第27章
恋人の秘密⑥
次の日、山ちゃんから連絡を貰い
軽く飯でも食べようって事になって
仕事の現場からそう離れてない
焼肉店で待ち合わせした。
山 「先輩、今日は無理を言ってすみません・・・」
智 「ううん、それじゃ、適当に頼んじゃう?」
山 「コースにしましょうか?」
智 「おいらあんまり量は食えないからな。単品がいいかも。」
山 「それじゃ、好きなの頼んで下さい。今日は僕が奢ります。」
智 「本当に?悪いなぁ・・・」
山 「僕が誘ったんですから、当然ですよ。
遠慮しないで沢山食べていいですよ。」
智 「それじゃ、ロースとタン塩・・・カクテキに
・・・あと卵スープかな・・・」
山 「それだけですか?」
智 「おいら、マジであんまり食えないの。」
山田は笑いながら店員を呼んで
注文をしてくれた。
なかなか気遣いとかちゃんと出来るんだな。
若いのに感心だ。
その後直ぐに飲み物が運ばれてきて
俺達はひとまず生ビールで乾杯した。
智 「えっと・・・それで?俺に相談って?」
山 「あ、実は・・・二宮先輩のことなんです。」
姿勢を正して俺を真っ直ぐに見つめて
そう答えた・・・。
智 「に・・・ニノ?」
山 「はい。僕、ニ宮先輩の事、好きなんです・・・」
智 「うっ、そ、そうなんだ・・・」
俺は目の前にあったビールを一気に飲み干した。
山 「単刀直入にお聞きしますけど、大野さんはニ宮先輩のこと
どう思われてますか?」
智 「え、えっ?俺・・・?」
そんなの好きに決まってる!
と・・・喉まで出掛かった。
智 「ニノは仲の良いメンバーだけど・・・」
山 「それだけですか?」
智 「それだけだよ。どうして?」
山 「これは僕の直感なんですが、
ニ宮さん見てたら、どうしても大野さんの事
好きなんじゃないのかなって・・・
もし、お二人の関係が仕事以外の所でも有るとしたら
僕には入る余地が無いかなって・・・」
智 「あのさ、ニノの事、そんなに好きなの?」
山 「はい・・・好きです。」
智 「どうして?女の子と付き合ってたんでしょ?」
山 「ええ、以前はそうです。
でも彼女とはもうとっくに終わりました。
二宮先輩は昔から僕の憧れだったんです。
だけど、自分でもまさかこんな気持ちになるなんて、
思ってもみませんでした。」
智 「週刊誌のこと聞いたけどさ、
あれは上から言われたから実行しただけの
お芝居だったんだよね?」
山 「ニ宮先輩はそうだったかも知れませんけど、
僕は素直に嬉しかったんです。
相手役にニ宮先輩って聞いて・・・」
智 「ずっと前から意識してたってこと?」
山 「自分の気持ちに気がついたのは、
ああいう事が有ってからです。」
智 「やっぱそうか・・・」
山 「え?・・・」
智 「あ、ううん、なんでもない。」
山 「大野さんが敵でないって分かったら
なんか安心しました。
これから、僕の味方になって貰えませんか?」
智 「味方?例えば?」
山 「最近、二宮さん、電話にも出てくれなくて。
もしかしたら嫌われてるのかも。」
智 「それで?おいらににどうしろって?」
山 「僕、ニ宮先輩に逢いたいんです。二人っきりで・・・」
智 「あのね・・・山ちゃん。
そういうの、やっぱおいらじゃなくて
直接ニノに伝えた方が良いと思うわ。
ニノが電話に出ないのなら、そこはなんとか
俺が段取りはしてあげるよ。
だけどそれは1回だけだよ?」
山 「本当ですか?」
智 「う、うん・・・」
山 「良かったぁ。僕、頑張りますっ。」
焼肉を頬張りながら
何とも言えないくらい嬉しそうな顔をする。
こうして対面で見てるだけでも
羨ましいくらい綺麗なビジュアルだ。
お前なんか、頑張れば幾らでも
恋愛なんかうまくいくだろうに。
悪いけどニノだけは絶対に譲れないよ。
だってニノはもう俺のものだから。
なんか、昨日ニノと二人で
考えたシナリオ通りに話を進めてはいるものの
心がざわめき立つのは何故なんだ?
智 「あー旨かったぁ。本当にいいの?ご馳走になっても。」
山 「勿論ですよ。僕とニ宮先輩がうまくいったら、
今度はもっと豪華なのご馳走しますね。」
智 「え・・・あ、うん・・・」
山 「それじゃ、大野さん、二宮さんの件
宜しくお願いします。」
智 「う、うん・・・分かったよ。」
俺はご機嫌な山ちゃんの後ろ姿を見送り、
直ぐにニノに電話を入れた。
智 「あ、もしもし・・・ニノ?」
和 「あっ、リーダー?もう話は済んだの?」
智 「ああ・・・たった今別れたとこ。」
和 「俺も今家に戻ったところだから、
そこまで迎えに行きますよ。今、何処?」
智 「いいよ。タクシーで帰るから・・・」
和 「いいよ。俺が迎えに行く!何処まで行けばいい?」
恐らくニノはじっとしていられなかったんだろうな。
山ちゃんにはあんなこと言っておきながら
やっぱり本音は逢わせたくない。
ニノを待ってる間、
俺はずっとそんなことを考えていた。
つづく