この指とまれ

この指とまれ 2

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この指とまれ

第2話

 

 

 

 

「大野さん、お疲れ様。」
「あ、翔ちゃん、お疲れ。」
「前回のウエディング企画、めっちゃ評判良かったから次もまたあなたにお願いしてもいいかな?」
「ええ?ホント?あんなんで喜んで貰えるんならおいらそっち専属でも良いなぁ。」
「他人の幸せ企画も良いけど、そろそろ自分の予定は無いの?」
「えっ・・・翔ちゃんまでそんな事言うの?」
「は?俺以外でも言われたりしたの?」
「最近うちの家族が煩いんだよ。顔見りゃ誰か良い人居ないのかってさ。」
「あはははっ。分かる分かる!うちも同じこと言われるもの。」
「まぁ、そういう年齢になったんだから仕方ないっちゃ、ないんだけどねぇ。」
「ま、こればかりは縁だもんな。そう慌てて失敗するくらいなら慎重に選びたいよね?」
「そうだよぉ。」
「あ、そうそう。それで、次の企画なんだけどさ、新しいメンバーをチームに加えるから。」
「えっ?そうなの?」
「ほら、先月寿退社した畠山さんの穴埋め必要でしょ?」
「あー、そうか。え?また女の子入れるの?」
「ざんねーん。今回は男性よ。32歳だから、あなたより少し下だよ。」
「ふーん。別に期待もしてなかったけど?」
「女性の感性は確かに欲しいのは欲しいけどね、流石に直ぐにお嫁にでも行かれちゃうと
こっちも戦力不足毎回補えないじゃん。だから、あえて男性にしたの。」
「おいらは別にどっちでも良いけど。」
「来週から来てもらう事にしてるんで、あなたに色々指導して貰いたいんだけど。」
「ええっ?指導って・・・おいらそういう器じゃ無いってば。」
「アシスタント的な感覚で手伝わせたらいいだけだよ。」
「ええーっ。」
「まぁ、来週またちゃんと紹介するから、そういう事で宜しく頼みますよ。」

翔ちゃんは俺の学生時代から友人で、イベント企画会社の社長だ。
なかなか就職を決めずにプラプラしてた俺に一緒に仕事しようと誘ってくれて
始めたこの仕事ももう10年以上にもなる。
友達と始めた仕事っていうのもあって、あまりストレスも感じることなく
こんなに長く続いていることが自分でも不思議なくらい。
遣り甲斐とか、そういうのは正直分からないけど、自分が考えた企画で
クライアントが満足してくれるというのは、素直に嬉しいから
こういう仕事自体、もしかしたら自分に向いてるのかもしれないとも思ってて
誘ってくれた翔ちゃんには何時も感謝してる。

元々俺は学生時代から絵を描くことが好きで、当時真剣に画家になりたいと思ってたほどだった。
だけど、画家で飯なんか食っていけないって家族から反対されてその夢を途中で断念してしまった。
今は休みの日に好きな絵を描く事だけが唯一俺の癒しの時間になっていた。

その日の休日も、俺はいつも通りあの公園に画材道具片手に訪れていた。
そしていつもと同じ所定の位置のベンチに腰掛け、黙々とスケッチを始めた。

「ああっ、おいたん?」

聞き覚えのある舌足らずの子供の声・・・

「あっ、カズ・・・くん?また来たのか?おばあちゃんは?また勝手に来ちゃったの?
ばあちゃんに怒られるぞ。」
「あしょもっ!!」
「ええっ?」
「かじゅたんと・・・あしょもっ!」
「参ったな。遊ぶのは構わないけど、ばあちゃんまた心配してるぞ。」

俺は立ち上がって辺りにおばあさんが居ないか確認したが、何処にもその姿は見当たらない。

「ねえ?カズ君のお家ってこの近く?」

と聞いたところで、まだ彼は小さすぎて会話など成立しないのは分かってる。
だけど、きっとあのおばあちゃん血相変えて探してるに決まってるよな。
とりあえず、あちこち動くのはマズいだろうから、ここで保護してあげるのが正解かもな。

「それじゃ、お絵描きでもするか?」

俺はスケッチブックを一枚切り取ってその子に手渡した。
そして、隣にチョコンと座らせて色鉛筆を握らせた。
10分くらい自由にお絵描きさせていたら、数十メートル先から全速力でこっちに向かって走って来る青年に気付いた。
その青年は俺とその子の前にやって来て、ハァハァと膝に両手を当て、前屈姿勢で呼吸を落ち着かせてる。

「か、かずゆき・・・ハァハァ・・・ダメじゃん!勝手に・・・」
「あーっ、パッパ!」
「え?」

どうみても高校生くらいにしか見えないその青年に向かって確かに今その子は今
パパって叫んだ。

 

 

 

 

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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