第28章
映画の仕事①
山田の事があって3ヵ月位が過ぎた頃
週刊誌にスクープされた二人の親密な関係についても
もう、世間もそんなに騒がなくなってきた。
芸能界って、とにかく代わる代わる
色んなことが話題に取り上げられるから
世間の注目なんて現在の大きな話題に気を取られて
芸能スキャンダルなんて
それこそどうでもいい過去として扱われる。
俺とニノもその事があったことで
ちょっとしたターニングポイントになったというか
お互いのこれからを真面目に考える良い機会になった。
まあ、俺達はそうは言っても
いつもと変らず相思相愛だけど。
そんな中、俺とニノに新しいが仕事の話が舞い込んだ。
それは移動中にマネージャーから聞かされたんだ。
マ 「大野さん、ニ宮さん、急なオファーが入ってるみたいですよ。」
和 「え?何なの?また変な話?」
智 「え?なに?」
マ 「いや、私はちょっとそれ聞いてビックリしたんですけど。」
和 「ええ?怖いよ・・・今度は何なの?」
マ 「実はですね・・・お二人に映画の話が来てるんです。」
智 「え?映画?ニノだけじゃないの?」
マ 「いえ・・・大野さんにもです。」
和 「べつに・・・驚くほどの話じゃないけど。」
智 「どんな映画?俺がなんか変な役とかか?」
マ 「お二人別々じゃなくて、今回は共演です。
ダブル主演ということで・・・」
和 「え?ホント?それって俺は嬉しいけど・・・
それの、何が驚くの?やっぱりその内容とか?」
マ 「それがですね・・・非常に申し上げにくいんですが。」
智 「何だよ?もったいぶらないでさっさと教えてよ!」
マ 「お二人の役柄が・・・その・・・」
和 「分かった!敵と味方とか?」
俺とニノは顔を見合わせて笑った。
そんなのお芝居だからどんな役でも
俺達は今更驚かないけどな。
マ 「この映画の原作というのは、昨年出版された大ヒット小説で、
BLジャンルの小説なんですよ。」
和 「ええ?何?それ・・・本当なの?」
智 「なんだ?びぃーえるって?」
和 「え?あなた知らないの?同性愛のことだよ。」
智 「えええ?」
それってそのまんまじゃん。
マ 「お二人は恋人役ということでの配役でして。」
和 「・・・嫌だ!断ってよね。
マ 「もう、無理ですよ。上が承諾してますから。」
智 「どうしてそんな急に?俺らそもそも共演とか、
ドラマでもなかったのに。」
和 「最悪だよ。俺達事務所にカミングアウトしてから
良いように使われ過ぎてるよね?」
智 「いやぁ、まさか・・・」
和 「だってそうじゃない。どの程度までやらされるのかな?」
マ 「まだ台本が来てませんので・・・そこまでは。」
和 「無理だよ。俺、リーダーとはお芝居では出来ない!」
智 「え?どういう意味だ?」
和 「じゃあ、リーダーは俺とお芝居でキスとか出来る?」
智 「芝居で?芝居ってどうやんだ?」
和 「ほらね・・・絶対無理だよ。」
智 「ええっ?意味がわかんないんだけど。」
和 「俺とキスするのに、絶対カメラが回ってたとしても
あなたの事だから、ガチになるでしょ?」
智 「なっちゃ駄目なの?リアリティが有って
監督に褒められそうだけど・・・」
和 「もう~あなたって人は何処まで馬鹿なの?」
智 「え?違うの?」
和 「それじゃ、駄目に決まってるよ。
俺達は外部に公表してないんだから
スタッフにまず怪しまれるだろ・・・。」
なんか・・・俺には良く分からない。
芝居ってぎこちないとリアリティなさすぎて
ダメ出し喰らうイメージだから
ニノとラブシーンだったら
俺は嬉しくて仕方ないけどな・・・。
だけど、それじゃ駄目ってこと?
智 「だけど、どうする?もう決まっちゃったんだろ?」
和 「困りましたね・・・」
マ 「また撮影の詳細分かったら直ぐにお伝えします。」
和 「はぁ・・・そんなに話題欲しいのかよ。」
智 「話題?」
和 「話題になるでしょうがよ。俺達がそういう映画撮るとなれば。」
智 「そっか・・・」
和 「それか、プロ意識を試されてるか、そのどっちかだよね?」
智 「マジか・・・」
なんか知んないが大変な事になっちまった?
この映画・・・
まだどんなあらすじなのかも分からないけど
男同士が愛し合うという設定だけは確かなようだ。
ニノは主演男優賞受賞者だからな。
演技自体、なんの問題ないにしても
肝心の俺は出来んのか?
芝居として・・・やれんのか?
ただでさえ芝居の仕事苦手なのに
ニノの足を引っ張る事にもなり兼ねない。
俺の中で一抹の不安が過ぎった。
つづく