Destiny もう一つの未来 47

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もう一つの未来 47

 

 

 
「あのね、それがさ・・・そのCRASHの事なんですけど・・・」

「ん?」

「実は、もう解散しようかと話は進んでてね・・・」

「な、何で?どうして?」

「いや・・・元々は俺が無理にあなたをバンドに巻き込んだの。
 あなた、最初は全然バンドでやってく気なんかなかったんだ。
 新しいボーカルが見つかるまでって条件でやってたことなんだけど
 ズルズルと俺達がここまで付き合わせてしまったの。」

「そ、そうなの?」

「悪かったと思ってる。
 あんな病気になったのだって、きっとそれがストレスになったからなんだ。
 全部この俺が悪いの・・・」

「和は人が良過ぎるよ。」

「え?」

「それは、べつに俺に話さなければ一生分からない事でしょ?
 でも、俺はそういう和の素直なところも含めて
 全部が大好きだったんだろうな。多分俺は和のせいだなんて
 これっぽっちも思って無かったと思うよ。」

「だって俺が誘ったりしなければ・・・
 あなたは病気になんかならずに済んだかも知れないのに・・・」

「ちょっとだけ和は勘違いしてるよ。」

「えっ?」

「確かに俺はバンドの事では悩んでたみたいだけどさ、
 あの覚え書き帖に書いてあったんだ.。
 何で悩んでたか、その理由・・・」

「ほ、ホント?」

「うん。帰ってから見せてあげるよ。」

「えっ、で、でも・・・それってさ、俺が読んでもいいのかな?」

「むしろ何で和が読まないのか不思議で仕方なかった。
 勿論俺には必要だけど、実際に読んでみて思ったけど
 あれは和に宛てたラブレターみたいなもんだったから。」
 
「え?そうなの?///」

なんかめちゃくちゃ恥ずかしい。

「うん、帰ったらゆっくり目を通すと良いよ。
 っていうか、CRASH解散は困るよ。何とかならないの?」

「もう、解散ライブも開催する事決まっちゃってて・・・」

「何とか皆にお願いしてみようよ。
 俺も直接皆に会って頭下げてみるから。」

意外な展開だった。
智がここまで言うのだから、よっぽどあの覚え書き帖には
CRASHの再始動を懇願するような内容が書かれてあるのかも。

そして夕方過ぎに自宅へ戻り、早速智が俺にその覚え書き帖を
手渡してくれた。

「本当に見ても良いの?」

「俺が良いって言ってんだから良いんだよ。」

「そ、それじゃ遠慮なく読ませて貰うね。」

なんか、人の日記を盗み見る感じで、あまり気が進まない。
だけど、俺にも話していない智の気持ちが記されているならば
確かにそれは知りたいし、俺に読まれちゃマズい様な事が
書かれてるとしたら、最初っから見せようとするわけもないだろう。

俺は恐る恐るその覚え書き帖のページを捲った。

それは、智が未来の自分宛に書いた手紙の様な文章で始まっていた。
A4サイズの大学ノートには、達筆な文字で驚くほどギッシリと
色んなことが書かれてた。

「す、凄いな。これをたったの1か月で書き上げたんだ・・・
 いつの間に書いたんだろう?」

記憶リセットの治療を受ける覚悟をしてから
実際にリセットする日まで、わずか1か月程しか時間は無かった。
考えられるとしたら、俺が仕事に行ってる間に書いたはずだ。
俺と一緒に居る時間はとにかく絵を描いてたし
このノートを開いてる姿を俺は一度も見たことが無い。
だから、智からこのノートを受け取った時、
まさかここまで細かく色んな事が書かれてあるとは
思いもしなかったんだ。

黙って読み続けていると、さっき智が言ってた
バンドやってた頃の苦悩について書かれてるページを見つけ出した。

************

おいらは元々バンドでボーカルをやってたんだけど
生涯の仕事にするつもりは無くて
それじゃ、何でCRASHのボーカルやってたかというと
ニノと一緒に居られると思ったからなんだ。
最初は次のボーカルが決まるまでって約束だったけど
どんどん名前が売れて今更辞めたいって言えなくなった。
途中で何度も辞めたいとは思った。
だけどそれは、バンドが嫌だったとかそういうんじゃない。
ニノと何時までもバンド仲間ってだけの関係が耐えられなかった。
仕事を続けてるうちは気持ちを打ち明けられないと思ってた。
だからおいらは辞めたかった。
べつに音楽自体が嫌になったとかじゃないんだ。

病気のこともあって、ニノとの想いは通じたから
今はニノが大好きなCRASHを辞めるわけにはいかないと思ってる。
おいらの復帰を待ってくれてる人たちの為に
おいらは何が何でも復帰する。

***********

驚いた。そこに書かれてる事は、俺が当時思ってた事と同じだったから。
俺が智にずっと気持ちを打ち明けなかったのは
まさしく智と同じ理由だった。

「フフッ・・・俺達って似てる・・・」

「ええっ?」

「智と俺って考えてる事同じだったんだ。」

「そうなの?」

「うん・・・明日、俺と一緒に皆に解散の撤回しに行きましょう。
 まだ公式に発表した訳じゃ無いんで、間に合うかもしんない。」

「良かったぁ。うん、そうしよう。」

俺は覚え書き帖の続きを捲って読んだ。

「・・・ああっ!やだ!何これ?」

「えっ?どうかした?」

「もー、信じられない!馬鹿じゃないの?何てことまで書いてんだよ///」

俺はそれ以上読むのが恥ずかしくなって
そのノートをテーブルに放り投げた。
そこには・・・俺の性癖まで事細かに書き記されていた。

つづく

 
 

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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