この指とまれ

この指とまれ 11

この指とまれ

第11話

 

 

ホテルの2階に在るレストランのバイキング形式の朝食に来ていた。
起きて間もないからか、ニノは口数が少ない。
各々のトレーにお好みの朝食をセルフで盛り合わせ、窓際の席に腰掛けた。
とにかく俺がニノのベッドで一緒に寝ていたという、消すに消せない事実が有る以上
当然の事ながら普通の会話がし難い。

「あ、あのさ・・・」

ここはやはり俺の方から切り出した方がいいのか?

「いただきまーす。」
「に、ニノ?」
「え?どうしたんですか?食べないの?」
「あ、いや・・・食べるけど。」
「わぁ・・・朝の景色も最高ですねぇ。海の色がホント綺麗。」

ロールパンを頬張りながら、やっぱり何も無かったかのように窓から見える景色を絶賛してる。
どうしてあんな事になったのかと問い詰めないところをみると、もしかしたら
眠ってると思ってたのは俺の思い過ごしで、ニノは寝たふりをしてただけで
本当は自分でも分かってて自分のベッドに戻ろうとした俺の事を引き留めたとか?
えっ?でも・・・何で?

「大野さん?」
「え・・・」
「食べないの?」
「あ・・・」
「さっきから人の顔ばっかり見てますけど。」
「いや・・・そんなことは。食べるよ。」
「俺の顔に何か付いてます?」
「け、今朝の事なんだけどさ・・・」
「あ、今日のシェフとの約束は10時からなんで、ここを9時に出れば余裕です。」
「え・・・」
「まだ何か?」
「あ、ううん。そうか・・・おおっ、もう8時半じゃん!急ごう。」

完全に話を逸らされた。
もう、何だか良く分かんないけど、無かった事にしてくれるつもりなんだろう。
それなら俺もしつこく夕べの事に触れる必要はないか。
でもこれってどうなの?
無かった事も何も、俺は何も悪くないんだけど。
ニノは俺に気を遣ってくれての完全スルーなんだろう。
でも気遣うってどういう事よ?
これってやっぱりニノからすりゃ、完全に誤解してるまんまって事だよな。
いやいやいや・・・
俺はニノがベッドから落ちそうになってたから助けただけだ。
何も邪な気持ちで夜這いしたみたいに思われてたら、そこは違うという事くらい
きちんと釈明はしておいた方が良くないか。
そうでないと、ニノは真実を知らずにこれから先も俺の事を
そんな事をする奴なんだって誤解し続けるってことじゃないの?
だけど、ここまでスルー決め込まれると、もうその話をこちらからは持ち出しにくい。
やたら必死になればなるほど、弁解がましく聞こえるに決まってる。

「あー、もう知らねぇ!」
「はぁ?」
「あっ、何でもない。」

もう、そっちがその気なら、俺も夕べの事は忘れよう。
その時はそれで気持ちを落ち着かせた俺だったんだけど・・・
それからなんでか、かえって彼の事を意識してしまって
何も悪い事してないってのに、まともにニノと目を合わせて会話も出来なくなっちまった。

ぎこちないまま俺達はホテルを出て、披露宴の料理を担当するシェフに会う為に
そのシェフのレストランへと向かった。

打ち合わせは予め菊池が作っておいた企画書をシェフに確認して貰い、
提示した予算でどこまで実現可能かを検討して貰う。
それから実際に料理を作って貰い、その写真を撮って画像を会社に送信する。
最後は俺達二人で料理を試食して問題なければそのコースを採用するという流れだ。

「それでは、内容に変更をお願いする場合は1週間以内に担当の者からご連絡させて貰いますので。
ひとまず、こちらのコースで当日も宜しくお願いします。」

午後3時、シェフとの打ち合わせも無事に終了した。
とりあえず現地でやらなければならない仕事は全て終了して
残りの時間はフリータイムということになる。

「ちょっと予定より早く終わったけど、どうする?」
「もう予定されてた打ち合わせは全て終わったんですよね?」
「うん。もう仕事は済んだから、自由にしてくれて良いよ。」
「大野さんは?」
「えっ?」
「あなたは何するんですか?」
「お、おいら?」
「はい。」
「おいらは一度ホテルに戻って、プライベートビーチでも散歩するかな。」
「それじゃ、俺も。」
「え・・・」
「一緒じゃ駄目ですか?」
「だ、駄目じゃないけど・・・」
「迷惑なら言ってくれて良いんですよ?」
「め、迷惑とかじゃないけど・・・」
「それじゃ、決まりですね。一度ホテルに戻って着替えましょう。
スーツじゃ堅苦しいから・・・」
「う、うん・・・」

プライベートタイムは流石に別行動を選ぶと思ってたから
ニノの言葉に俺は流石に戸惑った。
今朝の出来事を覚えていないわけが無いんだ。
やっぱり、あれは意図的にやったのか?
だけど一体何の為に?
考えれば考えるほど謎は深まるばかりだった。

 

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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