君への想いを,  映画の仕事,  第28章

映画の仕事⑬

第28章

映画の仕事⑬

 

 

そして今日は映画の中で最も重要なシーンとなる
俺が演じる「崇」とニノが演じる「光」の
濃厚なラブシーンの撮影だ。

これが終わると
後はラストシーンの撮影でクランクアップまで辿り着く。
前日からニノはこのシーンの話を俺にしようとはしなかった。
多分、それは俺があまりその事を意識せずに演じられるように
ニノなりの配慮だったかもしれない。

だけど実は俺、このシーンについては
随分台本に目を通した時から悩んでたんだ。
だって、結構このシーンって3分以上も流れるシーンなのに
台詞というのが殆ど無い。

この映画が同性愛を題材に作られてるし
そこの描写をとにかく売りにしてる。
お客さんもそれを期待して観に来るって計算だから
当然、俺に期待と重圧が圧し掛かる。

普段通りに・・・というのはニノが嫌がる。
でも、俺は演技としてもコメディでのラブストーリーしか
経験がないわけで。
真剣に・・・しかも相手がニノで
そのニノをニノと思わずに愛し合う演技なんて
俺に出来るわけない。

そんなこと思ってても仕事は仕事だから
もう腹を括るしかなくて・・・
いよいよ、そのシーンの撮影は始まった。

いきなり抱き合ってるシーンだから
ベッドの上でお互い上半身は裸
監督のスタートと同時に濃厚なキスシーンから始まる。

とりあえず、ニノのリードで演技のキスシーン。
現場もシーンと静寂に満ちた中、
10秒ぐらい唇を重ねたら
早速、監督のカットが入る。

監督 「カット、カット~、大野君、そこもうちょっと激しい目で
お願い出来る?」

智 「激しい目って・・・」

これ以上どうすんだよ?俺はその場で頭を捻る。

和 「監督、俺とリーダー、上下入れ替わりましょうか?」

監督 「あ・・・それいいね。その方が伝わるよね」

智 「え・・・意味が分かんない・・・」

和 「最初はリーダーが上だよ。それから俺が上・・・で、もう一度位
入れ替わる・・・」

智 「チューしながら?」

和 「そう、そう(笑)」

智 「なるほど・・・」

そしてTAKE2・・・
ニノにこのシーンはほぼ任せてたら大丈夫かな?
でもさ・・・
こんな皆から観られてキスとかしたこと無いから
俺はガチガチになり
10秒のキスシーンに何度も監督からダメ出しされた。

和 「監督、ちょっとだけ休憩くれませんか?」

監 「OK、それじゃ10分だけ休憩ね。」

堪らずニノがそう言ってベッドの縁に腰掛けて
俺の耳元で囁いた。

和 「何?どうしたの?これお芝居だよ。何時も通りやりなよ。」

智 「何時も通りじゃ駄目だってお前言ってたじゃん・・・」

和 「だけど、このままだと撮影終われないよ。」

智 「うん・・・ごめん。次はちゃんとする。」

だけど、この何時も通りで良いって
ニノのひと言が俺のスイッチを入れてしまい
その次のスタートの合図から
監督どころか、スタッフが
俺達のその絡み合うシーンに
完全に見惚れてカット入れるの忘れちゃってた。

和 「んっ・・・これ何時までやるの?(笑)」

監 「あっ・・・ゴメン、ゴメン。あんまり演技が凄すぎて
カット入れるの忘れてたわ。」

和 「それじゃ、OKでいいんですよね?」

監 「全然OKだよ・・・もう完璧。もうホントに
二人は付き合っちゃいなよ(笑)」

和 「フフフッ、だって?どうする?リーダー。」

智 「どうもこうもねえし・・・」

和 「え?リーダー?」

俺は普段通りになり過ぎて
もう一人の俺が元気になっちゃって
布団から出れなくなっていた・・・。
それを教えようと、ニノの手を掴んで
自分の股間に持ってくと

和 「ええっ?本当に?馬鹿じゃないの(笑)」

智 「どうしてくれんだ?」

和 「知りませんよ(笑)早く着替えて帰りますよ・・・」

ニノはそんな俺を見て笑いが止まらなくなってた。
さすがニノは役者だよ・・・。
俺とベッドインしてても
これが仕事だって思ったら
全然無反応なんだからな。

帰りの車の中で
ちょっとなんだか俺はそれが面白くなくて
仏頂面でずっと俯いていた。

和 「ご機嫌悪いですね?」

智 「お前は大した役者だよ・・・」

和 「はぁ?」

智 「俺には演技とか無理だし・・・」

和 「ああ~俺が反応しなかったのが気に入らないの?
馬鹿だね・・・俺だって相当我慢してたのよ。
そんな事も分からないの?」

智 「そうは見えなかった・・・」

和 「俺まで普段通りだったら、皆が真剣に俺達の事疑うだろ。
なんだよ。あなたのフォローと思って頑張ったのに・・・
そんな言い草あんまりだよ。」

智 「そ、そうか。ごめん・・・」

和 「駄目っ・・・もう許さない・・・」

智 「・・・謝ってるじゃん。」

和 「だったら・・・」

智 「だったら、何?」

俺の耳元に両手を添えて
運転してるマネージャーに聞こえないように

和 「だったら帰ったらちゃんと続きしてね。」

って囁いて、俺の顔を上目遣いに覗き込み
口角を吊り上げて悪戯に笑って見せた。

智 「心配すんな。おいらも同じこと考えてた(笑)」

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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