Destiny

Destiny もう一つの未来 5

Destiny

もう一つの未来 5

 

 

 

こうして半ば強引に智を巻き込んで始めたバンドだったけど
最初のうちは皆学生だったこともあり、週末だけ集まり
ひたすら曲を作ってそれをスタジオ借りて練習してた。

半年近く経って、潤がアマチュアバンドのコンテストに出場しようと
俺達に提案してから俺達の運命は大きく動き出した。
智以外のメンバーは皆、早く有名になりたいって思って練習してから、
やる気は十分だった。
智は成り行きで仕方なくメンバーに加わっていたこともあって
タイミング見計らって辞めたいということを、
ずっと俺にだけは訴え続けてた。

「あんなに実力有るのにどうしてそんなにやりたくないの?」

「おいら、苦手なんだよね。人前で歌ったり、そういうの。」

「才能あるのに勿体ないよ。」

「とにかく、おいらは次のボーカルが見つかるまでって約束だから。
 出来ればコンテストにも出たくない。」

そんな事を言ってたけど、結局新しいボーカルなんて
簡単に見つかるものでも無くて、そのひと月後に開催された
アマチュアバンドコンテストには5人でエントリーして
いとも簡単に優勝してしまった。
その時の審査員の総評としては、やはり誰もが智の歌声を
高く評価していて、バンドそのもののクオリティについては
並だけど、将来性は有ると付け足して言われたくらいだ。
でも、俺達はそんなことはどうでも良くて、
とにかくプロデューサーが付いてメジャーデビューを果たす事が
目標だったから、先ずはその夢が叶ったということだ。

皆がハイタッチし合って喜びを表現していた中で
当然ながら智だけは浮かない表情だった。
それはあんなにやりたくないと言ってたのだから
コンテストの時、手を抜くことだって出来たのに
自分以外盛り上がってるメンバーに対して、
おそらく気を使ってそれが出来なかったんだと思う。
自分の事は二の次・・・
智ってそういう人なんだ。

コンテストで優勝した俺達は、その直後から
有名なレーベル会社から声が掛かって、
契約、デビューと話がとんとん拍子に進んだ。
こうなると智の逃げ場は何処にも無くなり
本人も開き直ってとりあえずレコーディングやプロモーションに全力を注いだ。

プロデューサーの力で俺達はたちまち音楽番組などに出演出来るまでになった。
当時皆が若かったというのもあって、ビジュアル売りのアイドルみたいな
セールス路線を強要されて、翔さんとかは物凄くそれに抵抗あったみたいだけど
売れるまでの辛抱だって、自分を押し殺して大人の人達の言う通りに
セールス方法に一切文句を言わずに従ってた。

そうしてるうちに、爆発的とはいかなかったけど
ジワジワと売り上げは伸びていき、
最年少である俺と潤が高校を卒業する頃には
俺達は全国の小規模な会場でライブが出来るまでになっていた。

順風満帆にやりたかった事が実現してる俺ら4人とは正反対に
自由を奪われてしまった智の苦悩を知らなかったわけじゃないけど
そのストレスがどれほどのものだったかなんて
きっとその当時、誰も気付いていなかったかもしれない。

特に俺に至っては、智にとにかく懐いてたから
一緒に仕事出来る事が嬉しくて楽しくて・・・
彼はプロになってからは愚痴を零すことがなくなったから
完全にもう吹っ切れて前向きになってるものと思ってた。

今でこそ思うんだけど、そんな俺だからこそ
彼の異変には一番気付いてあげなきゃならなかったのに・・・

そして、あっという間に5年が経ち、10年が過ぎ
気が付けばアリーナ会場でのライブチケットが
発売と同時に完売するほど俺達は人気バンドへと成長してた。

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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