この指とまれ
第15話
「そ、その好きってさ、恋愛感情抱いてるっていうか・・・そういう事?」
「おいらにも分かんないけど。」
「それで?あなたはどうなのよ?」
「ええっ?」
「いや、大野さんは風磨に対してそういう気持ちは有るの?」
「やめてよ。翔ちゃんまで・・・」
「そ、そうだよね。幾ら相手がいないからって、そっちに走ったりしないよなぁ。」
「何なの?その言い方・・・」
「あ、ゴメンゴメン。でも驚いたよ。まさかそういう理由であなたのチームに参加してたとは。」
「宮古島の下見も今考えたらあいつとでなくて良かったよ。」
「あー、それはそうなるよね。」
「別に間違いなんて絶対起きないとは思うけどさ・・・おいら酒とかで失敗しそうな気がするから。」
「いやいや、分かるよ。」
「それで今回ニノと同行だったじゃん。もうさ、風磨のやつ口もきいてくれなくて。」
「ヤキモチか?」
「知らねえよ。」
「よし、俺がちゃんとそこんとこ確認してやるよ。」
「ええっ?」
「おーい、風磨!ちょっとこっちに来いよ。」
「しょ、翔ちゃん!」
「大丈夫、俺に任せて。」
もう翔ちゃんも酒が入ってるもんだから、俺が止めるのも聞かずに
勝手に俺達の席に風磨を呼びつけた。
「櫻井さん、何ですか?」
「おお、いいからそこに座れ。」
「は、はい。」
「お前、大野さんに特別な感情を抱いてたりするのか?」
「えっ・・・」
「翔ちゃん!」
またストレート過ぎる質問だな。
「答えなきゃ駄目ですか?」
「お、おいらは相葉ちゃんとこに行って飲んでくるわ。」
「大野さんは居て下さい!」
「えっ、あっ・・・うん。」
「答えたくなきゃ答えなくてもいいぞ。」
「あ、いえ。僕は大野さんの事が好きです。」
「え・・・」
「マジか・・・」
そこへニノがつかつかと無表情でやって来て、風磨の腕をおもむろに捕まえた。
「すみません、この人酔ってるんですよ。ほら、あっち行こう。」
「離せよ!」
「いいから、ほらっ、あっちで飲もう。」
そう言って抵抗する風磨を無理矢理隣の席へ引き戻した。
「好き・・・だそうですよ?」
「んもう!翔ちゃん、余計な事しないでよぉ。」
「だってこういうことはハッキリさせないと。」
「ハッキリさせたところでおいらはあいつの気持ちに応えられないよ?」
「そっか・・・」
「当たり前じゃん。もう、勘弁してくれよぉ。」
翔ちゃんのせいで無理矢理告白タイム作ったみたいになってしまった。
「二宮さん、何処まで邪魔すれば気が済むんですか?」
「え?べつに邪魔なんかしてないけど。」
「したじゃないですか!俺は今、大野さんと大事な話をしてたんですよ。」
「好きなんでしょ?」
「あなたには関係ない事です。」
「関係なくもないと思うよ?」
「は?」
「だって、一昨日の夜さ、俺と大野さん一緒のベッドで寝てたんだよ?」
「う、嘘だ!」
「嘘じゃないよ。」
「絶対に作り話だろ。」
「べつに信じないなら良いけど。」
「あなたが・・・あなたが強引に迫ったんでしょ?」
「あれれ?信じないんじゃなかったっけ?」
「信じません。」
「嘘だと思うなら本人に聞いてみたら?」
「・・・分かりました。」
ニノと元の座席に戻ったのも束の間。
風磨が再びおいらと翔ちゃんのテーブルに怖い顔してやって来た。
「ん?どうした?」
「大野さんに一つお聞きしますが・・・」
「えっ?何?」
「一昨日の夜、二宮さんと一緒に寝たって本当ですか?」
「えええっ?」
翔ちゃんがそれ聞いてめちゃめちゃオーバーに仰け反って驚いた。
「ふ、風磨?酔ってるのか?」
「酔ってなんかいません!答えて下さい。大野さん。」
俺は慌ててニノを見た。
すると、ニノは片手で口元を覆って笑いを堪えながら、
「言ってやりましたよ。」と言わんばかりに俺に向かって親指を立てた。
あの野郎!誰にも言わないって言ったくせに・・・
よりによって、風磨にそんな事を話すなんて。
「大野さん、それ本当なの?」
翔ちゃんも興味津々な様子で身を乗り出して俺に問い詰める。
「ち、違うんだよ。これには深い訳があってさ・・・」
「本当なんだ?」
「風磨?だから、違うんだって。」
「大野さんは二宮さんみたいな人がタイプなんだ?」
「ええっ?」
た、タイプって・・・何でそうなるんだよ?
ニノは男だぞ。しかも子持ちの既婚者じゃん。
「そうですか。僕の目が狂ってたんだ。
すみません、代表。俺今日はこれで失礼します。」
「ふ、風磨?」
「おいおい、風磨落ち着けって。」
翔ちゃんが呼び止めるのも聞かずに風磨は店を出て行ってしまった。
つづく