Destiny

Destiny もう一つの未来 10

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もう一つの未来 10

 

 

 
「お邪魔しまーす・・・」

初めて上がる智の自宅だった。
玄関に入った途端にペンキの匂いだろうか?
油とシンナーみたいな強烈な匂いが立ち込めていて鼻に着いた。
その原因は、リビングに入って直ぐに分かった。

「こ、これってリーダーが描いたの?」

「えっ?あっ・・・うん。そうだけど。」

それはもう、言葉を失うほど繊細に描かれた油絵や細密画が
壁のあちこちに立て掛けられていて、どれも中途半端で
未完成なものばかりだ。

「す、凄いね・・・」

そういえば、元々智は知り合った当時美大生だった。
忘れてたわけじゃないけど、バンドの仕事が次々と決まって
それこそ美術に対する熱なんてとっくに醒めたものだと思い込んでた。
仕事だって忙しくて最近じゃろくに休みも取れない状態なのに
まさか寝る時間削って描いてる?

「そんなのどうでもいいから、早くシャワー浴びて来なよ。」

「えっ?あ、うん・・・」

「風呂はあっちな。」

「リーダー先に入ってよ。」

「いいよ。おいらは後で・・・」

「そう?それじゃお言葉に甘えるね。」

そもそも智はバンド加入に関して、凄く嫌がっていたのを
新しいボーカルが決まるまでって条件で俺が無理に
巻き込んでしまったようなもの。
俺だってまさかここまで売れるとは思って無かったから
今思えば随分無責任に押し付けて悪かったとは思ってるけど。
俺としては智とずっと一緒に居られる事がただ嬉しくて
当時俺はまだ子供だったから、人の人生を軽く考えてたのかもしれない。
智にしてみれば、本当に彼がやりたかった事って
美術職だったのかもしれない・・・

実際辞めたいという事は何度か聞いていた。
でもそれは最初の1年くらいのことで
そのうち何も言わなくなったから、もう腰を据えて
俺達とやってく覚悟出来たんだと思ってたけど
何も言わないんじゃなくて、言えなかったんじゃないかって
今日、あの絵を見てハッキリとそれが分かった気がした。

俺はシャワーを浴びて、智の私服を借りて着替えると
再びリビングへと戻った。

俺がシャワーしてる間、智は無心でキャンバスに向かって
海の絵を描いていた。

「リーダー・・・」

俺が呼んでも聞こえてないのか、夢中で筆を走らせてる。

「リーダー?」

「えっ・・・あ、もう出たんだ?」

「う、うん。お先しました。」

「んじゃ、おいらも浴びてくっかな・・・」

智がシャワー浴びてる間、俺はもう一度智の絵を一つずつ
じっくりと見せて貰ってた。
見れば見るほど、智が素人じゃない事を実感させられる。

今日はとにかく驚きとショックの連続だった。
こんなに長年一緒にバンド活動やってきて
あの藍ってニューハーフの存在にしてもそうだし
これらの絵の事だってそうだけど・・・
俺は今まで智の何を見て来たんだろう?
知らなかったことの全てが衝撃過ぎて現実として
受け止めるには心の準備が出来て無さすぎる。

暫くすると智もシャワーを済ませてリビングに戻って来た。
バスローブ一枚を纏って濡れた髪をタオルでゴシゴシ拭いながら
こっちに歩いて来る姿が大人っぽく見えて、俺は一瞬ドキッとした。

「ねえ、リーダー?」

「ん?」

「さっきの人さ・・・本当はどういう関係なの?」

「ええっ?何で?」

「だって迎えに来さすわりには態度冷たかったよね?」

「そうか?いつもあんなもんだけど。」

「いつも・・・?」

「うん。いつも。」

「可哀想じゃない?家にも上げた事ないんでしょ?」

「いいんだよ。あいつが勝手に俺に付き纏ってんだから。」

「あなたのことが好きだから付き纏ってるんでしょ?」

「気になるか?」

「えっ?」

「藍には感謝してるよ。あいつは若いころからずっと
 おいらみたいな男に尽くしてくれてるからな。
 まあ、あいつもおいらが居たから今が有るんだし。」

「い、意味が分かんないんだけど・・・」

「分かんなくていいよ。ニノには関係ない。」

「そ、そんな言い方しなくても。」

「それより戻らないでいいのか?」

「え?あ、も、戻りますよ。あなたも一緒に。」

「おいらはいいや・・・」

「ダメだよ。練習ほったらかしなんだから。」

「お前一人で戻れよ。」

「嫌だ!リーダーが一緒じゃなきゃ・・・」

「そんなにおいらと一緒に居たいの?」

智はそう言いながら俺の肩を抱いた。

「えっ?あ、えっ?」

「まだちょっと明るいけど・・・おいらは全然構わないよ?」

「あ、あの・・・?」

「おいらはオカマよりニノの方がよっぽど好みだから。
 ほら、寝室はあっちだよ?」

それは俺が全く予期せぬ展開だった。

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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