第28章
映画の仕事⑫
そして、撮影はいよいよ大詰めを迎え
残すところは俺とニノのベッドシーンと
マルが絡んでくるシーンを残すのみだ。
丸 「やぁ・・・大ちゃん、ニノ」
智 「マル、久し振りだね。」
丸 「うん。嵐の番組に呼んで貰って以来ですからね。
ニノも元気してた?」
和 「元気ですよ(笑)」
丸 「映画、急にキャスティングに加えられて、
驚いてたんだけど、絡みが大ちゃんとって聞いて、
ホッとしたっていうかさ。」
智 「何で俺とならホッとするんだよ?」
丸 「いやぁ、さすがにニノとは無理だよ///」
智 「ふん。まだそんなこと言ってんの?」
和 「意味が分かんない(笑)」
智 「てか、お前が医者の役って胡散臭い・・・」
丸 「そういう言い方しないでよぉ・・・なぁ、ニノ?」
智 「気易く触んじゃねえ!」
丸 「ええ?これって映画の設定でしょう?
ガチで大ちゃんニノと付き合ってるみたいな
言い方するね(笑)」
和 「映画の中で恋人同士だから、撮影の間はなるべくリアルに
近付けるように普段よりも仲良くしてるんだよ。
ねっ、リーダー・・・」
智 「そ、そうだよ。」
丸 「なかなか徹底してんだなぁ。
まあ、そういうことならば協力するよ。
映画はヒットして欲しいですもん。」
和 「ほら、二人のシーンの撮影でしょ?もう始まるよ・・・」
丸 「ニノ、嫉妬しないでね(笑)」
智 「どっちにだよ?」
丸 「どっちでもいいじゃん。ほら、大ちゃん行くよ。」
んー、面倒くせぇ。
だけど仕事だから仕方ない。
俺が重い病気だという事を
マル扮する医者から診察室で宣告されるという
シーンの撮影なんだけど
マルは俺に好意を抱き始めるという設定なので
内心気持ち悪いな・・・なんて思っていたら
監督からダメ出しが入る。
そんな俺の様子を袖で観てるニノが
片手で口元を覆いながら
堪らず噴き出してるのが視界に入った。
クソッ。
こんな簡単なシーンでNG出すなんて・・・
俺としたことが。
<シーン診察室>
智 「先生・・・俺、もう助からないんでしょ?」
丸 「手術で助かる可能性は極めて低いです。」
智 「光には・・・内緒にしてくれませんか・・・」
丸 「光くん?・・・恋人でしたっけ?」
智 「ええ・・・。アイツには心配掛けたくないんで。」
丸 「・・・分かりました。」
智 「お願いします。」
丸 「でも、あなたの事は・・・俺が助けます。何が有っても・・・」
監督 「ハイ、カァーット。駄目駄目・・・大野君、
ここはもっと切ない表情で丸山君を見てくれないと。」
丸 「監督、俺の演技はバッチリだったでしょ?」
監督 「うん、丸山君はOKだけど・・・」
智 「ううっ・・・すみません」
丸 「大ちゃん、俺のこと医者だと思って演技してくれないと。」
智 「わ、分かってるよ。うっせえなぁ・・・」
監督 「ちょっと一度休憩入れようか?」
丸 「はーい。」
もう・・・
何でよりによってマルなんだよ?
和 「ふふっ・・・何やってるんだよ?あなたプロでしょ?」
智 「だって、どっからどうみてもアイツ医者じゃねえし・・・」
和 「相手がマルだって事はこの際頭の中から消し去らないと。」
智 「目を見て演技するのって、そうもいかねえじゃん。」
和 「頑張ってよ。あなたとマルのシーンが終わらないと
俺の出番がどんどん遅れて撮影推して
また遅くなっちゃうんだからね?」
智 「うう・・・分かってるよ」
和 「あっ・・・マルが呼んでるから、ちょっと行って来る。」
智 「ちょっ、ニノ?放っておきなよ。」
和 「大丈夫だってば。心配すること無いって。」
ニノが手招きしてるマルの方に走って行った。
俺は気になって、コーヒー飲みながら
チラチラと二人の様子を遠くから監視する。
何分もしないうちに
ニノが俺の元に走って戻って来た。
和 「マルがね・・・俺の携帯のアドレス教えろって煩いの(笑)」
智 「教えたの?」
和 「前教えてたのが古いアドレスのままだから、
携帯変えてから教えてなくて。
教えちゃ駄目?だよね・・・」
智 「そんなの駄目に決まってるっ!」
和 「ハイハイ(笑)それなら教えない・・・」
当たり前じゃねえか。
マルのヤツ・・・。
やっぱり殺虫剤持ってきておくべきだったな。
今回、マルとは今日のこの撮影シーンだけだから
とっとと終わらせてニノに近寄らせないようにしないと。
休憩が終わってセットに戻ると、俺はマルに向かって
智 「ニノに用事が有るなら俺に電話しろ。」
と、ぶっきらぼうに話し掛けた。
丸 「なんやの?大ちゃんはニノのプライベートまで
口出しすんの?」
智 「当然だ。」
マルは呆れかえった表情だった。
つづく