第28章
映画の仕事④
あれこれとニノと映画のラブシーンの特訓していた俺・・・。
結局はリアルで同棲してる俺達に
芝居で愛し合うなんて無理な話だった。
それでも世間の目から
どうしても二人の関係を守りたいと考えるニノは
ギリギリまで俺に芝居としての接し方を特訓し続け・・・
とうとうクランクインが明日ってところまでやって来た。
和 「リーダー?分かってると思うけど・・・」
智 「や・・・分かりたくない。」
和 「そんな我儘はもう通用しないですよ。」
智 「だって絶対においら無理だもん・・・」
和 「前にも言ったでしょ。
これは事務所が俺達の事試してるんだよ。
プロとして何処までやりきれるのか。ここでもしも
ファンの人やマスコミとかに怪しまれたら、
何もかも終わりですよ。
いい?普段の俺達を見せる必要なんてないんだからね。」
智 「それじゃ、2ヵ月半お預けにするっていうのは
この場で撤回してくれるの?」
和 「え?駄目ですよ。どうして?」
智 「だって2ヵ月半も我慢出来るかよ。
その方が仕事に影響してくるに決まってるじゃん」
和 「あなたがそうでも・・・」
智 「何?」
和 「俺が・・・」
智 「ん?お前が・・・?」
和 「いや・・・いいです。聞かなかった事にして下さい。」
智 「なんだよ?ちゃんと言えよ。」
和 「もういいよ。撤回する・・・。
その代わり約束だからね?
絶対に普段通りにするのはやめてよね。」
智 「ん、大丈夫だって」
ニノが何を言いかけてやめたのか・・・
俺には分かった。
多分、ニノは自分でも自信ないんだ。
俺と芝居でラブシーン演じるの。
仕方ないよ。いくら仕事だからって
俺達は愛し合ってるんだから。
そんな可愛いとこ見せるから
また抱き締めたくなった。
智 「光・・・しよっ・・・」
和 「急に?役名で呼ぶなよっ。」
智 「んふふふっ。」
和 「マジで分けわかんなくなるでしょ」
智 「それじゃ、カズ・・・しようっ(笑)」
和 「んっ・・・んはっ・・・まっ・・て・・・」
ニノの唇に吸い付くようにキスをしたら
待ったを掛けられた。
智 「え?どした?」
和 「今後はリアルで愛し合うときに役名で呼んだら、
その瞬間にお預け開始しますから。」
智 「んふっ。大丈夫だよ。」
ニノの両腕が俺の背中に回り
俺を誘うように唇を尖らせて見せた。
智 「お願いだから、そんな色っぽい顔撮影の時にすんなよ。
俺、マジで芝居出来なくなるからな。」
和 「そんなの知るかよ。」
そして翌朝俺達はマネージャーの迎えの車に乗り込み
いよいよ撮影のスタジオに向かった。
今日は職場での会話だけの撮影だったから
濃厚なラブシーンは撮らない。
撮影の合間に雑誌の取材など
これから、世間はこの映画の話で持ち切りになる。
とある雑誌記者が現場を訪ねてきた。
俺達に映画の意気込みを聞きたいと申し出た。
簡単なグラビア用の写真を撮って
奥に設置されてるテーブルと椅子に腰掛けて
そのインタビューに応じていた。
記者 「お久し振りですね。今日は宜しくお願いします。」
智 「ああ、いつも5人の時インタビューして貰ってたよね?」
記者 「そうですね。お二人だけって初めてですよね。」
智 「映画に二人で主演って初めてだからね。」
記者 「それじゃ、早速お話聞かせて頂きたいんですが・・・
今回のこの映画、BL小説が原作ということで、
お二人のラブシーンも有るとお聞きしていますが
同性愛についてお二人は実際のところ
どういうお考えをお持ちですか?」
智 「わかんねぇ。したことないし」
嘘ばっかりだ。でもこれも仕事だから仕方ない。
記者 「・・・二宮さんは・・・経験というか・・・」
和 「・・・」
智 「ねえ・・・どういう話?これ映画の話だよね?」
多分この記者、山ちゃんの事を探ろうとしてるに違いない。
俺は鋭くその記者を睨んだ。
記者 「勿論映画の話ですが・・・ニ宮さんには是非同性愛について
詳しくお考えを述べて頂けないかと。」
和 「・・・いいんじゃない?愛し合ってるなら、
男も女も関係ないでしょ?俺は全然拘らないけど。」
記者 「ちなみに、今現在お付き合いしたいと思う方って男性ですか?」
智 「おい!もうそういう個人的な質問はやめて貰っていいかな?」
和 「リーダー、いいんだ。俺、今は恋愛より仕事が大事だから。」
記者 「そ、そうですか・・・」
ニヤリと確信でも掴んだような記者の顔・・・
なんて腹立つ記者だ。
記者 「お二人は普段でも仲良しに見えますけど、ラブシーンも
あまり考えずに演じられるのでは?」
和 「そうだね。正直なんでこの人と?って思ったけど。
せめてこういう役どころはうちのメンバーだと
松本さんじゃないのかなって・・・」
インタビューは暫く続いたけど
俺はこの記者にイライラしてたから
ずっと黙って下向いてた。
つづく