恋愛小説
黄色い泪⑪
「んふふふっ、カズはどっち?」
「えっ///そ、そんなこと答えられるわけないじゃん・・・」
俺はこないだ誕生日が来て16歳になったところだし、野球ばっかしてて女の子と付き合ってる時間なんて無かったんだもん。
中学の時、俺の事が好きだと告白してきた下級生の子から一方的にキスされたことはあるけど、性行為なんて俺の周りで経験あるヤツの方が少ない。
「それじゃ、俺も答えない。」
「あっ、ズルいよ。分かった、答えるよ!俺は経験有りますよ。」
「へえ・・・証拠は?」
「しょっ、証拠とか普通ないでしょ?」
「それじゃぁ話にならないよ。口では何とでも言える。」
「ほ、本当だってば・・・」
「ちなみに相手は男?」
「お、女ですよ・・・」
「男は?経験ある?」
「もぉー、ズルいよ。大野さん、俺にばっかし質問してる!自分はどっちなの?」
「有るよ・・・」
「えっ・・・」
「俺は経験ある・・・一応童貞は卒業した。」
「ま、マジで?」
「カズは俺と付き合うって言ったけど、男同士ってことに抵抗は無いの?」
「えっ・・・全然ないですけど。」
「ふうん・・・経験あるの?」
「同性同士って、大野さんが初めてです。」
「俺も・・・俺もカズが初めて・・・」
「どうして受け入れてくれたんですか?俺の事・・・」
「何でかな?カズが可愛いから?」
大野さんはそう言って照れくさそうにフニャっと目尻下げて笑って見せた。
今こそチャンスとばかり、俺は大野さんを上目遣いに下から覗き込む。大野さんはちょっと焦って俺から視線を逸らす。
ここでキスしないで何時するの?俺は大野さんの胸にしがみつくようにダイブしてベッドに身体を押し倒した。
「か、カズ?」
「キス・・・して・・・」
「へっ?」
「大野さんは俺とキスしたくないの?」
「ま、待ってよ。」
大野さんは慌てて身体を起こして待ったを掛けた。
「何で?俺の事受け入れてくれたじゃないですか?だから今日だって家に呼んでくれたんでしょ?」
「カズ、落ち着けって・・・」
「俺は大野さんの事が好きなんだよ?」
「うん、俺もカズのことは好きだよ。」
「だったら・・・」
「わ、分かったから・・・分かったけど、俺チューだけじゃ済まなくなるよ?それでもいいのか?」
「えっ・・・」
「ほら、そこまで考えてないだろ?とにかく、下に降りてジュースでも飲もうよ。もう、俺喉からっからだよ。」
チューだけで済まなくなるの?俺はそれでも構わないし、全然そのつもりで居たんだけど・・・
その場は何というかうまく交わされてしまった感じ。
仕方なく二人で再びリビングに降りて、これと言ってすること無いから二人で暫くゲームとかして遊んでた。
ちょっと陽が傾いて来て、腹が減ったから夕飯に買ってきた弁当を食べた。
「カズ、風呂入って来なよ。」
「あ・・・うん。」
さっきは誤魔化されちゃったけど、夜になって再びチャンスは訪れた。
このまんまキスもしないで終わるわけにいくかよ。せっかく誰にも邪魔されない二人っきりの夜だってのに。
大野さんだって、きっと俺に遠慮してるんだ。大野さんも絶対俺と親密な関係になりたいと思ってるに決まってる。
俺は大野さんとゲームする為にここに来たんじゃないもの。
目的は一つしかない・・・
シャワーを浴びながら、大野さんと関係持つことばかり考えていたら、勝手に頭だけが先走ってしまい体の中心がムズムズと疼きだして
情けない事に下半身がしっかり反応してしまった。
今更ではあるけれど、鏡に映った俺はまだまだ子供みたいな顔してる事に気付く。
こんなんだから、俺が子供っぽいから大野さんが俺を抱くことに強く躊躇いを感じるんだよ。
どうしたら色気って滲み出るの?そこをちゃんと研究しとくべきだったよな。
ハァッ・・・俺は大きい溜息をついて風呂から上がった。
「あ、カズ・・・ベッドと座敷どっちがいい?」
「えっ?どっちって・・・?」
「座敷がいいなら布団準備するけど。」
「俺は・・・大野さんと一緒ならどっちでも構わないです。」
「カズ・・・?」
「えっ・・・」
「あのさ、俺の気持ちも考えてくれよぉ。一緒に寝たりしたらタダじゃ済まなくなるんだよ?」
「う、うん・・・それが?」
「それがって・・・カズはまだ俺と付き合って間もないじゃん。」
「うん・・・だから、それが?」
「俺、とんでもなく悪いやつかもしんないよ?」
「そうなの?」
「とんでもなく変態かもよ?」
「そうなんだ?」
「知らないよ?本当に・・・」
「俺、大野さんがどんな人でも全て受け入れる覚悟出来てるよ。」
「・・・分かったよ。待ってて、俺もシャワー浴びて来るから。」
大野さんが降参したって表情でバスルームに去って行った。
つづく