Destiny

Destiny もう一つの未来 19

Destiny

もう一つの未来 19

 

 

 

 
智から聞いた話によると、彼は”若年性認知症”と診断されたという。
この当時、智はまだ31歳。認知症と聞くと
高齢者の病気という認識だったけど、実はそれだけではないらしい。
20歳くらいから40代の人も発症する病気らしくて
智の年齢でも全然珍しいことでは無いというから驚きだった。
幸い智の場合は気付くのが早かった為、治療とかで進行そのものは
遅らせることは出来るらしいけど、完治する事は無いらしい。
それって、どういうことなのかと言うと、
これからの治療で何処まで食い止められるかってことなんだけど
進行が進めば、間違いなく過去の記憶が無くなるってことだ。
ハッキリとした事は言えないけど、
原因としては過度のストレスによるもの。

現状から命に関わるというような事は無いらしいけど
記憶が無くなるなんて、そんなの残酷すぎる。
俺ならきっと耐えられない。

当然の事だけど、智は物凄く落ち込んでしまい
全然口をきかなくなった。
俺もあまりのショックに何て話し掛けたらいいのか分からない。

「大丈夫だよ。早期発見なんでしょ?
 ちゃんと治療すれば、何も心配要らないって言われたんでしょ?」

「うん、まぁ・・・」

「あ、仕事は皆に話して直ぐにでも休んだ方が良いよね?」

「あ、いや・・・仕事は大丈夫だよ。」

「何で?ドクターストップなんでしょ?」

「頼むから、皆にはまだこの事内緒にしてくれないか?」

「で、でも・・・」

「ちゃんと医者と相談して、どうしてもマズい時は
 自分でちゃんと皆には説明するよ。
 ライブだって近いのに、今は余計な心配を掛けたくないんだ。」

「何呑気な事言ってるんですか?こんな時にライブなんて二の次だよ!
 あなた、今まで散々色んな事我慢して来たから
 こんな病気になったんだよ?
 直ぐに事情を説明して治療に専念するべきですよ。」

「本当に大丈夫だから。
 お願いだから今日のところは普通にしててよ。」

俺は打ち合わせに向かう途中、必死で説得し続けた。
だけどどうしても今日は皆には言いたくないと
頑なに言い張るものだから
結局智の意思を尊重して、病気の事は隠して
俺達はその後普通にメンバーとスタッフとの打ち合わせに入った。

そしてそれから暫く智は普通にライブのリハーサルにも来てた。
見た目にはさほど変わりないから、誰も智が病に侵されてることなど
気付くことは無かったんだけど・・・
それはリハーサルを始めてから数日後の事だった。
CRUSHのボーカルである智にとって
致命的ともいえる残酷な病気の症状が現れてしまう。

ライブで披露する曲を通しで練習していると
突然智の声がマイクから消えた。
歌詞がところどころ飛んでしまい、全く思い出せないと言い出した。
さすがに俺もこの時はどうにもフォロー出来ず
とうとう、智は嫌でも皆に病気の事を打ち明けなくてはならない状況にまで
追い込まれてしまった。

当然のことながらその日のリハーサルは中断し
智は自分から重い口を開いて、病気の事を打ち明けた。

病気という現実を知らされて、誰もが驚いていたけれど
とにかくそういう事情であるならと、今回のライブは
見送る決断をすることになった。
そりゃあ、皆も凄いショックだった事だろう。
だけど、俺は知ってる。
本当に一番ショックだったのは智本人だったって事・・・

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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