第29章
100年先も愛を誓うよ④
俺が家に戻って来たのは
夕方6時を回った頃だった。
智 「ただいま・・・お母さんは?」
和 「お帰りなさい。うん、もう帰った。」
智 「ええっ?何で?」
和 「あなたに気を遣ってくれたみたい。」
智 「それで?話って何だったの?」
和 「ん・・・まあ先に着替えてきたら。」
智 「あっ、うん。そうするわ・・・」
気のせいかな?
ニノがちょっとだけ何時もより
元気が無いように見えた。
俺の事で何か言われたのは
なんとなく聞かなくても分かった。
俺はスエットに着替えてリビングに降りた。
和 「おふくろがね、作ってきてくれたの。
今夜は一緒にこれ食べろって。」
テーブルに広げられた
旨そうなご馳走は料理の上手い
ニノの母ちゃんの手作りだって直ぐに分かる。
ニノが冷蔵庫からビールを持って来て
ハイッて俺に手渡した。
智 「ありがとう・・・」
和 「乾杯しよっか。」
智 「ん?何に・・・だ?」
和 「あなたと俺の未来に・・・」
智 「なんだ?それ(笑)」
和 「いいの、ハイ、カンパーイ」
智 「乾杯~」
和 「っていうか・・・俺達もう直ぐ1年だよね。」
智 「あ、うん・・・。そうだな、早いよな。」
和 「うん、あっという間だったよね。」
智 「どう?おいらと一緒に暮らしてみた感想は?」
和 「べつに(笑)」
智 「べつにかよ?ひでえなぁ・・・」
和 「おふくろね・・・」
智 「うん・・・」
和 「俺達のこと心配してた。俺が女じゃないから
子供産めないでしょ?
だから2人を繋ぎ止めておくものが何も無いから、
仮にこの先別れる事になって、嫁さん探そうにも
簡単には無理だから今のうちに考えろって・・・」
智 「やっぱそういう話か・・・」
和 「でもね、俺ハッキリ言ってやったの。
俺は何があってもあなたとは離れないって。」
智 「ニノ・・・」
和 「俺ね、リーダー以外のヤツは本当に考えられないし
リーダーとこの先もずっと一緒に居る事が
俺の幸せなんだよね。
それは親を悲しませる事なのかな?
違うよね?そうじゃないよね?」
智 「子供の幸せを一番に考えてくれてるよ。
ニノの母ちゃんも。分かってくれたんでしょ?」
和 「うん・・・」
ニノが涙ぐんでるの見て
本当は自分が親不孝なんだって
自分の事を責めてるのが凄く分かった。
俺はニノの隣に座りなおして
ニノの肩を優しく抱いた。
ニノは俺の肩に凭れてズズッて鼻をすすった。
智 「おいらがちゃんと挨拶に行かなかったから
こんな想いさせちゃったんだな・・・
ホントにごめんな。」
和 「ち、違うよ・・・リーダーは何も悪くないよ。」
智 「ううん。次の休みに一緒にニノの母ちゃんに
キチンと逢いに行くよ。」
和 「リーダー・・・」
智 「心配しないで。おいら、お前のこと世界一
幸せにしてやるから・・・」
頬に伝った涙を指先で拭ってあげて
そのまま見つめ合い、ゆっくりお互いの唇を重ねた。
1年経って育んだ愛情は
想像以上に深い絆を結んだけれど
事務所の事や家族達の理解
そして世間からの理解・・・
と、まだまだ俺達の周りには
片付けないといけない問題は
実は山積みで・・・
今すぐに纏めて解決出来る話ではないけれど
一つずつ焦らずに出来る事から徐々にではあれ
やってかなきゃなんない事で
それよりも俺達の心が何時までもぶれないって事が
本当は何より大切なんだって思ったりした。
智 「せっかくニノの母ちゃんが作ってくれたんだから
有難く頂こうよ。」
和 「うん・・・」
智 「ああ~うめえなぁ。やっぱニノの母ちゃんは
料理天才的に上手いな。」
和 「本人が聞いたら喜びますよ。」
智 「ニノ・・・」
和 「ん?なに?」
智 「1周年だから、何か欲しいもの有るか?」
和 「ええ?急に言われても・・・」
智 「何でもイイから遠慮しないで言えよ。」
和 「そう?それじゃあ・・・俺、あなたの子供が欲しいな。」
智 「んふふ・・・そんなこと言ったらまた
想像妊娠しても知んないからな・・・」
和 「何でもイイって言ったのあなたでしょ?」
智 「そりゃそうだけど・・・よし・・・
それじゃ、これ食べたら今夜は仕込んでみるか?」
和 「はあ?冗談だよ(笑)直ぐ馬鹿なこと言うんだから。」
智 「いいや・・・俺はマジで言ってるの。
なんかニノなら本当に俺の子供身篭りそうな
気がするもん・・・」
和 「分かったから(笑)それよりあなたの誕生日が
先だよね・・・リーダーこそ何が欲しい?」
智 「おいらも子供がいい。」
和 「なんだよ?それってやりたいだけじゃん(笑)」
冗談で言ってるわけじゃなくて
本当に2人に子供出来れば
お互いの親も喜ぶだろうなって
頭を過ぎったからそんな事を口にしてしまった。
勿論無理なことは百も承知だけど・・・
つづく