第29章
100年先も愛を誓うよ⑤
俺達が一緒に休めるって事は厳しくて
それから数日後にようやく半日だけ
午後から一緒に帰れる日があったので、
俺はマネージャーに頼んで
その日の仕事帰りにそのままニノと
ニノの実家に行く事にした。
マ 「着きましたよ。お二人ともお疲れ様でした。」
智 「あっ、ちょっと待ってて!おいら着替えるから。」
和 「着替えるって?いいよ。
どうせそんな改まる人達じゃないから」
智 「ダメダメ。こういうことはキチンとしとかないと。」
俺は事前に用意しておいた
スーツにネクタイ姿に着替えて手土産も準備万端。
いつになく緊張して襟を正すと
ニノの実家へと向かった。
和 「なんかこっちまで緊張するじゃないの(笑)」
智 「だって、こんなことは一生に1度有るか無いかなんだもん。
ビシッと決めないとダメだろ。」
和 「もう、リーダーはいちいち大袈裟なんですよ。
それじゃ、行くよ・・・」
ニノがそう言って玄関を勢いよく開けた。
和 「母さ~ん、戻ったよぉ・・・」
って普通に呼びかけたら
奥からニノの母ちゃんがバタバタと小走りで出てきた。
母 「あらあら、いらっしゃい。どうぞ・・・
散らかってるけど。」
智 「ご無沙汰してます。それじゃ、お邪魔しまーす。」
和 「姉ちゃんは?」
母 「出掛けてるの・・・ほら、突っ立ってないで
そこ座ってもらいなさい。」
智 「あ、もう、ホントお構いなく。」
母 「ふふっ・・・どうしたの?
大野くん、なんか今日決まってるけど?
ネクタイとか珍しいじゃないの・・・」
智 「え?あ、ハイ・・・」
和 「ちょっと、ガチガチじゃないの(笑)」
母 「結構似合ってるわよ。ほら、なんだっけ?
社長役のドラマ?あれ凄く面白かったよね。
スーツも似合ってたわよ。」
和 「へえ~観てたんだ?」
母 「あんた達の出てるの、結構これでもチェックしてるのよ。」
和 「チェ、チェックって、怖いよ・・・」
智 「あ、あの・・・おばさん・・・」
母 「今日はゆっくり出来るんでしょ?
ご飯うちで食べてくよね?」
智 「え・・・ああ・・・」
なかなか何処のタイミングで切り出そうか
難しいところだ。
ドラマの台詞みたいにはいかないもんだな。
和 「リーダー、母さんに話し有るんだよね?
ちゃんと聞いてあげてよ・・・」
母 「え?あら、ごめんなさい(笑)何かしら?」
智 「いえ・・・あの、本当ならもっとこういう事は
早く来なきゃダメなの分かってたんですけど・・・
こんなに遅くなってしまって本当に
すみませんでした・・・。」
そこまで言い始めたら
ニノも空気読んだみたいで
俺の隣に姿勢を正して並んで座ってくれて
智 「おいら、ニノ・・・あ、和也くんの事、
一生大事にするって約束します!
なので・・・その・・・和也くんを
僕に下さいっ・・・」
俺がそう言っておばさんに頭を下げたら
ニノも同じように頭を下げた。
おばさんはビックリしたのか
ちょっと沈黙が続いて、その後少し涙ぐんで
俺達に優しく微笑んでくれた。
母 「大野さん、こんな息子だけどかずは本当に心の優しい子です。
どうか、かずのこと私からも宜しくお願いしますね。」
和 「母さん・・・」
智 「おばさん・・・約束します。おいら何が有っても
ニノの事幸せにします。」
母 「なんか、息子が増えたみたいで嬉しいわ。
今度大野さんのところのご両親にもご挨拶を
しないとね・・・」
和 「ねえ、お正月に家族皆で温泉にでも行こうよ。」
智 「うん。それ、いいな・・・」
和 「ねっ・・・早速旅館探しとくからそうしよう。」
母 「温泉かぁ・・・いいわね。それじゃ、夕飯の支度するから
あんた達は一緒にお風呂でも入りなさいな・・・」
和 「風呂沸いてるの?」
母 「仕事終わりに来るって聞いてたからね・・・
沸かしておいたのよ。気が利くでしょ?
ほら、いいから一緒に入って来なさいな。」
智 「えっ///」
和 「な、何言ってるの?リーダー先に入りなよ。」
智 「いや、お前先に入れよ・・・」
和 「ええ、いいよ・・・」
母 「ええ?今更恥ずかしがらなくていいじゃないの。
あなた達夫婦なんでしょ?
さっさと2人で入って来なさい(笑)」
マジか・・・
さすが、ニノの母ちゃんだけあって?
あっけらかんとそういう事を平気で言っちゃうんだ。
ニノはこのおばさんから
本当に育てられたんだろうか?
不思議で仕方ない。
だけど・・・
気持ちが優しいところは親譲りというか、
一緒だなって、なんだかここに居ると
ほっこりとした気分になって癒される気がした。
和 「もう、分かったよ。リーダー、風呂入ろう。」
俺は開き直ったニノに
引っ張られて風呂場に連れて行かれた。
つづく