第5章
おいらの憂鬱③
番組の収録中も俺はニノの事ばかり目で追ってしまう。
ハァ・・・あまりにも切な過ぎるよ。
ニノは俺と一緒に居れなくても平気なのかな?
こんな想いしてるのは俺だけなのかな?
なるべくニノの近くに居たくて
俺は距離をじわじわと縮めようとするけど
今日はニノが俺を遠ざけてるように感じてならない。
さっき楽屋であんなことしたから怒ってるのかな?
だけど少しは俺の気持ち分かってくれてもいいのに。
ス 「それでは10分間休憩入りま~す」
ニノが俺の方につかつかと近付いてくる。
和 「ちょっと、仕事中はいい加減その仏頂面はやめろよ。」
智 「ニノは平気なのか?」
和 「もう、平気なわけないだろっ。でも仕事中は考えても仕方ないよ。
いつまでもそんな顔してたら、メンバーにも怪しまれるでしょ。」
智 「わかってるよ・・・」
和 「収録が終わったら、一緒にご飯行きましょう。」
智 「ホントに?」
和 「うん。約束するから・・・」
それを聞いてたちまちやる気が出る俺・・・
なんて単純なんだろうって自分でも呆れてしまう。
だけど、今は仕事なんかよりニノの事で頭の中は一杯なんだ。
まさかここまで惚れちゃうなんて
自分でもビックリしてる。
もうさ、俺からニノ取り上げたら
何にも残んないんじゃねえか?ってなくらい今の俺はニノの事が愛おしい。
その後の収録もなんとかスムーズに終わり
ようやく帰りの時間が近付いた。
俺は足早に楽屋に戻り衣装から私服に着替えて
マネージャーの車に乗り込んだ。
智 「ごめん、今からニノも一緒に飯食べに行くんだ。
送ってもらって良いかな?」
マ 「大野さんは明日お休みでしたね。
今日はニ宮さんのお宅へお送りするとイイですか?」
智 「あっ・・・そうか。そうだよね。
おいらがニノんちに行けばいいんだ。」
そんな簡単なことも思い浮かばないなんて
俺って馬鹿だなぁ・・・。
和 「お待たせしました。」
ニノが遅れて車に乗り込んだ。
智 「それじゃ、行こうか。」
和 「何処に行きます?」
智 「お前んちに行く。」
和 「ええっ?外で食べるんじゃなかったの?」
智 「おいら明日は休みなんだ。」
和 「いいなぁ。自分ばっかり・・・」
智 「とにかくお前んち行こう。」
和 「本当に言ってるの?」
智 「なんだよ。行ったらマズイ事でも有るのかよ?」
和 「そうじゃないけど、俺んち何も食べ物無いよ。」
智 「いいよ。おいらお前んちでニノの事食べるから。」
それを聞いてたマネージャーが大爆笑。
和 「馬鹿じゃないの?」
マ 「あ・・・すみません。つい大野さんが可笑しくて(笑)」
和 「違うよ、今のはリーダーに言ったんだよ。」
智 「悪いけど何処かスーパーにでも寄って貰えるかな?」
マ 「あ、はい・・・分かりました。任せて下さい。」
ということで、急遽俺はニノのマンションへ向かう事にした。
ニノもなんだかんだ言って嬉しそうにしてる。
俺はニノの手をギュッと握ってじっとニノの目を見つめた。
ああ・・・早く抱き締めたいよ。
早くキスしたい・・・。
俺は握った手に力を込める。
マ 「スーパー、こちらでいいですか?なんなら私
買い物してきましょうか?」
智 「え?いいの?」
マ 「お二人はここで待ってて下さい。直ぐに戻りますから。」
俺は弁当やビールやつまみを適当に頼んだ。
マ 「何かあったら電話下さい。」
そう言ってスーパーの中に足早に消えていった。
和 「マネージャー、随分気が利きますね。」
智 「ニノ・・・早くっ!」
和 「えっ?何?」
智 「今のうちに早くチューして!」
和 「ええ?我慢しろよ。」
智 「ちょっとだけ。お願い・・・」
和 「マネージャー直ぐ戻るって・・・」
智 「だから早くってば。」
和 「何よもう・・・仕方ないなァ・・・」
車内はカーテン張ってあるから
外からは中の様子は見えないから
ニノは俺の肩に両手を置いて
唇を窄めながら近付けた。
だけど、焦らしてなかなかしようとしないから
結局俺の方から唇を押し当てた。
ニノだって我慢してたに違いない。
その証拠に直ぐに俺の舌を迎え入れた。
和 『んっ・・んはっ・・・んんっ』
10日も愛し合ってない俺達は
我慢の限界通り越しちゃってたから
シートに押し倒して、そのキスはエスカレートしていく。
智 「んっ・・・ニノ・・・も・・・好きッ・・・」
和 「ちょっと・・・そろそろ戻って来るって!」
ニノが起き上がろうと俺の身体を無理矢理引き離す。
そのタイミングでマネージャーが戻って来た。
マ 「すみません、レジがもたついちゃって。」
ニノが気まずそうに口の端から零れかけた
唾液を片手でゆっくりと拭った。
そんなニノを見て、マネージャーが何かを察したみたいで
コホンッてひとつ咳払いをして、
マ 「そ、それじゃニ宮さんちに向かいますねっ。」
そう言って車を発車させた。
つづく