この指とまれ

この指とまれ 26

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この指とまれ

第26話

 

 

ひと通りの説明が終了して、ニノはすっと会議室の席を立って退場しようとした。
一刻も早く誤解を解きたい俺は、すぐさまニノを呼び留めた。

「あのさ・・・さっきの話なんだけど・・・」
「代表に呼ばれてるんで、話は後にして貰えませんか。」
「え、いや、翔ちゃんとこに行く前に聞いて欲しいんだけど。」
「それじゃあ、手短にお願い出来ますか?」
「手短にって・・・」
「長くなるなら後にして貰えませんか?」

ニノの目は笑って無くて、完全に怒ってる感じだ。

「俺、もう行きますよ?」

そう言って立ち去ろうとするニノの腕を捕まえてもう一度引き留めた。

「痛いな。離してよ。」
「ご、ゴメン。」

ニノは謝る俺の事を無視してさっさと廊下を歩き始めた。
俺も慌ててニノと並んで歩き、話を続けた。

「あのさ、誤解してるよ、色々と・・・」
「はっ?言ってる意味が分かんない。」
「風磨は夕べうちに泊まったりしてないよ。」

そう言ったら一瞬歩くのを止めてその場に立ち止まった。

「・・・それで?」
「そ、それでって・・・あ、待ってよ!」

再び廊下を歩き出した。
自分でもこの時何でこんなに必死に言い訳してんのか分かんなかったけど
これって、恋人に浮気してると誤解されて必死で釈明してる彼氏がすることと一緒だよな。

「と、とにかく一旦落ち着こうよ。」
「一旦落ち着くって?落ち着いて無いのはあなたの方でしょ?
べつにいいじゃないですか。あなたが誰と付き合おうと
俺には一切関係のない事です。」
「だっ、だったらどうしてさっきから怒ってるの?
それに出張だっておいらとは嫌なんだよね?」
「あ、着きました。代表の部屋・・・どうぞお引き取り下さい。」

ニノは翔ちゃんの部屋のドアをノックして中に入ってしまった。
俺はドアの前に一人ポツンと取り残され、ドアの前に立ち竦んだ。
ニノは翔ちゃんと次の企画の担当の変更について話をする為に呼ばれてる。
翔ちゃんは何も知らないから、ニノの意向を聞き入れてしまう可能性が有る。
もしかしたら本当にニノが担当を外れて、俺は風磨と出張とかになるかも。
そう思ったら、居ても立っても居られず、俺はドアをノックして
もう勝手に翔ちゃんの部屋の中に飛び込んでしまってた。

「ん?え、大野さん?どしたの?」
「翔ちゃん、ゴメン。ちょっとニノと話をさせてくれ。」
「えっ?」
「すみませんけど、お話は後にして貰えませんか?僕は代表とお話してるんで。」
「もう、何言ってるんだよ。ニノはフロアコーディネイトなんて興味もないくせに。」
「そ、そんなことあなたが何で分かるんです?僕は本気で言ってるんです。」
「ちょ、ちょっと待って。大野さんもとにかくいいからそこ座ってよ。」
「ごめんね、翔ちゃん。なんだか巻き込んじゃって・・・」
「あなたがこんな所まで乗り込んでくるから悪いんでしょ。」
「まぁまぁ、落ち着いて。二人とも何か有ったの?」
「何にも有りません。」
「じゃあ何でずっとニノは怒ってんのさ?」
「怒ってません。」
「怒ってるじゃん。ね、翔ちゃんも分かるよね?」
「う、うん・・・平常心ではなさそうだ。」
「そうか・・・代表も大野さんの味方ですよね。そもそもお二人はご友人だったと聞いてますし。」
「敵とか味方って話じゃないと思うけど?」
「ねえ?何が気に入らないからおいらと出張行くの嫌なの?」
「だって、また・・・同じ部屋なんでしょ。」
「え?」

ニノが苦痛な表情でポツリと呟いた。

「あっ、何?相部屋が嫌なんだ?なんだぁ、それなら早く言ってくれれば良いのに。
それなら今回はそれぞれ個別に部屋を予約しても良いよ?」
「ちょっ、それってもしかして宮古島の件をまだ何か有ったと思ってるの?」
「思ってるって・・・実際有りましたよね。」
「だからおいらは何もしてないって言ったじゃん。」
「・・・代表?本当に個別で部屋予約して貰えるんですよね?」
「あ、ああ。勿論・・・でもさ、二宮君?
これって俺が言うのもなんだけど、大野さんってさぁ、
君が思ってるような事を平気で出来るような人じゃないよ。
昔からそういうの人一倍苦手な人なんだよ。
恋愛とかもとかだけどホント不器用な男なんだよ。信じてあげてくんないかなぁ。」
「僕は部屋を個別で準備して貰えるのなら考えても良いです。」
「えっ?それじゃ何かおいらがまだニノから疑われたまんまみたいじゃん。」
「大野さん、もう二宮君は行くって言ってくれてるんだから、それで良いでしょ?」
「で、でも・・・」
「代表、僕はもう良いですか?」
「あ、うん。それじゃ下見は宜しく頼んだよ?」
「分かりました。失礼します。」
「に、ニノ・・・」

俺もニノの後を追って立ち上がろうとしたら、翔ちゃんから腕を掴まれ引き戻された。

「大野さん、待って。」
「翔ちゃん?」
「少し冷静になって考えた方が良いと思う。」
「えっ?だって・・・」
「ああいうタイプは関わると面倒だわ。」
「はっ?」
「だって誤解して勝手に臍まげてるんだからさ。もしかしたらだけど・・・
二宮君って大野さんにマジで気が有るんじゃないのかな?」
「ええっ?マジで?」
「いや、分かんないけど。これは俺の直感。」
「風磨がね・・・」
「風磨がどうかしたの?」
「昨日、イベントの帰りに送って貰ったんだけどさ。」
「へえ・・・」
「お茶だけ飲んで直ぐに帰ったんだよ。でも今朝同じ服装だったんだよね。
それで、ニノは風磨がおいらの家に泊まったと思ってて・・・
でもそれでどうしてニノが怒んなきゃなんないのか全然分かんなくて。」
「はーん・・・なるほどね。やっぱりそうか・・・」
「な、何?」
「それ、ヤキモチだよ、大野さん。二宮君は宮古島であなたに寝込みを襲われたと
思ってる訳だよね?自分に気が有るからそういう事しておいてだよ?
結局風磨にも手を出したと勘違いしてるなら、俺の推理は当たってる。」
「そ、そんな。」
「どっちも勘違いってところが笑えるけど、分かり易いじゃん。
あなたも大変だね。」

翔ちゃんは話を面白くしてるだけだ。
ニノがヤキモチなんて有り得ない。だって、ヤキモチというのは
好きな相手に対してだけ起こり得る感情だから。
もしニノが本当に俺の事を好きだとしたら
宮古島での出来事は嫌な事じゃない筈。
俺はまだこの時ニノの考えてる事が理解出来ずにいた。

 

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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