第5章
おいらの憂鬱①
その翌日、俺達は雑誌撮影の為に
久々のロケでとある遊園地に来ていた。
平日だし、午前中の撮影だから
人気も疎らで、俺達の貸切りみたいになってた。
和 『遊園地なんて仕事でしか来た事ないかもね』
智 『うん、久し振りな気がする』
和 『有難いですね』
智 『んふふっ。有難いよな』
なんで有難いかというと
俺達二人が関係を持つようになってから
これが初めての二人っきりのロケだし
しかもそれが遊園地だなんて
プライベートでデート出来ない俺達にとって
表向きは仕事でも
二人の頭の中ではこれ、完全にデートだもの。
普段は完全にインドアなイメージのニノだけど
本当は普通に表で堂々と出来ないから
ゲーマーになる選択肢しかなかっただけで
元々野球少年だったくらいニノは運動神経も良いし、
何も好き好んでインドア派を売ってるわけでもない。
根っからのゲームヲタとは違うんだ。
だから、今日の仕事は本当に嬉しいみたいで
何時になくテンションも高くなっていた。
今日の雑誌のテーマは
『イチャイチャ遊園地デート』
俺達はワゴン車の中で準備されてた衣装に着替えて
メークさんに髪型とか整えてもらって
見た目は完全に着せ替え人形。
衣装も今回はなかなかのペアルック感。
着せられてる感じは満載だけど、実際に恋人同士になると
こういうのはちょっぴり仕事とはいえ嬉しかったりした。
ここからは自由に遊園地の中を二人で
遊んで良いってスタッフに言われて
俺達のテンションは更に上がる。
和 『好きなようにデートしていいんだって(笑)』
智 『うん。しかもテーマがいいよな(笑)』
和 『どうする?やっぱここはジェットコースターが盛り上がるかな?』
智 『うん、その後オバケ屋敷か?・・・で最後は
観覧車の中でチューするの(笑)』
和 『ははははっ。スタッフがひっくり返るよ。
そんなサービスショットいらないって』
とりあえず俺達はフリーに遊園地を回るように言われて
当たり前のように手を恋人繋ぎにしてみたり
俺の肩をニノが抱いたりして
好き勝手にイチャイチャしながら園内を歩き回った。
仕事だからこれを堂々と出来るのも愉快で仕方ない。
俺は絶叫マシーンとか平気なタイプだから
ジェットコースターもめちゃくちゃ楽しくて、
本当にプライベートと何も変らない雰囲気で
その仕事デートを満喫してた。
途中クレープ屋さんでクレープ頼んで
お互いのをお互いで食べさせ合いっこしてみたり
何処にもそれに対してはカメラマンからの指示もなく
自然に恋人同士の雰囲気が出ちゃうから
スタッフからは「さすがですね~」なんて
驚きの声が零れたりした。
オバケ屋敷では
俺にピッタリくっ付いて離れないニノが可愛くて
俺はずっとニヤニヤが止まらないし・・・
楽しい時間ってあっという間に過ぎていく。
俺達は冗談で言ってたんだけど
最後にスタッフから観覧車に乗ってくれと指示があって
二人でさっき言ってたことを思い出して
顔を見合わせて、思いっきり噴出して笑った。
スタッフは一緒に乗り込まずに
外から二人を撮影するからと、自撮り用のカメラを持たされたりして
俺達は二人っきりで観覧車に乗り込んだ。
和 『まさか本当に乗る事になるとはね(笑)』
智 『んふふふ。おいらが言ったとおり真上に着いたら
チューしようぜ』
和 『ダメだよ(笑)望遠レンズで狙われてるんだから』
智 『いいじゃん。今日のテーマはイチャイチャなんだから(笑)』
和 『まあ、俺達のファンは喜ぶだろうけど、それ以外の人には
ドン引きでしょうね。』
智 『それにしても、仕事でこういう企画ってマジ有難いな。』
和 『そうだね。滅多に無かったよね』
智 『テレビの企画で海外ロケにも二人で行きてえよなぁ。』
和 『お互いのスケジュール有るからそれは無理だよね。』
智 『あ・・・そろそろ頂上じゃない?』
和 『そうだね。どうする?』
智 『どっちから撮ってるんだ?』
和 『ほら、あそこだよ。』
カメラマンを指差して位置を教えた。
智 『完全に映んないなら事務所からNG喰らわないだろ』
和 『ええ?』
俺はニノの肩を抱いてカメラマンの角度からは
完全に死角になるように体勢を考えて
真上に来た瞬間にブチュッとキスをした。
和 『///ちょっ・・・本当にするヤツがあるかよ!』
俺から慌てて離れるニノ。
顔が尋常じゃないくらい真っ赤になってる。
智 『いいじゃん。デートなんだから』
和 『ダメだよ、仕事だろっ』
智 『カメラには絶対写ってないから大丈夫だってば。』
和 『でも・・・流石にそれっぽく写ってるって。
なんて説明するんだよっ』
智 『チューするフリをしたって言えばいいよ(笑)』
観覧車が1周して、俺達は観覧車を降りて外のスタッフの元に行く。
何か言われるって思って構えてたけど
俺達のキスの事には誰も全く触れて来ない。
やっぱり角度からしてカメラが捕らえきれなかったんだよ。
心配して損した。
およそ2時間の仕事を利用した俺達の
ガチデートは終了した。
和 『大野さん、これから又仕事?』
智 『うん・・・お前もだよな?』
俺達は別々の迎えの車に乗り込んだ。
つづく