第29章
100年先も愛を誓うよ③
side nino
折角の半日オフ日だっていうのに
うちのおふくろが俺に話が有るからって
わざわざ家にやってくる事になって
リーダーも心配なんだろう、
午後から一度電話くれて
様子伺ったりしてる・・・。
たまには一緒に夕飯でも連れてくって
さっきおふくろに電話したら
それなら夕方4時過ぎに来るって
言うから、俺は家の片付けとか洗濯とかして
とりあえず、オフじゃないと出来ないような
家の掃除をあちこちやってた。
そして、夕方になって
時間通りにおふくろがやって来た。
和 「いらっしゃい・・・」
母 「久し振り。元気そうね」
和 「うん・・・どうぞ、入ってよ。」
母 「へえ・・・なかなか素敵な家じゃない。
思ったよりも綺麗に片付いてるし。」
和 「だろう?2人で住むの勿体無いくらいなんだ。」
母 「それで?大野さんとは仲良くやってるの?」
和 「お陰様で・・・」
母 「あのね、かずくん・・・ちょっと母さん
あんたに話があるのよ・・・」
和 「うん・・・待って、お茶淹れるから。」
俺はお茶を淹れてテーブルに運んだ。
そしておふくろと向かい合わせに座り
早速その話を聞いた・・・
和 「うん・・・それで?話ってのは?」
母 「あんたさ、最近ほら、週刊誌とかにも書かれてたでしょ?」
和 「え?・・・ああ~・・・」
なんだ、山田とかの事か・・・
母 「まあ、母さんは芸能界の事は分かんないから
色々口出したりする気はないんだけどね。
映画とかでも、ほら・・・大野さんと今度・・・
ああいうのやってたりしてたでしょ。」
和 「同性愛でしょ?」
母 「そうそう・・・」
和 「で?何が言いたいの?」
母 「もうね、あんた達も若くないんだし、
将来の事を真剣に考えた方がいいんじゃないかと
思うのよね・・・」
和 「真剣に考えて今この生活してるんだけど。」
母 「大野さんだって、一応はご長男でしょ?
親御さんだって、きっとお孫さんの顔見たいんじゃない?」
和 「あのね・・・母さん?」
母 「このまま同棲生活なんて続けていたら
きっともう死ぬまであなた達、結婚とか出来ないのよ?
それでも良いの?」
和 「ごめん。俺リーダーとこの先別れるつもりないから。」
母 「かずくん、あたしもこんな事言いたくないのよ。
でもね、あんたは女性じゃないから子供も産めないでしょ。
夫婦がね長年連れ添って居れるのは子供の存在が有るからよ。
もしもこの先、あんた達が大喧嘩してしまっても
繋いでくれるものがなければ、簡単に捨てられることだって
考えられるし、そうなった時にいざ家庭が持ちたくても
簡単に相手は見付かるものじゃないでしょ。
あたしはそれが心配なのよ。色々手遅れにならないうちに
考え直した方がいいんじゃないかって思うの。」
和 「母さん、子供が出来ない夫婦だって長年連れ添ってる
夫婦も居るよ。それにこれ見てよ・・・」
俺はリーダーに貰った結婚指輪を
おふくろの前に差し出した。
和 「俺達ね、教会で結婚式を挙げたの。
ゴメンね。忙しい中で急に決まった日取りだったんで
身内にも連絡出来なくてさ・・・
俺達は心配しなくてもその辺のカップルより
絆が深いから、簡単に別れたりしないよ。
俺に至っては、死ぬまであの人と離れる気ないから。」
母 「あんたそんなに大野さんのこと・・・」
和 「後継ぎ作れなくて、孫の顔も見せてあげれなくて
本当に悪いと思ってるよ。でも、俺の人生だし、
絶対にこれだけは譲れないっていうか・・・
親不孝なの分かってるけど、許して。」
母 「あの週刊誌のことは?」
和 「ああ、あんなの信じなくていいよ。全部作られてるから。」
おふくろは大きく溜息をついて
立ち上がった・・・
母 「話はそれだけだから、母さんこれで帰るわね。」
和 「ええ?リーダーもう直ぐ戻るからさ、
一緒に飯行こうって言ってたのに・・・」
母 「疲れて帰って来るんでしょ?あたしが居たんじゃ
気を遣わせて悪いから、今日は戻るわ・・・」
和 「待ってよ・・・」
母 「かずくんの覚悟がちゃんと聞けて安心したから
本当にもういいの。
お正月にでも2人で一度顔出してよ。
父さんも安心するだろうし。」
和 「あ・・・うん、分かった。必ず戻るよ・・・」
母 「大野さんとこれ一緒に食べなさい。」
おふくろの手料理だろうか。
重箱に詰められた包みを
テーブルの上に置いて帰ってしまった。
元々最初から食べに行く気は
無かったみたいだ。
俺はおふくろの背中を見送り
ハァっと大きく溜息をついた。
それから1時間程経って
リーダーは何も知らずに仕事から大急ぎで戻って来た。
つづく