
第1章
君との再会①
10月の秋晴れ爽やかなこの日、俺は学生時代の友人の結婚式に呼ばれて披露宴に出席してた。
新郎新婦は幼少の頃からの幼馴染みだったらしい。
勿論、ずっと付き合ってた訳じゃなくて、色々な事を乗り越えてのゴールインらしい。
俺も、もう32歳。周りの同級生が結婚したり、子供が出来たり、祝い事が何かと多くなってきた。
「大野さんはまだ予定は無いの?」
俺に話し掛けてきたのは、翔君といって、彼も学生時代からの親友だ。
「え?おいら?無い無い。」
「何でよ?彼女くらい居るでしょ?」
「大体さぁ、おいら一人暮らし始めたの最近だよ。居るわけないじゃん。」
「だったらこれからだね。ワクワクするでしょ?」
「しねえよ。べつに・・・」
「あ、仕事、独立したってホント?」
「あ、うん。独立ってほど大したことじゃないけどね。」
「自宅兼職場にしてるの?」
「そうそう。仕事と言ってもイラスト描くだけだし、机一つありゃ出来るからね。」
「そっかぁ。通勤しないで良いって魅力だよなぁ。今度お邪魔してもいい?」
「ああ、何時でも遊びに来てよ。狭いけど。」
「場所、教えてよ。」
「来るとき連絡くれたら最寄りの駅まで迎えに行くよ。」
「あ、そうそう、中学の同級だった、陸上部の宮本、覚えてる?」
「えっ?あ、あのモテモテ美少女だった宮本?」
「そう、その宮本。あいつも来春結婚決まったってさ。しかも相手は年下だって。」
「ま、マジかぁ・・・」
「あれだけモテてたのに、意外と結婚は遅かったよなぁ。年下狙ってたのかなぁ。」
「んふふっ。そうかもね。そういう翔君は?予定とか無いの?」
「俺?俺もタイミング逃したっていうかさぁ。もう最近じゃ出会いもないから半分諦めてる。」
「婚活とかすりゃいいのに。」
「大野さん、それじゃ一緒に婚活します?」
「ええっ?おいらはいいよ。そういうの苦手だもん。」
「はははっ。俺もどちらかといえば苦手だよ。っていうか、運命の赤い糸ってのを俺は信じてる。お相手は必ずいるんだよね。目の前に現れるの待つのみだよ。焦ったところでこればかりはどうにもならないし。それが運命ってもんだしね。」
「赤い糸ねぇ・・・」
「大野さんにだって赤い糸あるんだよ。その先に繋がってる人が運命の人だよ。」
「じゃ、おいらも焦んない。」
「だけど、男の一人暮らしは慣れないと大変でしょ?」
「そうでもないよ。ちゃんと自炊も出来るし。」
「へえ。それは意外だな。」
「家事労働が大変だから嫁さん探すのって、時代遅れでしょ。」
「でも、それって嫁さん見つからない言い訳にも聞こえるよ。」
翔君は昔からイケメンで、とっくに嫁さん居てもおかしくないんだけど、色々と彼には拘りがあるみたい。
「大野さん、ところで二次会は?顔出すでしょ?」
「いや、納期が迫ってる仕事が溜まってるから、今日は残念だけど二次会は断ってるの。」
「何だぁ。そうか・・・」
「ゴメンね。それよりホント、近いうちに遊びに来てよ。待ってるから。」
「うん、是非そうさせてもらうよ。」
披露宴が終わると、俺は引き出物の袋を提げてホテルの披露宴会場を出た。
そして仲間に別れを告げて自分だけ足早に駅方向へと向かった。
つづく