映画の仕事⑦

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第28章

映画の仕事⑦

 

 

そして次の日、ニノの彼女役となった新人女優のMさんが
そのマネージャーと一緒に
俺達がメイクしてる部屋に挨拶に来た。
年齢は21歳。ショートヘアの小柄で細身な女の子だった。

M 「おはようございます。今日から宜しくお願いします。」

和 「あっ・・・おはよう。こちらこそ宜しくね。」

智 「あ、宜しく・・・」

M 「わぁ・・・私、子供の頃、嵐さんのファンだったんで
ご一緒にお仕事が出来るなんて、凄く光栄です。」

和 「へえ・・・そうなんだ。嵐の中で誰のファンなの?」

M 「え・・・皆さん素敵ですけど・・・
お母さんは大野さんで、私は松本さんです。」

智 「松潤か(笑)」

和 「くそぉ・・・Jは人気有るもんなぁ(笑)」

M 「あ、ゴメンなさい・・・」

智 「謝んなくていいじゃん。それこそニノのとかだったら
事務所がNG出すよ(笑)」

俺も当然NGだけどね・・・。
それを聞いて少しだけホッとするって
どんだけ単純なんだよ?
自分でも呆れる。

M 「それじゃ、また撮影で・・・」

その子が部屋を出て行った後
ニノは俺の顔を覗き込んでムッと口を尖らせた。

和 「お母さんがファンなんだってさ。良かったね」

智 「ええっ?そこにヤキモチかよ?(笑)」

和 「ていうか、態度が露骨過ぎるよ。バレたらどうすんの?」

智 「バレねえってば。」

和 「いい?現場では俺達はただのメンバーなんだからね。
忘れないでよっ」

智 「そんなの言われなくても分かってるってば。」

ス 「ニ宮さん、そろそろ撮影に入りますんで、
準備をお願いします。」

和 「はーい・・・それじゃ、俺行くから。
あなたは今日はもう確か上がりだよね?
そのまま帰るの?」

智 「ううん。これから雑誌の取材がひとつ入ってるらしい。」

和 「ふうん。俺が居ないところで変なこと言わないでよね」

智 「だーいじょうぶだって(笑)」

和 「それじゃ、行くね・・・」

部屋には誰も居ないから、顔を斜めに傾けて
俺の唇にチュッっと音を立てて
ほんの一瞬だけキスをして
俺の目を見てニッコリ微笑んで撮影現場に向かってった。

現場じゃただのメンバーじゃねえのかよ(笑)
俺はそんなニノが可笑しくて、一人で声出して笑った。
雑誌の取材までに少し時間が有ったんで
ちょっとだけ撮影の様子を覗きに行った。

実は、俺も台本は読んでるから
そのシーンがどういうシーンなのか分かってて
女優Mの部屋にニノ演じる光が遊びに行くという
スタジオセットでのシーンなんだけど
軽いラブシーンが有る事も分かってた。

セットの遠くから覗き見るように
コッソリと様子を伺う俺・・・。
監督が台本を片手に身振り手振りで
二人にシーンの説明をしていた。
リハーサル撮りが始まり
俺は固唾を飲んでそのシーンを見守った。

女優と楽しそうに話をしてる。
初対面の筈なのに
もう前から恋人同士な雰囲気が出来上がってる。
俺はなんだかそんなニノを遠くから見てて
急に変な気分になった。

女の子と並んでるニノは
何の違和感もない・・・。
本当に恋人同士みたいに見える。
俺・・・なんか、もしかしたら間違ってるのかな?
彼は本当は俺なんかじゃなくて、
女の子と幸せになるのが自然なのかな?
どうしてだろう?
何で急にそんな事を考えるかな?
俺は眉間に思い切りシワを寄せて
腕組みをして考え始めた。
すると・・・

和 「監督ちょっと、すみません・・・」

そう言ってツカツカと俺の方に小走りにニノが走って来た。
そして、俺の目の前に来ると小声で俺に話し掛けてきた。

和 「ちょっと!観ないんじゃなかったの?」

智 「えっ、あ、その・・・」

和 「いいから、さっさとどっか行けよ。」

智 「どうして?」

和 「そんな顔で観られてたら、芝居が出来ないよ・・・」

智 「あっ・・・ゴメン。悪かったよ。」

俺はそう言って慌ててその場を去ろうとした。

和 「あっ、ちょっと!」

智 「え?まだ何かあるの?」

和 「変なこと考えないでよ・・・」

俺の表情で考えてる事が一発でバレた?
参ったな・・・
だって、それだけニノの演技が上手いんだよ。
カメリハ観てるだけで
その演技力の凄さが分かるんだもん。

まぁ、だからって
いちいち、リアルをどうこうと考えられてたんじゃ
確かに堪んないよなぁ・・・。

ニノはちょっとそれでも心配そうに
俺がスタジオから出て行くのを目で追って確認してた。
俺はニノの方は見ずに軽く右手を上げて
メイクルームに戻り、雑誌の取材を受けて
なんとなく気掛かりだったけど
ニノを残して一人先にマネージャーの車に乗り込んだ。

マ 「お疲れ様です。どうです?撮影は順調ですか?」

智 「え?ああ・・・」

マ 「どうかしましたか?」

智 「ニノはスゲーよな。」

マ 「そりゃあ、お芝居慣れてますから。」

智 「ニノは本当に俺なんかでイイのかなぁ?」

マ 「ええ?どうしちゃったんですか?大野さん?」

智 「いや・・・」

俺は大きく溜息をついた。

つづく

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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