恋愛小説
黄色い泪⑮
そして、数日が過ぎて学期末試験があったんだけど、当然のことながら大野さんとあんなことがあった俺は勉強にちっとも身が入らなくて、毎日毎日考える事といえば大野さんのことばかり。
ようやく試験が終わり、今日から部活も再開って時に、俺は放課後担任から職員室に呼ばれた。
「失礼します。」
「あ、二宮・・・待ってたぞ。進路指導室に来なさい。」
「え?進路?」
俺はまだ1年だから進路決めるのは早くないか?頭を捻りながら進路指導室に行くと、先生が俺を向かい合わせに座るように促した。
「早く座りなさい。」
「はぁ・・・あの、何か?」
「何かじゃないだろ?なんだ、この点数は?」
「あっ・・・」
テストの結果がもう出たらしい。っていうか、俺の担任は数学の教師だから、数学の事を言ってるんだ。
「何をやってるんだ?」
「え?」
「いいか?お前は野球のスカウトでうちの高校に入学したんだから、本来は野球部の練習が優先されるのはもっともなんだが・・・故障で野球を続けられないのなら勉強を頑張らないでどうするんだ?」
「で、でも、俺は代わりに演劇部に入部したんで・・・」
「そうらしいな・・・」
「はい。今日もこれから演劇部の稽古なんで、そろそろ行かなきゃいけないんですけど。」
「はあ?言っとくが、赤点は数学だけじゃないぞ。英語も世界史もだ。」
「ええっ?マジ?」
「いいか、夏休みはとにかく返上で課外授業を受けろ。追試全て合格するまで演劇部の稽古も禁止する。」
「えええっ?ま、待ってよ、先生?」
「ここまで出来ていないのはお前一人だぞ?本来なら親御さんに来て頂いて話を聞いて貰うところだが・・・」
「いやいや・・・それは困るよ。母さんには、その辺に心配を掛けたくないんで・・・」
「うん。だから、今回だけは課外授業でなんとか挽回するまでチャンスをやろうって言ってるんだ。」
「せ、先生?俺ね、演劇コンクールの準主役が決まってるんだ。台詞も覚えなきゃなんないしさ・・・」
「そんなの誰か他のヤツに代わって貰え。」
「そ、それは無理だよぉ。」
「とにかく、来週から夏休みだが課外授業のスケジュールを渡すから、休まないで必ず受けるんだぞ。」
「マジかよぉ・・・」
「ちゃんと顔を出さなければ親御さんに連絡するからそのつもりで。」
「わ、分かりましたよ。」
最悪だ。どうしよう・・・手渡されたスケジュール表を見てみると、2週間位ギッシリ課外授業で埋め尽くされてた。
待って、確か夏休みは合宿が有るんだ!
合宿は何時なんだ?それによっては合宿にも参加できないってことか・・・
俺は急いで演劇部の部室に向かった。
「あ、ニノ、どうしたの?遅かったじゃない。」
「あ、潤くん!あのさ、合宿って何時なの?」
「えっ?あ~、8月の1日から2泊3日だよ。どうして?」
「えええっ?」
「どうかしたの?」
「俺、課外授業が・・・」
「ええ?」
「試験の成績最悪でさ・・・どーしよう。」
「ホントなの?それはマズいよね。」
「ねえ、合宿ってどんなことするの?」
「俺も初めてだから分かんないけど、コンクールの為の稽古が中心だとは思うよ。」
「俺が行けないとどうなるかな?」
「それは・・・大野先輩に迷惑が掛かるよね。」
「どーしよ。課外とかどうにかなんないかなぁ。」
「先生に相談してみたら?」
「無理だよ。たった今進路指導室でめっちゃ叱られてきたばっかだもん。」
「そんなに酷かったの?」
「赤点だけでも3教科・・・」
「ありゃまぁ。」
「ねえ、どうしよう?」
「これは部長と大野先輩に正直に話して謝るしかないよ。」
「う、うん・・・」
俺は部室をキョロキョロと見回して大野さんを探した。
「あ、大野さん!え、あの人・・・誰?」
大野さんはスレンダーボディのイケメンのスーツ着た、俺が知らない男性と何やら親しそうに話をしていた。
つづく