恋愛小説,  黄色い泪

黄色い泪23

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黄色い泪23

 

そしていよいよコンクールの当日がやって来た。大野さんの将来の進路の大きな鍵を握るとも思われる運命の日でもある。

俺は滅多に緊張とかしない人なんだけど、今日ばかりは朝から落ち着かなくて、本番直前までトイレにばかり走る。

だって、俺がミスったら重大責任なんだもの。野球で言えば9回ツーアウト満塁、自分の打席で逆転のチャンスが回って来てるようなものだ。

裏を返せば後がないってこと・・・

これが緊張せずにいられるかって話だよ。

「智くん、調子はどう?」

「あっ、翔ちゃん。来てくれたんだ?」

「うん、一昨日交換留学終えて帰って来たんだ。ゴメンね。大事な時に舞台立てなくて・・・」

「ううん。翔ちゃんが悪いんじゃないもの。あっ、彼が翔ちゃんの代役の二宮くん。」

へえ。この人が櫻井先輩か・・・

「はじめまして。二宮です・・・」

「俺の分まで今日は頑張ってよ。客席で応援してるから。」

「あ、あの・・・なんなら櫻井先輩、戻って来てるんだし、やっぱり代わりませんか?」

「ええっ?無理無理。俺台本一度も読んでないもの。」

「カズ?どうした?なんかカズ顔色悪いな。もう直ぐ出番だけど大丈夫?」

「う、うん・・・なんか緊張してきちゃって。」

「無理もないよな。だってさ、二宮ってまだ1年で一度も舞台経験ないんだろ?」

「大丈夫だよ。カズは下手すれば俺なんかより素質あるんだ。」

「へえ。そうなんだ?」

「ちょっ、大野さん・・・」

そんなこと言われたら尚更プレッシャーだよ。

「んふふ。何情けない声出してんの。ほら、いっぺん深呼吸しろ。」

すぅはぁと俺は大野さんから言われるように思いっきり深呼吸してみせた。だけど、一向に心臓のドキドキが止まらない。

俺がどうしても不安そうな顔をしてたから、大野さんは櫻井先輩も見てる目の前でいきなり俺をハグしてきた。

「おっ、大野さん?」

「いいから!こうしてると落ち着くだろ?」

「で、でも///」

「カズ、言っとくけどさぁ、俺の為に頑張んなくたっていいぞ。」

大野さんは俺をハグしたまま俺に語り掛けてきた。

「えっ?」

「俺はね、演劇部の最後の舞台だから、ただ楽しく芝居が出来ればそれでいいんだよ。」

「で、でも、もし俺がミスったりして、大野さんの入団に影響でもしちゃったら・・・」

「周りがどうこうって理由で不合格になんてならないよ。もしも不合格になるんなら、それは間違いなく俺自身の問題だってことだよ。だからカズはいつも通りでイイから。」

「そ、そんなふうに言われても・・・」

「泣いても笑っても、一緒にお芝居できるのは今日が最後なんだよ。だからもっと肩の力抜いてリラックスしようよ。昨日のリハーサルだって完璧に出来てたじゃん。カズは大丈夫だよ。」

「う、うん・・・」

最後って言われて、その言葉に実感こもってたから、なんか急に切なくなった。

そう・・・大野さんと3年の先輩は今日のこの舞台で演劇部を引退するんだよな。

「あのさ、お取込み中悪いけど、智くんと二宮って付き合ってるの?」

「あ、うん。翔ちゃんに言ってなかったっけ?」

「聞いて無い。」

「あ、他の皆には内緒ね。」

「ふうん・・・智くんがねぇ・・・」

櫻井先輩は意味深にニヤリと笑って俺の顔をガン見した。

「な、何か?」

「ううん。なんかお似合いだなって思っただけ。じゃ、俺は会場で最後の舞台見学させて貰うよ。」

「うん。翔ちゃん、また後でね。」

「二人とも頑張れよ。」

大野さんに優しくハグされたからか、俺の緊張も次第に解れてきた。

「それじゃカズ、行くか?」

「は、はい。」

俺は大野さんと演劇部の皆がいる舞台の裏口へと急いだ。

俺達の順番のひとつ前の高校の演劇の芝居が大きな拍手と共に幕を閉じた。そして・・・いよいよ俺達の出番だ。

俺と大野さんのシーンから始まるから、俺達は舞台の中央でスタンバイを始めた。

「カズ・・・リラックスな。」

「うん・・・」

『それではいよいよ演劇コンクール最後の出場校となりました。嵐が丘高校演劇部の公演です。』

ブザーと共に幕が上がって、俺と大野さんにスポットライトが当たった瞬間、会場からはキャーっていう黄色い声援と大きな拍手が響き渡った。

うちは優勝候補って言われてるのもあるけど、この声援は間違いなく主演の大野さんに向けられたものだった。

 

 

 

つづく

 

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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