この指とまれ

この指とまれ 33

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この指とまれ

第33話

 

 

side nino

突然、大野さんに「好きだ」と言われ抱き締められた俺は
驚きの展開に少し戸惑ったけど素直に嬉しかった。
だけど、その瞬間俺の脳裏に過ぎったあいつの言葉・・・
「バツイチで子持ちのあなたが大野さんの事を幸せになんか出来るわけがない。」
菊池が以前、俺に対して言い放ったその言葉を鮮明に思い出してしまい
大野さんの身体を抱き締め返そうと背中に回そうとした俺の両手は
空中で虚しくもその動きを止めた。
そして俺が次にとった行動は・・・大野さんの胸を押し返して
思いっきり苦笑いをして見せた。

「や、やだなぁ、もう。何を勘違いしてるんですか?
俺が好きだと言ったのは、そっちの意味じゃないですよ?」

もう、俺俳優にでもなろうかな・・・
それくらいその俺の嘘は完璧だった。

「えっ・・・」
「勿論大野さんの事好きですよ。でもそれはホントそういう意味じゃ無いです。
かずゆきもあなたには凄く懐いてるし、プライベートでも仲良く出来る
凄く良い友達って意味です。」
「で、でもさ、風磨にヤキモチ・・・」
「あっ、そういう風に受け止めました?それは俺が悪いですね。
本当にすみませんでした。」
「ち、違ったの?」
「俺、あいつ苦手なんですよねぇ。あいつったらあなたの事が好きなものだから
俺に敵対心丸出しでしょ?そんなヤツとあなたが本当に付き合ったなら
あなたまで俺には嫌な奴に感じてしまいそうで。それだけが嫌だったんです。
だって時々はこうしてあなたと飲んだり、プライベートでも仲良くしたいって
思ってましたからね。でも、それは恋愛感情とかそういうんじゃないです。」
「そ、そっか・・・」

大野さんはちょっとがっかりした表情でその場に座り込んだ。

「やっぱりもう少し飲み直しましょうか?」
「え?う、うん・・・」

俺は大野さんのグラスに濃いめの水割りを作って差し出した。

「で、でもさ、ニノ?おいらが好きっていうのは・・・」
「勿論、嬉しかったですよ。でも・・・俺は子供も居るし、
いずれは相手が現れれば再婚だって考えてない訳じゃ無い。」
「まだ離婚したばっかりじゃん・・・」
「そうですね。勿論直ぐには考えて無いですけど。」
「そっか。勘違い・・・か。」

大野さんはそう言って水割りを飲み続けた。
俺はそれから殆ど飲まなかったのも有るけど、完全に酔いが醒めてしまった。
30分以上大野さんにお酒を作って飲ませてたら、そのうち大野さんが酔いつぶれてしまい
テーブルに突っ伏してそのまま眠ってしまった。
自分の勘違いで告白してしまった事、俺の事を抱き締めたこと・・・
きっと飲んで全部忘れようとしたかったんじゃないのかな。
俺は心の中で大野さんに両手を合わせて詫びた。
ゴメンね。大野さん・・・
でもね、これで良かったんだって思った。
だって大野さんには俺みたいな子持ちの男なんかより、もっと相応しい人がいるはず。
こんな良い人に色んな事を背負わす訳にはいかないもの。
深く関われば、関わっただけ離れる時はその分辛くなる。
これはお互いの為なんだって言い聞かせた。

部屋の置時計を見たら深夜1時を回ってた。
すやすや眠ってる大野さんは子供みたいに無邪気で、暫く俺はその寝顔を見つめた。
それから押し入れを開けてその中の掛け布団を取り出すと、
そっと起こさないようにそれを彼の肩に掛けてあげた。
出来る事ならずっとこのまま朝まで寝顔を見ていたい。
だけどその想いをどうにか断ち切って俺は静かに立ち上がり
その部屋を出て行った。

月明かりで夜道も明るく感じる帰り道なんだけど
繰り返し溜息をつきながら俺の足取りはどうしても重かった。
大野さんの為だと言い聞かせてついた嘘は、結果的に自分自身を苦しめていた。
一体こんな芝居いつまで通用するんだろう。
折角大野さんが告白してくれたっていうのに・・・
もう、こんな事二度と起きないよなって思ったら
なんともやり切れない想いが溢れて泣きそうになった。

 

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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