第27章
恋人の秘密⑨
(side nino)
そして・・・それから数日後、
俺はとある週刊誌で
またもJUMPのメンバーの1人のスキャンダル記事を目にした。
どうなってるの?アイツら・・・
これから事務所の期待を
大きく背負ってるグループだってのに。
スキャンダル多過ぎやしないか?
だけど、彼等はまだまだ若すぎて
俺もそうだったけど・・・
青春時代の一番遊びたい盛りに
色んな事を禁じられて
羽交い絞めにされるのを窮屈に感じるのも
無理は無いよな・・・
俺も年を重ねていくうちに色々と分かってきた。
そして気がつけば
俺の近くにいつもリーダーは居た。
それは俺にとってかけがえの無い大切な人。
あの人と過ごす時間が最高の癒しってことに
気付くことが出来た。
アイツらもそのうち分かる時がやってくる。
何が一番自分にとって大事なのかが。
こういう状態で二人きりで逢うのはやっぱり
危険すぎる。
また週刊誌にネタにされたりしたら
今度こそごめんなさいでは済まされない。
俺はそれでもキチンとケジメを付けないとって、
その夜、山田の携帯に電話を入れた。
和 「あっ・・・もしもし、涼介?俺だけど。」
山 「二宮先輩?もしかして・・・逢ってくれるんですか?」
和 「大野さんから聞いたよ。」
山 「あ、そうなんですね?」
和 「それより、JUMP大変だな。色々次から次に・・・」
山 「ああ・・・ええ、お騒がせしてすみません。」
和 「本当は直接逢って話そうか悩んだけど、
こういう時だしさ、やっぱり
電話でもイイかなと思って。
涼介、俺ね、好きな人が居るのは話したよね?
その人とは将来を約束してるんだ。
実は相手は明かせないけど、事務所もそのこと
認めてくれてるんだ。」
山 「ええっ?そ、そうなんですか?」
和 「うん。俺に好意を持ってくれるのは嬉しいよ。
だけど、俺はそういうことだからお前の気持ちには
応えられないよ。ゴメン・・・」
山 「・・・そうかぁ。そうですよね・・・。
二宮先輩が俺の事相手にしてくれるわけないって
思ってましたけど、ちょっとは何処かで俺にも
チャンス有るのかなって、なんか勝手に盛り上がっちゃって。
あ、でも気にしないで下さい。
俺・・・大丈夫ですから・・・」
和 「お前は全然若いからこれから俺なんかよりも、
ずっとイイ人が現れるよ・・・。」
山 「先輩・・・先輩の好きな人ってどんな人ですか?」
和 「えっ?・・・うーん、そうだな(笑)
俺に似てるけど実は真逆って感じ・・・かなぁ。」
山 「へえ・・・その人が羨ましいな。」
和 「そう?」
山 「ええ。先輩、話してくれて有難うございました。
僕、潔く諦めます。これからは事務所の先輩後輩として
今まで通り宜しくお願いします・・・」
和 「うん・・・こちらこそね」
電話の向こうの亮介の悔しそうな顔が少しだけ浮かんだ。
今はちょっと辛いかもしれないけど
もっと大人になって振り返ったとき
きっとこれも笑い話になるんだよ。
それより、意外としっかりしてたな。
俺なんかよりずっとアイツは大人なのかも・・・
こうして、なんとか俺と山田の偽装のキスから始まった
恋愛騒動は幕を閉じた。
スマホをテーブルの上に置いて
アトリエ部屋で黙々と絵を描いてる
リーダーの様子を覗きに行った。
和 「リーダー?終わったよ。涼介のこと・・・」
智 「ん?あ・・・え?何時逢ったの?」
和 「フフッ・・・逢うわけ無いよ。たった今電話でね。」
智 「大丈夫だった?」
和 「うん・・・分かってくれた。」
リーダーが絵筆を置いて立ち上がると
俺の方に歩いてきて
俺の身体をぎゅっと力一杯抱き締めた。
智 「カズ・・・」
和 「ん?・・・」
智 「一生俺の傍に居ろよ?」
和 「フフッ・・・うん。あっち行けって言われても
離れてやんないから。」
リーダーが凄く穏やかで優しい顔して俺に微笑んだ。
好きって想いが溢れて
俺は自分からリーダーの唇に自分のそれを重ねた。
つづく