Destiny もう一つの未来 2

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Destiny

もう一つの未来 2

 

 

 

「あの、御礼にお茶でもご馳走します。」

「御礼?何の事?」

「だって俺、1回の路上ライブでこんなに稼いだこと無くて・・・
あなたのお陰だから。」

「おいらの?おいらは何もしてないけど。」

「あなたがリクエストくれたお陰ですよ。この後ちょっとだけ時間とか有ります?」

「ええ?ない、こともないけど・・・」

「じゃ、ちょっとだけ付き合って下さい。」

戸惑う彼の腕を掴んで、俺は近くのファーストフード店に向かった。

表通りが見える窓ガラス張りの席に隣り合わせに座り
そこで買ったハンバーガーのセットを頬張る。

「お金、払うよ。」

「いいって。言ったでしょ、これは御礼なんだから。」

「だっておいらは本当に何にもしてないもん。」

「だったら、また来てくださいよ。」

「えっ?あ、うん・・・そりゃ勿論。」

「あなた、歳は幾つ?」

「19歳、そこの美大に通ってるんだ。君は高校生?」

「へえ・・・美大なんだ?あっ、俺は高校2年。」

「名前は?」

「二宮・・・」

「おいらは大野。」

その時はお互いの自己紹介し合ったくらいだけど
初めて会ったって思えないくらい、とにかく彼は俺の事をべた褒めしてくれるから、
当然だけど悪い気がしない。

「土曜日に同じ所でライブやるから、また来てくれます?」

「うん。きっと行くよ。」

「きっとだよ?約束だからね?」

「んふふっ。約束するよ。」

元々路上ライブなんて不定期の気まぐれでやってたし
開催する場所だってその日の気分で決めてて
同じ場所でやるなんて、よっぽどじゃないと無かったけど
俺は本当にまた彼に会いたいって思った。
その時はその感情が何処から来るものなのかとか考えもしなかったけど
ただ、このまま行きずりにこれっきり会えなくなるのは
なんか嫌だって思った。

それは彼の方も同じだったのだろう。
その証拠に、次の週もそしてまた次の週も・・・
彼は俺のライブを約束通り見に来てくれた。

新しいギターが欲しくて、小遣い稼ぎにやってた路上ライブも
次第に彼に会えるからって目的に変わっていた。

そんな週末を繰り返してくうちに、俺と智はすっかり仲良くなった。
そして一月ほど経ったある日のこと

「今度、大学の友達でピアノとドラムやってるヤツを紹介したいんだけど。」

「えっ?」

「ニノは将来バンドマンになりたいんだよね?」

「う、うん。」

「友達の翔くんと相葉ちゃんっていうんだけど、探してるみたいなんだよ。
ギターの上手い人。」

「そ、そうなんだ?」

「凄くイイ人達だから、一度会って貰えないかな?」

俺は人見知りというわけじゃないけど、音楽については慎重派だったから
誰とでもセッション出来るかというと、やはりそれは微妙に不安だった。

「智が一緒なら・・・逢ってみても良いけど。」

「ホント?それじゃ、来週連れて来てもいい?」

「あ、うん。」

こうやって、バンド結成に向けて話はゆっくりと動き出していった。

つづく

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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