Destiny

Destiny もう一つの未来 36

Destiny

もう一つの未来 36

 

 

 

俺は気持ちを切り替えて、もう智の前では泣かないと決めた。
智だって本当は泣きたいくらい辛い筈なのに
俺を不安にさせまいとしてるのが分かるから
残りの1か月は最後まで笑って過ごそうと決めた。

その後、計画通りに智は家族や知り合いの全ての人達、
それに仕事でこれまで関わったスタッフやメンバー達に会いに行き、
これまでお世話になった御礼というか
最後の挨拶をしに数日掛けて回った。

他のメンバーには事前に俺から事情は説明してはおいたけど
やっぱり最後はどうしても皆ボロボロになって泣いてた。
そして口々に「どれだけ時間掛かっても待ってるから。」
と智を全力でサポートすると約束してくれてた。

藍さんにも会いたいって、智から連絡を取ったけど
どうしても顔を見たら泣いてしまうの分かってるし
完全にサヨナラじゃないからと、断ってた。

「藍さん、忙しいの?」

「ううん。サヨナラじゃないから、挨拶とかしなくていいって。」

「そう・・・。藍さんは純粋にあなたのことが好きだったからね。」

「そうなんだ・・・」

「あなたが藍さんを覚えてなかったのには
 ホント驚いたよ。あんなに仲良くしてたから、
 藍さん、あの時それどころじゃ無かったのも有るけど
 後で相当落ち込んでたと思うよ。」

「なんか悪い事したな。」

「まぁ、仕方ないと思う。わざとってわけでもないし。」

「なんかさぁ、おいら死ぬわけでもないのに、
 生前葬でも開くみたいだよな・・・。」

「やだ、縁起でもないこと言わないでよ。」

「自分から記憶が消えるって、ある意味それと変わんないのかもな。」

「で、でもね、俺は思うんですけど、それって考えようじゃないかな?
 人は誰でも過去に忘れたい記憶とかも必ずあるでしょ?
 人生幸せな事だけの繰り返しで生きてる人なんて
 何処探したって居ないですから・・・
 そう考えるとあなたは忘れたい嫌な過去もリセット出来るんだもの。
 人生をやり直したいと思ってる人はごまんと居るよ。」

「忘れたい過去か・・・」

「うん。あなたはこれから生まれ変わるんだよ。
 そして、あなたが残しておきたい事実だけを
 俺がゆっくり時間掛けて上書きしていくの。」

「ニノには色々と面倒押し付けちゃうけどいいの?」

「水臭いよ!俺は言っとくけど、あなたがお爺ちゃんになって
 例え身体が動かなくなったとしても、面倒みる覚悟出来てるよ。」

「んふふふっ。それってどっちが先か分かんねえぞ。」

「あ・・・確かに。」

「あぁ、そうそう、忘れるとこだった。」

智は何かを思い出して、突然その場から立ち上がると
キャビネットの引き出しから、通帳と印鑑と
黒い長細い何かの箱を取り出して俺に手渡した。

「はい、これ。」

「ん?何?預金通帳?」

「そう。それ、定期預金入ってるんだ。
 それはニノが持っててくれ。」

「あ、預かれって事ね?いいよ。」

「多分そういうのも持っててもおいら忘れちゃうんだろうし。」

「だけどさ、俺信用して大丈夫なの?
 ご両親とかに預かって貰えば良いのに。」

「あ、もう一つ銀行に預けてる分は母ちゃんにこの前
 預けてきたから、それはニノが持っててよ。」

「えっ・・・幾ら入ってるの?俺見ちゃうよ?」

「うん、いいよ。」

「こ、こんなの預かれないよ。」

そこに記載されてた金額は予想を遥かに超えてる金額だった。

「なんなら、ニノが好きに使ってくれてもいいよ。」

「な、何で?」

「ニノはおいらの嫁さんみたいなもんだからね。」

「智・・・ダメダメ!ちゃんと何かに覚書きしときなさいよ。
 記憶が無くなった後にそれを証拠に出来るんだから、
 そういう大事な事は、今のうちに全部覚え書きしておいてよ。
 俺は預かるのは預かるよ。だけど、これは全部あなたのだから。」

「何だよ。それこそ水臭いぞ。」

「それとこれとは話が違います!」

「分かったよ。覚え書きはちゃんとしとくよ。
 あ、そっちの箱なんだけどさ、それはおいらからの
 ニノへのプレゼント。」

「え?俺誕生日まだだよ?」

「いいから、受け取ってくれ。」

それはシルバーのペンダントだった。

「わざわざ俺の為に買ってくれたの?」

「うん、おいらもお揃いで買って来た。」

「めちゃくちゃ嬉しい!ありがとう、智。」

「気に入ってくれた?」

「気に入ったどころじゃないですよ。」

「良かった。」

智を好きになって本当に良かった。
重い病気になってしまったけれど、結果としては俺は今こんなにも幸せだ。
ただ、時間は容赦なく過ぎていく。
今のうちに伝えておきたい事、二人でやっておきたい事は
数えきれないくらい有るのに、いざそれが何?って考えても
なかなかすんなりと答えられない。
だけど、智を好きだって想いは、何度口にしても足りないくらい。
普段なら絶対口にしない言葉でも、今は後悔したくないから
全然躊躇いなく何度も言える。

「智・・・?」

「ん?」

「ありがと。大好き・・・アイシテル・・・」

「んふふっ。おいらも・・・」

そうして、俺達に残された時間はあっという間に過ぎて行き
いよいよ田所先生の病院へ行く日・・・
つまりは智が生まれ変わるその日がやって来た。

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

2件のコメント

  • 3240

    こんにちは
    いつもお話ありがとう。
    お話も、いよいよ手術になりましたね!
    なんか、切ないです。智は、藍さんは、忘れてしまいましたが、ニノのことは、忘れてない。一緒に、芸能活動して一緒に暮らしていれば忘れないんですよね!
    いよいよ手術。自分の名前も、忘れてるんだろうなぁ。ニノがついてるから大丈夫。生まれ変わったつもりで、記憶が上書きされていけばまた好きになる!
    今後の展開楽しみにしてます。

    • 蒼ミモザ

      3240様、こんばんは。
      こちらこそ、いつもありがとうございます<(_ _)>
      こんな重いお話にも付き合って下さって本当に感謝感謝です☆
      もうお話の方は終盤に入っております。
      あと少しだけお付き合い下さいね。
      どのような設定でも大宮としてイメージしながら読んで頂けるように
      頑張って最後まで仕上げたいと思いますので宜しくお願いします。

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