Destiny もう一つの未来 4

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Destiny 

もう一つの未来 4

 

 

 

智が歌うバラード曲を俺達は口をポカンと開けて聴いた。
もう、それは上手いを通り越していた。
伸びのある声量・・・鳥肌が立つほど優しくて
耳の奥に心地良く響く高音からは、多分間違いなくアルファ波が出てる。

驚いた。この人一体何者なの?

ワンコーラスを歌い終えて智は照れ臭そうにマイクから離れた。

「終わりっ!もういいだろ?あー恥ずかしいっ。」

俺達は暫くその歌声に聞き惚れてフリーズ状態。

「すっ、凄いよ、大野さん。あなたにボーカルの才能があったなんて。」

「もぉ、翔くんまで何言ってんの?止めてよ。」

「いや、おおちゃんマジで上手いよ。是非うちのボーカルになってよ。」

「あ、相葉ちゃんまで・・・」

「ほらね、分かったでしょ?俺なんか捕まえておくよりも、この人
誘うべきだよ。バンドの将来考えるならね。」

「ちょっと、潤くん話が違うよ。おいらが歌えばバンドに入るって言うから・・・」

「そもそもバンドやればって持ち掛けたのはあなたですよ?
あなたにも多少の責任は有ると思うけど・・・」

「に、ニノぉ・・・ボーカルはニノでいいじゃん。」

「あなたの歌聴いてから、流石にもう俺じゃ皆納得しないでしょ。
俺もあなたがバンドに加入してくれると嬉しいけど。」

「ううっ・・・で、でも・・・」

「どっかでボイトレでもしてるの?」

「ええっ?あ、いや・・・」

「大野さん?ちゃんと皆には本当の事話したらどう?」

潤が智の背中を押した。

「じ、実は・・・」

「この人ね、本当は以前バンド組んでボーカルやってたんだよ。」

「えええっ?なんだ、そうなの?」

「う、うん・・・」

「どーして言ってくんなかったの?」

「うん・・・もう俺バンドはやんないつもりだったし。」

「あなたみたいなセミプロに俺、散々下手糞な歌聞かせてたかと思うと
恥ずかしくなるよ・・・」

「え?いやいや、ニノの歌おいらは好きだよ。」

ドキッ・・・
えっ?待って?
何で今俺この人の言葉にキュンキュンしてるの?

「とにかく大野さんがボーカルじゃなきゃ俺はバンドには入らないから。」

「えええっ?マジか・・・」

「お願いだよ。大野さん!ボーカル引き受けるって言ってよ。」

「ちょ、ちょっと待ってよ。少し考えさせてもらって良いかな?
幾ら何でも今直ぐに返事なんて出来ないよ。」

だけど結局は入れ替わり立ち代わりで智の説得に入り
半ば俺の
「まあ、最悪次のボーカルが見つかるまで・・・」
っていう、いい加減なひと言で納得させて
何とか嫌がる智をバンドのボーカルに迎え入れた。
それで自動的に潤も断る理由がなくなって
正式な5人のメンバーでの活動が始まった。

これが俺達のバンド「CRUSH」の誕生エピソードだった。

つづく

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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