恋愛小説,  黄色い泪

黄色い泪30

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恋愛小説

黄色い泪30

 

 

「ニノ、本当に行っちゃうんだな?」

「うん。潤くん、色々話聞いてくれてありがとうね。また東京に戻って来た時は連絡するよ。」

「俺もニノに負けないくらい頑張らなきゃ。」

「潤くんは俺なんかより役者になるべきだよ。っていうか、絶対になれるよ。」

「ありがとう。ニノも頑張れよ。」

「うん。それじゃ、行くね・・・」

11月初旬、京都へ旅立つ日がやって来た。休日という事も有り、潤くんがわざわざ駅まで見送りに来てくれた。

役者になる道を選んだことが正解かどうかなんて俺にも分からないけど、もう後戻りはできない。

俺は大事な人を失いたくない。それだけの理由で学校と家を投げ出した。勿論後悔はしていない。

とにかく今は俺の頭の中は大野さんの事で一杯だった。

どんな顔するかな?まさかこんなに早く会えるとは思っていないだろうから喜ぶかな?それよりも驚く方が先だろうか?

電話は毎日のように掛かって来てた。夕べも普通に話したけど、まさか今日会えるなんて夢にも思って無いだろうから、大野さんの反応が楽しみで仕方ない。

新幹線でおよそ2時間半・・・俺は一人京都駅に降り立った。そこからタクシーで劇団から貰った住所を頼りに合同宿舎へ向かう。

宿舎に辿り着いたのが丁度正午過ぎだった。寮母さんらしき人に挨拶をして、部屋に案内して貰い、荷物を置いてから研修生たちが稽古しているスタジオに案内された。

俺はそこで一番お偉い演出家の人に直接会って挨拶をしに行った。

「初めまして。東京から来ました、二宮と言います。宜しくお願いします。」

「あぁ~君が・・・社長から話は聞いてたけど・・・僕は佐々木といいます。君、随分華奢だけどレッスン大丈夫なの?」

「え?あっ、これでも俺、一応小さい頃から野球やってたんで・・・」

「ふうん。ま、いいや。様子見て配役は決めるから。取り敢えず皆に紹介するから着いて来て。」

「あっ、はいっ!」

ついにだ。ついに大野さんに逢えるんだ。

俺はにやける口元を両手で隠しながら、演出家の佐々木って人の後ろを着いて行った。

相当広いレッスンスタジオには全面壁に鏡が張ってあって、そのフロアーにはTシャツジャージ姿の研修生達が100人近くレッスンを受けていた。

「はい、皆ちょっと集合~っ」

四方に散らばってた研修生達が一気に集まって来た。俺は下を俯いてまだ顔を上げずに気配を消していた。

「今日からお前達と一緒にレッスンを受ける事になった二宮だ。二宮、ひと言挨拶しろ。」

「は、はい。初めまして。東京から来ました、二宮和也と言います。何も分かりませんので、これから宜しくお願いします。」

俺はようやく堂々と顔を上げて研修生達の顔を見た。大野さんは何処だろう?100人も居るから一瞬じゃ見つからない。

何だよ・・・ビックリしてる顔を見たいのに。

「相葉!お前、二宮のストレッチに付き合ってやれ。」

「は、はいっ。」

「それじゃ、他の者はダンスレッスン始めるぞ。」

「二宮くん、僕は相葉って言います。宜しくね。」

「え・・・あ、二宮です。宜しく・・・」

「こっちはダンスレッスン始まるから、あっちでストレッチやろうか?」

「う、うん・・・あ、あの・・・」

「んっ?」

「あの、大野さんは・・・」

「え?」

「ここに大野智って人が居ると思うんだけど。」

「うん・・・居るけど?君、おーちゃんのこと知ってるの?」

「お、おーちゃん?」

「おーちゃんは昨日から舞台に出てるけど。」

「えええっ?ぶ、舞台に?」

「そうだよ。知らないの?おーちゃん、新人でも佐々木さんがゴリ押しだからね。数回レッスン受けたら直ぐに今やってる舞台の演者に大抜擢されたんだ。」

「う、嘘?それ、本当に大野智なの?」

「そうだよ。」

そんなの電話でも言ってなかった。何で黙ってたんだろう?

「こらーっ!お前ら余計なお喋りしてないで早くストレッチ始めろ!」

「いけねっ。二宮くん、とにかく話は後でね。ストレッチやろう・・・」

「う、うん。」

自分だって大野さんに隠し事してたくせして、大野さんも俺に隠し事してたって事が分かると、何か凄いショックだった。

離れてるから関係無いって思ったのかな?それでも、たったの1か月で舞台に上がれるなんて自慢できることなのに、どうして教えてくれなかったんだろう?

大野さんって時々何考えてるか分からなくなる時がある。

「二宮くん、身体固いな・・・後ろからアシストするから、前屈もっと頑張ってみて!」

相葉って人は力加減知んなくて、馬鹿みたいに背中を押した。

「あー痛たたたたっー」

「マジで固いなぁ・・・そんなんで良くオーディション通過したね?」

「オ、オーディションじゃないよ。」

「ええ?」

「俺は社長から声を掛けられたの。」

「まっ、マジで?」

相葉さんは目を丸くして俺の顔を覗き込んだ。

「すげーっ、君ってエリートじゃん。」

「エリート?そんなわけないでしょ。」

「ご、ゴメンね。何も知らなかったから・・・あ、次開脚ね。」

俺が社長からのスカウトって聞いた途端に相葉さんの態度が一変した。

参ったな・・・これじゃ逆に色々ハードル上げちゃったのと同じじゃない。

その後、2時間みっちり基礎体力付けるストレッチは続き、普段何もしてなかった俺は身体のあちこちが悲鳴を上げてくたくたになってしまった。

夕方の5時にその日のレッスンは終了し、合同宿舎へ戻って行った。

「あの、相葉さん?」

「え?何?」

「大野さんの部屋って何処か分かります?」

「あ、分かるよ。でも、まだ戻ってないと思うけど・・・」

「何処か教えて貰えますか?」

そーだよ。俺はこの為に来たんだから。

「3階の一番奥の部屋がおーちゃんの部屋だよ。」

「3階の奥ね。ありがとう。」

「君、おーちゃんと友達なの?」

「え?あ、同じ高校の先輩なんで・・・」

「へえ・・・そうなんだ。」

「大野さん、何時頃帰るか分かります?」

「7時ごろには戻るんじゃないかな?」

「そうなんだ。」

俺は早めに風呂に入って、大野さんを待つことにした。宿舎の風呂は1階にあって共同で使用するようになってるからスーパー銭湯並みにかなり広い。

新人にこれだけの設備を与える余裕があるなんて、さすがは一流の劇団だけの事はる。

俺は一度部屋に戻り、風呂の用意をして1階に降りた。既に脱衣所には5,6人の研修生が来ていた。

俺が服を脱ぎ始めると、その研修生達の異様な視線に気が付いて、俺はそいつらの顔を睨みつけた。

「な、何だよ?」

「お前、なかなか良い身体してんじゃん・・・」

「えっ・・・?お前ら何?」

素っ裸の俺は一瞬にしてそいつらから取り囲まれてしまった。

 

 

 

つづく

 

 

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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