Destiny

Destiny もう一つの未来 7

Destiny

もう一つの未来 7

 

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!リーダー?何処行くの?」

智は俺が叫んでも振り返りもせずにスタジオを出てってしまい
表通りをさっさと歩き始めた。
俺は何とか連れ戻そうと、智の後を小走りに追った。

ようやく智の背中に5メートル近くまで追い付いて、
もう一度その後ろ姿に声を掛けた。

「リーダー?」

こんな近くで呼び掛けてるのにガン無視される。

「んもうっ、さとしってば!!」

名前で呼んでみたら、ピタリとその足が止まり、
少しだけ俯き加減に肩越しに俺の方へと顔を向けた。

「捕まえたぁ。」

俺は普段と変わらない口調でそう言いながら智の腕を掴んだ。

「離せよ・・・」

智はいかにもテンションの低い声でそう言うと、
俺の手を振り解いて再び歩き出した。
俺も怯まずに智に歩幅を合わせて同じ方向に歩く。
だって、いつになく思い詰めた表情してるし、何だかほっとけない。
下手すりゃこのままバンド辞めるとか言い出しそうな空気さえ感じてた。

5分くらい沈黙のままただひたすら表通りを歩いた。

「ね?何処行くの?なんか雨降り出しそうなんだけど・・・
 スタジオに戻ろうよ。」

「・・・」

上空は厚い雨雲に覆われて、今にも雨が降り出しそうだった。
朝から見た天気予報じゃ確かに今日は午後から下り坂だと言っていた。
こんな時に限って予報は的中したりするものだ。
生暖かい風が遠くから雨の匂いを運んでる。

「皆きっと心配してるよ?俺達が居ないと練習も進まないだろうし。」

「だったら・・・お前だけ戻ればいい。」

「ねえ、潤が言ったことは何も決まった事じゃないから
 真に受けることないよ?」

「・・・」

「だけどビックリするよね。海外進出だなんて。
 そりゃあね、確かに海外で活動してる日本人のミュージシャンだって
 居ない事はないけどさ、そこで成功出来る人ってひと握りもいないよね。
 ましてや俺達みたいな若僧になんて、ある意味博打みたいなもんだよ。
 事務所だってそんなこと認めるわけないんだから、
 あの話を真剣に捉える必要はないと思うよ。」

「違うんだ・・・そういう事じゃないんだ。」

「えっ?違うって・・・何が?」

その先を聞こうとした時、ぽつぽつと大粒の雨が頭上に落ちてきた。

「あっ・・・大変!急いで戻ればそこまで濡れなくて済むよ。」

俺は再び智の手を掴んでスタジオの方向に戻ろうとその手を引いたら
簡単に振り払われて、俺から逃げる様に智は再び逆方向に向かって走り出した。
マジかよ?

「り、リーダー!」

再び俺も必死で彼を追い掛ける。
次第に雨は本降りになってきて、傘を持たない俺達は
頭の先からつま先までずぶ濡れ状態で全力疾走の追いかけっこ。

数分程走っていたら、智はそのまま近くの公園の入り口へ入って行った。
そこの屋根付きのベンチに辿り着いて、
ハァハァと肩で呼吸を整えながらベンチに腰掛けて
流石に疲れたのか大きく項垂れた。
遅れて到着した俺も無言で智の横に腰を下ろした。
やたら話し掛けてまた刺激して逃げ出しても困るから
ここは静かに落ち着くのを待った方が良い。

平日の昼間だし、この天気だから出歩いてる人も殆どいない。
会話も交わさずに、ただ二人っきりでベンチに腰掛けて
雨が小降りになるのを待ってるだけ。
髪の毛の先から水滴がぽたぽたと滴り落ちる。
それくらい俺達はずぶ濡れだった。
季節は桜の散った後の4月だったけど、濡れてることもあって
俺はちょっと寒気を感じた。

「ううう・・・寒っ・・・」

俺が震えながら小声で零した次の瞬間だった。
智が俺の肩を掴んで自分の方に引き寄せたかと思ったら
いきなり両手で俺の身体を包み込む様にギューッと抱き締められた。

「え・・・リーダー?」

お互いにずぶ濡れなんだけど、智の体温が伝わってきて温かい。
でも、それをゆっくり感じてられないほど
俺の心臓は破壊されるんじゃないかってくらいドキドキと高鳴った。

「ど、どうしたの?」

一体何が起きたの?これって俺、夢でも見てる?
本当は嬉しかった。その理由は何であれ・・・
長年思い続けてきた人から抱き締められてるんだもの。
だけど、それを悟られない様に俺は必死だった。

「風邪ひくから着替えた方がいい。おいらのマンション・・・行くか?」

そう言って俺の腕を引っ張ってその場から立ち上がった。

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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