Destiny

Destiny もう一つの未来 12

Destiny

もう一つの未来 12

 

 

 
それから結局は何事も無かったかのように時は過ぎた。
ワールドツアーの話も、智が脱退するかもしれないという
危機的な現実を誰も望むわけないから、二度とメンバーの口から
そういう言葉を発することは無かった。
ただ、俺は今回の事で智がバンドよりもやりたい事を
我慢してるという事実を知らされるきっかけとなったわけで
それをこのまま見て見ぬふりをするのは流石に胸が痛んだ。
俺が一人で悩んでも何も解決しないのは分かってたから
俺はある日、仕事終わりに翔さんを飲みに誘って
少しだけ相談してみる事にした。

「どうしたの?珍しいね。ニノが俺に話って・・・」

「うん。実はリーダーの事なんだけど。」

「智くんがどうかしたの?」

「あの人さ、本当はバンド辞めたいんじゃないかって思うの。」

「あー、何だ。その事ね。」

翔さんはあまりそれを聞いて驚く感じでも無かった。
もしかしたら、俺より先に気付いてたのかな?

「えっ、翔さんも気付いてたの?」

「まぁ、なんとなくだけどね。本人がそう言ってるの?」

「あ、いや。そういうんじゃないんだけど。」

「多分、智くんがやりたかった事はボーカルなんかじゃないよね。
 元々あの人、創作や絵を描くことが好きでさ・・・
 大学卒業したら、そっちの道を進むつもりだったはずだから。」

「そ、そうか。翔さんは智と同じ大学だったものね。
 俺なんかよりあの人の事知ってるよね?」

「うん。まぁ俺はピアニスト志望だったから、彼とは
 全然関わってるジャンルが違ったけどね。
 だけど智くんの芸術作品は玄人顔負けだって、
 専ら大学では噂だったからね。」

「俺、この前あの人の家に初めて入れて貰ったんだけど
 部屋中に描き掛けの作品がズラッと並べてあって、
 いつの間に描いてたんだろうって。もう、ホントに
 これって智が描いたの?って思うくらいプロ並みで。
 あれだけの腕を持ってるのに、俺は何も知らなくて
 バンドのボーカルとして無理に引き留めてたのは
 この俺だったし・・・何か凄い罪悪感感じててさ。」

「それはニノだけの責任じゃないよ。
 引き留めたのは皆だって同じだし・・・
 そうか、今でもあの人作品作り続けてるんだな。」

「もう、自由にしてあげた方がいいんじゃないかって
 俺は思うんだけど。」

「んまあね、それは確かにそうかもしんないけど
 今や智くんのボーカルがうちのバンドをここまでにした
 と言っても過言じゃないからなぁ・・・
 あの人の上をいくボーカリストも、ここまで来ると
 なかなか代役は見つからないって思うけど?」

「ねえ、翔さん?俺の我儘のせいにでもしてくれて構わないから
 CRUSHは一度解散する方向に持ってけないかな?」

「えっ?」

「もう、そうでもしないと収拾付かないよね?」

「いや、待ってよ?解散ってマジで言ってるの?」

「俺は本気。」

「だ、だけど智くんもまだ直接辞めたいとかも言って無いし・・・」

「あの人は言わないよ。これまでもずっとそうだったし
 これからもきっと・・・」

「ニノ?あの人だってもう十分大人なんだし、
 自分の人生左右する事について、人からとやかく
 言われなくても自分で決める事くらい出来ると思うけど。」

「でも、俺はあの部屋を見ちゃった以上、
 見なかったふりは出来ないよ。」

「まぁ、ちょっと落ち着いて。ニノが責任を感じてるのは
 よく分かったから。でも、結論を急ぐのは止めよう。
 俺も一度良い機会だから、あの人とゆっくり話をして
 本当のところはどう思ってるのか、それとなく聞いてみるよ。
 結論を出すのはそれからでも遅くないだろう?」

「う、うん・・・」


翔さんはその後、智と二人で何度か話し合う時間を設けてくれたけど
智が本音を翔さんに語ってくれることは一切なかった。
そうして、智の事は暫く様子をみようという結論に至って
忙しく現状維持の日々をずるずると繰り返していたら
何も事態は解決することのないままいつの間にか半年以上の月日が経っていた。

つづく

 

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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