。
どうせ、嘘付いてもバレるだろうから・・・。
だけど、俺のそのひと言でニノの顔色は変った。
和 「涼介と?・・・何で?」
智 「偶然、今日局の廊下で逢ってさ。何か俺に話がしたいって。」
和 「へえ・・・」
智 「なんだろうな?俺に相談って
・・・まさかニノの事だったりして。」
和 「な・・・何で?俺のこと?それもリーダーに?」
智 「知らないよ。明日聞いてみるまでは・・・」
和 「そう・・・」
ニノは眉間にシワを寄せて
フッと小さく溜息をついた。
和 「それより、食べようよ。」
智 「うん、丁度お腹空いてたとこだよ。」
和 「あっ・・・ゴメン、福神漬けが切れてたんだ。
ちょっと俺、そこのスーパーまで買いに行って来る。」
智 「え?いいよ・・・どうしても無いと食えないとかないし。」
和 「何で?カレーには福神漬けだろ?
直ぐに戻るからさ、あなた先にお風呂でも入っててよ」
智 「う、うん・・・」
ニノはそう言うと
福神漬け買うと言って、慌てて出て行った。
もしかして・・・
山ちゃんに電話でもしに行った?
俺に余計な事言わないように・・・?
俺はニノが嘘を付いた時から
ちょっと過剰なまでに疑り深くなっていた。
もう、本当にそういう自分が嫌になる。
こういう事はもう終わりにするべきだよ。
お互いに秘密は持っちゃ駄目だ。
相手を気遣っての嘘だとは分かってるけど
決してそれは良い方向へは導いてはくれない。
俺は明日、山ちゃんからハッキリとした気持ちを聞いて、
それに対してこれからニノがどうするつもりなのか?
それを確認さえ出来ればそれでいい。
そこに関してニノが
俺よりも山ちゃんを選ぶとは思っていないし
それだけはニノのことは愛してるし、信用してる。
ただ、思わせ振りは絶対駄目だ。
それは相手が余りにも時間を無駄にして
気の毒過ぎるから・・・
ニノにはハッキリと断るように言うつもり。
俺が風呂に入ってる間に
ニノがスーパーから戻って来てた。
食卓に置かれたカレー皿に
いつもより多目の福神漬けが盛り付けられて
ニノはやっぱりそれでもいつもより元気が無くて
明日の事を相当心配しているのが分かるから
なんとなく可愛そうにも思えてきちゃう。
何もニノの事を困らせようと思って
明日の事を話した訳じゃないけど
結果的に、憂鬱そうな彼の表情を見ると
なんだか余計に可哀想になる。
智 「やっぱカレーには福神漬けだなっ」
って大袈裟に旨そうにそのカレーをペロッと平らげた。
和 「あのさ・・・リーダー・・・」
智 「ん?旨いぞ・・・お前全然食ってないじゃん?」
和 「うん・・・ちょっと話が有るんだけど。」
このタイミングで
山ちゃんの事、話すのか?
智 「え?なに?」
和 「やっぱり、隠しても明日には分かる事だから。」
電話の事謝るのかな?
和 「あのね・・・怒らないで聞いてくれる?」
やっぱ、そうだな・・・
和 「俺さ・・・べつにそういうことを言われたからって
俺にはあなたが居るし・・・全然何とも思わないんだ。」
智 「え・・・何の話?」
和 「俺さ、この前涼介とたまたま番組で一緒だったの。
そんとき、告られたというか・・・その・・・」
智 「ええ?」
ただの電話の詫びだって思ってたのに・・・
それは俺が明日、山ちゃんに直接確認しようと
思ってた事だった。
智 「そっ、そうなの?」
和 「勿論俺はなんとも思ってないよ。アイツの事・・・
だけど、あなたと付き合ってる、
同棲してるってことを言えないから
その時点でうまく言葉を交わして逃げちゃったんだ。」
智 「マジか・・・」
それで、脈があると勘違いされて
電話とか掛けてグイグイとニノにアタックしてるって事?
和 「あなたとの関係もさすがに良く見てるのか、
凄く疑ってるんだ。だから、恐らくあなたに
最終確認をしたくて、誘ったんじゃないかと思うの。」
智 「俺に?」
和 「たぶんね」
智 「だったら俺、お前の事好きだから諦めてくれって
そう言えば諦めてくれるのかな?」
和 「そんな事言ったらバレないかな?俺達の関係・・・」
智 「べつに付き合ってるとか、同棲してるって言う訳じゃないし。」
和 「うーん・・・」
ニノはテーブルに頬杖ついて悩んでた。
つづく