この指とまれ

この指とまれ 29

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この指とまれ

第29話

 

 

side nino

気乗りしなかったけど、なんか大野さんの事も有ってむしゃくしゃしてて
誘われるままに参加した合コンだったけど、当然のことながら
俺自身は全然盛り上がらないままにひたすら酒飲んで時間を消化してた。
たまたま隣の席に座った女の子が保育士してると聞いて、俺は保育施設について
色々と質問をしてた。

「その保育園って0歳児から預かってくれるんだ?」
「今は働いてるお母さんも多いから結構預けたくても相当順番待ちの状態なんですよ。」
「へえ・・・それって、中途半端な時期でも申し込めたりするの?」
「ええっ?何でですか?」
「そういう申し込みってさ、春の入園に合わせて受け付けたりするでしょ?」
「いやだぁ、二宮さんまるでお子さんでも居るみたいに聞こえる。」
「いるよ。」
「えっ?それって・・・既婚者ってことですか?」
「ううん。嫁はいない。」
「そ、そうなんだ・・・ビックリしたぁ。」

その隣の席に居た松本さんが慌てて俺の腕を掴んで席を離れる様に促した。
俺と松本さんはそのままトイレに向かって洗面所の前で話をした。

「え?何か?」
「何かじゃないよ。合コンでバツイチ子持ちをアピールするヤツが何処に居るんだよ。」
「だって本当の事だし・・・」
「頭数合わせにお願いしたのは勿論悪いと思ってるけどさ、
せめてその場の空気は壊さないでよ。」
「場の空気壊そうと思ってなんていませんけど。」
「壊してるじゃん。そんなんじゃ再婚したくても出来ないよ?」
「俺、別に再婚なんて考えてないですから。」
「ハイハイ、分かったよ。つまんないんならもう帰っても何しても構わないから。」
「・・・そうですか。それじゃ僕はこれで失礼します。」
「え・・・マジで帰るの?」
「はい。それじゃお疲れ様でした。」

呆れ果ててポカンと開いた口が塞がらない松本さんを放置して
俺はその合コンが開かれてるバーを後にした。
まぁ、確かに悪いことしたかな。
完全に俺がやってる事は松本さんの面汚しにしか過ぎなかったもの。
恐らく俺が帰った後は松本さんが必死に女の子達に説明して頭を下げてる事だろう。
だけどこれで良かったんだって思った。
これでもうあの人達、俺の事を誘ったりしないだろうし。

俺は嫌われ者でも構わない。
前の会社でもそうだった。
そうだったけど・・・美紗紀だけは俺の事を分かってくれてると思ってた。
同じ会社で知り合った業務部の美紗紀と俺は恋に堕ちて数か月でスピード結婚した。
美紗紀は結婚して直ぐに妊娠し、1年後に和幸を出産した。
結婚しても仕事は続けたいという彼女の意向に反対もせず
やりたいようにやらせてた俺も悪いとは思う。
美紗紀の様子がおかしいことに気付いたのは
産休が明けて仕事に復帰した直後の事だった。
まだ幼い和幸の事を義母に預けて度々飲み会に参加したり
休日にも家を空ける事が増えた。
そんな時、会社の同僚から聞かされた美紗紀の不倫疑惑の話。
俺は彼女を信じてたから、最初はそんなの作り話だと思ってた。
でも、噂の相手がよりによって自分の会社の上司だと聞かされ
しかも、そいつとは俺と付き合う前からどうやら関係を持っていたらしく
俺と結婚したのは、一度は関係を断ち切ろうと思ったかららしいけど
結局その関係は断ち切れるどころか更にエスカレートしていった。
俺は彼女に真実を問い詰め、冷静に話し合いを重ねた。
浮気の原因は俺が嫁に構わないからっていう事なら一度は目を瞑れる。
だけど、和幸の母親なのに殆ど育児を放棄して不倫を続けた彼女を
俺はどうしても許すことが出来なかった。
それから家裁に相談して離婚を成立させるまでに
ちょっと時間は掛かったものの、なんとか離婚までに漕ぎ着けた。
だけど、不倫相手と分かったヤツにいつまでも上司面されてるのは
流石に耐えられなかったから、俺は10年勤めてた広告代理店を辞職した。

俺は女を見る目が無いんだ。
いや・・・女だけじゃない。人間自体見極めきれないと悲観的になってる気がしてる。
今は正直恋愛とかどうでもいいんだ。
片親でも和幸のことを立派に育ててあげることが俺の親としての責任なんだから。
そうは言うものの、やたら出張や飲み会・・・
偉そうな事言っても結局は和幸に寂しい想いをさせてる。
まだ電車は動いてる時間だったけど、俺はタクシーを飛ばして自宅へと戻った。

「ただいまぁ。」
「あら、カズ早かったじゃない。」
「うん、あれっ?かずゆきは?」
「あ、それがね、夕方偶然スーパーで大野さんにバッタリ会ったのよ。」
「えっ?」
「何時もお世話になってるでしょ?だから夕ご飯にお誘いしたのよ。
今丁度かずゆきをお風呂に入れて貰ってるの。」
「ええええっ?」
「だって、かずゆきがどうしてもおいたんと入るって利かないのよ。」
「だ、だからって・・・」
「あ、丁度良かったわ。あんたこれ脱衣所に持ってってあげて。」

俺は母さんにバスタオルを手渡された。
まさか自分の留守中に大野さんが自宅に来てるなんて思いもしなかったし
しかもかずゆきと一緒に風呂だなんて・・・
もう正直訳が分かんなかったけど、俺はとりあえず母さんから言われるまま
風呂場の脱衣所に二人分のバスタオルを持って向かった。

 

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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