この指とまれ

この指とまれ 31

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この指とまれ

第31話

 

 

「今のは聞かなかったことにして下さい・・・」
ニノが風磨の事を口にして、まだ俺達の事を誤解してるって事が分かった。
俺から逃げ去ろうと走り出すニノを追い掛けて捉まえたけど、
覗き込んだニノの瞳はウルウルに潤んでて、今にも泣きそうな表情だ。
このまま帰してしまっては絶対に駄目だと思ったし
きっとニノも本当は何か俺とまだ話したいはず。
だから俺はニノを自宅に連れて帰った。

自宅に着くと、ニノを居間に座らせて俺はキッチンで簡単な酒の準備をした。

「ゴメン、気の利いたつまみはないけど、スナック菓子とかでいい?」

うちに誘ったのはいいけど、なんとなく気まずい雰囲気は変わらなくて
至って普段通りを振舞って、その場に漂ってる変な緊張感を取り払う。
ローテーブルの上にグラスとか水割りのセットを運び、
焼酎の水割りを作ってニノに差し出すと

「頂きます。」

そう言ってそれを勢いよく一気に飲み干してしまった。

「え?おいおい、ペース考えなよ。」
「平気です。あ、お替りは自分で作ります。」
「分かった、分かった。でもちょーっと待った!」

お替りを作ろうと手を伸ばした焼酎を取り上げて俺は待ったを掛ける。

「え?」
「あのさ、その前に・・・酔っ払う前に話聞いてよ。」
「話?」
「そう・・・ニノもおいらに言いたい事あるだろ?」
「お、俺は・・・」
「まぁいいや。とにかくおいらの話聞いてよ。」
「な、何?」
「こないださ、あ、ほら日曜に休日出勤した日よ。
あん時さ、風磨がどうしてもおいらのことを送るって言うから
断れなくて送って貰ったんだけど、確かに送らせるだけ送らせて
直ぐに追い帰すわけにもいかねえじゃん。だから
コーヒーを淹れてやってそれを1杯だけ飲んで
その後30分もしないうちにあいつ帰ったんだよ。
ニノはおいらがあの日風磨を泊めたと思ってるだろうけど
ホントにそれはないからね?」
「でもそれなら何であいつは次の日同じ服着て出勤したんですか?」
「それはおいらにも分かんないよ。友達の家とか泊ったんじゃないのかな?」
「そうか・・・もしかしたらあいつ俺が勘違いするようにわざと?」
「そこまで小細工したかどうかは分かんないけど、本当に風磨とは何にもないからね?」
「ふうん・・・」
「安心した?」
「ど、どうして?」
「んふふ・・・なんとなく。」
「意味分かんない。俺はべつにあなたが誰と関わろうと関係ないですから。」
「そう?でもおいらはちょっと複雑だったな。」
「え?何がです?」
「だってニノあれからあんまりおいらと目も合わさなかったし。」
「き、気のせいじゃない?」
「それに、ニノが合コンとかも正直驚いたよ?」
「えっ、あっ・・・」
「で?どうだったの?いい感じの子居たの?」
「フッ・・・あんな合コン、俺がマジで参加すると思います?
こないだ離婚したばかりのバツイチ子持ちが女の子に相手にされる訳ないですよ。」
「もしもだけど、相手にしてくれる子が居たら付き合うの?」
「そんな子いるわけないです。」
「わかんないよ?」
「いませんって。そんな物好きなやつ。もう俺誘われる事無いと思いますよ。
松本さん、随分呆れてましたから。」
「え?」
「俺合コンの席でバツイチで子持ちだって明かしちゃったんですよ。」
「そうなの?」
「そこを隠す必要なんて無いと思ってるんで。」
「ま、まぁ確かにそうだけど。」

そりゃ場がシラケただろうって事は俺にでも想像がついた。

「それで?風磨の事は信じてくれた?」
「あなたがそこまで俺に話す理由が分からないけど・・・」
「誤解はちゃん解いておきたいんだ。」
「だから、理由は?」
「うん、それは・・・だから・・・」

理由は?と聞かれても、正直自分でもまだハッキリとは分かってなくて
答えに戸惑ってしまう。

「もう、お替り貰って良いですか?」
「え?あ、ああ。ごめん、おいらが作るよ。」

俺はニノから空のグラスを受け取ると、二杯目の水割りを作って彼に渡した。
そしたら、再びそれを一気に飲み干した。

「ぷはぁーっ、お替りっ!」
「ええっ?ちょっ、やめときなよ。」
「大丈夫ですって。」
「そんなにハイペースで飲んで潰れても知んないよ?」
「なーんか今夜は飲みたい気分なんですよねぇ。
あ、もし俺潰れちゃったら、ここに泊めて貰うんで・・・」
「えっ?」
「駄目?」
「い、いや、駄目とかじゃないけど・・・帰らなくていいの?」
「今日は母さんも泊まるって言ってましたから・・・
あ、そうだ。一応メール入れときますよ。心配するといけないから。
・・・・・ほら、送っときましたよ?これで大丈夫。」

ニノは自分の携帯の画面を俺に差し出して見せた。

===今大野さんちで飲んでる。今夜は大野さんとこに泊めて貰うから。ちゃんと朝には帰るから、和幸の事お願いします。===

 

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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