この指とまれ

この指とまれ 22

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この指とまれ

第22話

 

 

「そういう事なんで、俺とあなたが付き合ったとしてもお互いに独身同士だから
特別何も悪い事してることにはならないんですよ。」
「そ、そうなんだ。」
「あ、それから俺はあまり人の噂とか気にならないんで安心していいですよ。」
「う、うん・・・」
「え?どうしたんですか?あまり気が乗らないみたいだけど?」
「そ、そういう訳じゃないんだけど・・・」

ニノが離婚していたことが分かってから、カズ君の顔が頭を過ぎる。
あんな可愛い子が居るのにどうして離婚なんてしたんだろう?
カズ君だってきっとまだまだ母親に甘えたいだろうに・・・
そうは思っても、流石に離婚の原因まで聞くことは出来ない。
それは幾ら何でもプライベート過ぎて無理に決まってる。

「はっ!ニノ、それじゃさっさと帰らなきゃじゃん。」
「えっ?」
「カズ君が待ってるでしょ?」
「はっ?・・・あー、そのことか・・・大丈夫ですよ。心配して頂かなくても。」
「で、でも・・・」
「俺のおふくろが来てみてくれてるんで。」
「そっ、そっか。」
「当たり前ですよ。幾ら何でもまだ小さなかずゆきを一人で留守番させるわけないでしょ。」
「そうだよね。おいらも考えたら分かるのに・・・」
「とにかく菊池君のことは俺に任せて下さい。」
「だけどさ、信じるかなぁ・・・」
「暫くはこうやって一緒に帰りましょう。どうせ家も近いし。
あなたは特に何もしないで大丈夫ですよ。
そうだな、とりあえず再来週の休みは俺と予定有るからってキッパリ断って下さい。」
「嘘つくの?見破られちゃうよ。」
「嘘でもないですよ。」
「えっ?」
「出来れば本当に再来週空けといて下さい。」
「な、何で?」
「描いて下さいよ。肖像画・・・」
「あっ、それか・・・」
「はい、それです。フフフッ、まさか本当に俺とデートでもすると思いました?」
「お、思った。」
「ハハハッ、俺はどっちでも構わないですよ?」
「えええっ?」
「あいつと俺、どっちがあなたに合うか試します?」

ニノは突然そんな事を言いながら、膝の上に乗せてた俺の手を握り
人の事を試すように上目遣いに俺の顔を覗き込んだ。
俺はそんな彼の仕草にドキッと心臓が跳ねた。
勿論冗談だと分かってはいるんだけど、ニノの薄茶色の大きな瞳に
一瞬でも吸い込まれそうになって、ニノだって男なのに
なんというか、この時とんでもない色気を感じてしまった。
そんなニノに俺がしどろもどろしていると
自分がそんな事を言っておきながら、堪えきれなくなったか
口元を手で覆ってププッーと噴き出して笑い転げた。

「何なのよ?ふざけないでくれ。」
「ご、ゴメンなさい。だって・・・あなたの顔ったら・・・」
「ねえ、もういいよ。ホントやめようよ。風磨の事は自分で何とかするよ。」
「ええ?だって困ってるんでしょ?」
「困ってはいるけど、向こうは真剣なのにおいらがふざけてるのって
何だか申し訳ないよ。」
「それじゃ、付き合うんですか?」
「分かんない・・・」
「へえー・・・」

ニノはちょっと不満そうな顔をして見せた。

「なんだ。余計なお世話でしたね。すみませんでした。」
「余計なお世話だなんて。ここまで仕事以外の事で付き合わせてしまって
おいらの方こそすまなかったよ。」
「じゃあ、俺はもう黙ってますね。頑張って下さい。」

頑張るって・・・何をだ?

「お、おう・・・ありがとう。」
「コーヒーご馳走様でした。それじゃもう俺はこれで失礼します。」
「も、もう帰るの?まだゆっくりしていけばいいのに・・・」

いや、待て。どうしておいらは引き留めてんだ?

「菊池君の事で協力出来ればって話でこちらにお邪魔しただけですから。
ご自分で何とかしたいって事ならもう私の出番は何処にも無いわけですし。」
「そ、そうか・・・」

そんなの言われなくても分かってるけど、何だろう?
さっきからこのモヤモヤした感じは・・・

「それじゃお邪魔しました。」
「う、うん・・・あっ、ニノ!」
「はい?」
「カズ君の絵、風磨の事とは関係なくちゃんと描くから。」
「あ、はい。是非お願いします。」
「えっと、あっ、それと・・・」
「まだ何か・・・?」
「う、うん、あの、つまんないことに付き合わせちゃって、
その・・・悪かったね。」
「気にしないで良いですよ。それじゃ・・・」
「あっ・・・」
「え?」
「い、いや。また明日・・・」
「フフッ・・・お疲れ様でした。」

ニノはあっけなく帰ってしまった。
風磨の事、ニノまで巻き込んで騙して諦めさすというのは流石に良心が咎めた。
そうかといって風磨の気持ちを受け入れるというのはちょっと違うと思った。
それよりも、ニノから頑張れと言われた瞬間、凄く心がモヤモヤしたのは事実。
何で俺はあのままニノに帰って欲しくなかったんだろう?
まだ何か話足りなかった?
そうじゃない・・・そうじゃないけど、スッキリしない自分の気持ち。
そのモヤモヤの原因が分からないまま数日が過ぎて行った。

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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