この指とまれ

この指とまれ 18

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この指とまれ

第18話

 

 

「え・・・あ、はい。ちょっと訳ありで実家に戻ってるんですよ。」
「へ、へぇ・・・」

奥さんの姿が見当たらないから、つい聞いてしまったんだけど
ニノは一瞬の間を取って、コーヒーを飲みながら視線を窓の外に泳がすと
淡々と無表情で俺にそう答えた。
実家?もしかして俺、何かマズい事聞いちゃったのかな?
そして暫くの沈黙が流れた。

「ご、ご馳走様でした。おいらそろそろ帰るわ。」

そう言って立ち上がると、カズ君が俺の左足に纏わりついて
イヤイヤと言いながら離れようとしない。

「こら、かずゆき、駄目だよ。大野さんだって忙しいんだから。」
「んふふふっ。カズ君、また遊ぼうな。」
「うわぁーん。」

無理矢理ニノに引き離されて大泣きするカズ君。

「参ったな・・・」
「気にしないで下さい。多分眠いんですよ。」
「そ、そうなの?」
「ええ・・・」
「それじゃ、またね。」

後ろ髪をひかれながら俺は二人に見送られて自宅へと戻った。
ニノ、奥さんと夫婦喧嘩でもしてるのかな?
それにしてもあんな小さい子を置いて実家に戻るかな?
ま、余計なお世話だな・・・

 

 

 

side nino

そして、その翌週のこと・・・

「二宮さん、おはようございます。」
「お、おはようございます。」

いつも通り会社に出社したら、菊池君が随分機嫌よく俺に話し掛けてきた。

「先日はなんかすみませんでした。」
「えっ?」
「歓迎会ですよ。途中で帰ったりしてすみませんでした。」
「あーあ・・・全然気にしてないけど。」
「あの、二宮さんってコスモって広告代理店にいらしたんですよね?」
「えっ・・・う、うん。何でそれを?」
「俺の知り合いもコスモで働いてるんですよ。」
「へ、へえ・・・名前なんていうの?」
「林くんです。」
「聞いたこと無いなぁ・・」
「多分二宮さんと入れ替わりで入社してるんですよ。」
「ふーん・・・」
「二宮さんって、社内恋愛で結婚されたそうですね?」
「えっ?」
「大変だったみたいですねぇ・・・」
「わ、悪いけど俺これから大野さんと会議出なくちゃならないんで
その話はまた今度・・・」
「離婚調停中だそうじゃないですか?」
「な、なんでそこまで知ってるの」
「コスモの専務とあなたの奥さん、不倫してたそうですね?」
「・・・ゴメン、その話他の誰かに話した?」
「いいえ。そんなお気の毒な話、誰にもするわけがないじゃないですか。
心配いりませんよ。誰にも言いませんから。」
「・・・」
「だけど、一つだけ言わせてもらおうと思って。」
「え?」
「こんな言い方はしたくないんですけど、あなたには子供さんもいるし
もしも親権が取れなかった場合でも多額の養育費とかを払わないといけないし
大野さんには負担が重すぎます。あなたと居ても大野さんが幸せになれるとは
到底思えないんですよね。」
「は?」
「大野さんには今後関わらないで欲しいんです。」
「え・・・ちょっ、何言ってんの?」
「俺は少なくともあなたよりはあの人を幸せにしてあげられます。」
「そ、そう・・・良かったね。頑張れば。」
「分かって貰えましたか?」
「分かるも何も・・・」
「あぁ、良かったぁ。すみませんね。何かちょっと僕としたことが酷い言い方しちゃって。
あ、でもホント誰にも言いませんから安心してください。」
「べつにいいよ。話したければ話せば。本当の事だし・・・じゃ、俺行くね。」

驚いた・・・あいつ俺の事をわざわざ調べたんだ。
大野さんがあいつに言い寄られて困ってたから助けてあげようと思って
出張中にあたかも関係持った、みたいな作り話したんだけど完全に敵意剥き出しだな。
それはまぁどうでもいいけど・・・
あいつが言う通り、俺は社内恋愛で彼女と結婚した。
直ぐに子供も授かり、幸せな結婚生活を送ってるつもりだった。
だけど、彼女は俺と知り合う以前から専務と不倫関係にあった。
それを知ったのは本当に最近の話だけど。
会社の人間にも直ぐに噂は広まった。
新人までもその話を知ってるんだな。
会社の人間から哀れな目で見られる事に耐えられなくて会社も辞めた。
まさか、新しい職場でまでも哀れな目で見られる事になるとはな・・・
俺が関わると負担か・・・
ま、そう捉えられても仕方ないかな。
こんなことくらいで傷付く俺じゃないけど、ちょっと今日は朝から
彼の言葉にテンションがひたすら下がってしまった。

 

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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