第9章
仕事と家庭の両立⑧
和 『ただいまぁ・・・』
智 『お帰り。早かったな。』
和 『あなた一人じゃ大変かなって思ってさ。』
智 『もう、クタクタだよ・・・』
和 『だけど随分片付いてるじゃない?』
智 『まだ物置の部屋に荷解きしてないダンボール山ほどあるよ。』
和 『それは少しずつやるといいんじゃない?』
智 『うん、そのつもり。』
和 『とりあえず、頻繁に使うものだけ荷解きしておくといいよ。』
智 『お前はいつ荷物運ぶ?』
和 『俺のはちょっとずつ運ぶよ。人に触られたくないしね。』
智 『エッチなDVDとかいっぱいあんだろ(笑)』
和 『お前と一緒にすんなよっ。』
智 『フフッ・・・晩飯は?』
和 『食べてきた。あなたは?』
智 『出前・・・』
和 『引越しって蕎麦食べるんじゃなかったっけ?』
智 『いや、宅配の寿司頼んだ。』
和 『贅沢ですね(笑)ビール冷えてる?』
智 『うん。あ・・・俺も取って・・・』
和 『家電もテーブルや椅子もリーダーの所から持ってきた
ヤツだから新居な感じがしないね。』
冷蔵庫からビールを取り出しながら
ニノが俺にそう言った。
智 『新しいの買う?』
和 『いいよ。まだ壊れたわけじゃないのに。』
相変わらず財布の紐は硬いな。上等な嫁だ。
和 『はい、ビール。かんぱーい』
智 『あっ、ニノ・・・』
和 『何?』
智 『今度のお前が休みの時、うちの実家行くぞ。』
和 『えっ?なんで?』
智 『身内には知らせないと駄目だろ?お前んちも今度挨拶行くぞ。』
和 『うちはいいよ。』
智 『いいわけないだろっ。ちゃんと連絡しとけよ。』
和 『もお・・・面倒なの苦手なんだけど。』
智 『こういうの面倒がってどうすんだよ。』
和 『はいはい。分かりました。しときます。』
智 『おいら、ニノんちの母ちゃんに叱られるかな?』
和 『何でさ?』
智 『大事な息子を、俺なんかに・・・』
和 『お互い様じゃん(笑)』
智 『やっぱり、後継ぎ欲しいだろうしな。』
和 『元々俺の代で二宮家は終わらせるつもりだったし(笑)』
智 『それはニノが言ってるだけだろう?』
和 『うん(笑)だけど、親もあてにはしてないよ。』
智 『やっぱり子供作ろうかなぁ。』
和 『だから、やめろよ。無理だって(笑)』
智 『わかんねえじゃん。』
和 『分かんないの?あなたもホントに馬鹿ですね。』
俺は飲んでた缶ビールをテーブルに置いて
横に座ってるニノを思いっきり抱き締めた。
智 『おいら、本気でニノとの子供欲しいや・・・』
和 『ん・・・天と地がひっくり返っても無理だね。』
智 『無理かなぁ・・・』
和 『無理です・・・』
フフって片方の口角を上げて笑うニノが
ちょっぴり俺には悲しそうな顔に見えた。
智 『おいら無理でもいいや。ニノとずっと一緒に居れたら。
それだけで十分だよ。』
ニノの丸っこい柔らかい手を握って
そっと唇を重ねた。
和 『ん・・・ちょっとここ広すぎて夜一人になると寂しいかもね。』
智 『うん、でもお前関係ないじゃん。どうせゲームしかしないだろ?』
和 『まあね(笑)』
智 『さぁ、引越し初の風呂にでも入るか?』
和 『もう入れるの?』
智 『バッチリだよ。寝室も見てきなよ。なかなかいい感じだから。』
和 『へえ・・・本当?ちょっと見てくるね。』
ニノが立ち上がって一人で二階へ駆け上がって行った。
和 『うわぁ・・・すげえ。』
下のリビングの俺に聞こえるくらい大きな声で
ニノが叫んでる。
ダブルベッドに新品の布団とカーテン。
俺の拘りで選んだから
ちょっとしたリゾートホテル風に仕上がってる。
なかなか降りて来ないから
俺も気になって二階へ上がった。
部屋を覗いたらニノがダブルベッドに大の字で寝転んでた。
智 『んふふっ。どうよ?』
和 『リーダーって私服とかダサイけど、さすがに絵とか描くから
基本センスはいいんだな(笑)』
智 『私服がダサイってのは余計だよ。お前も一緒じゃん(笑)』
俺もニノの隣に寝転んでそう言った。
和 『今日は疲れてるんだよね?だったらここででするの初めてだけど
今夜はお預けだね(笑)』
高い声で笑った後
ゆっくり俺に顔を近付けて
じっと俺の目を見つめた。
なんかその顔がやたら色っぽく
俺の事煽ってるように見えて
ちょっとドキッとしてしまった。
だけど悪戯っ子みたいに
その後すぐ俺の鼻をむぎゅって摘んで
ケラケラ笑うニノの腰に両腕を回して
智 『おいら、疲れててもお前の事見てたら元気になるよ。』
俺はニノの左手を捕まえて
元気になったもう一人の自分を教えると
『ほらねっ』って言って
ニノの薄い上唇に自分の唇を重ねた。
つづく